株券発行会社は不発行会社への定款変更がおすすめ
現在の会社法では株券の不発行が原則となっています
しかし、平成18年以前に設立された会社は株券発行会社となっている場合が少なくありません。
株券発行会社の場合の株式の譲渡については以下のように定められています。
(株式の譲渡)
第百二十七条 株主は、その有する株式を譲渡することができる
(株券発行会社の株式の譲渡)
第百二十八条 株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。
つまり、株券発行会社の株式の譲渡には株券の引き渡しがなければその効力がないとされています。
株券発行会社であるために問題となった事案があります。
会社経営をしていた父は長男に株式を全株贈与しました。長男に会社を引き継がせたいと思い、相続開始後に相続人である長男と次男の間で争そってほしくないとの配慮です。
その父が亡くなって、長男次男の遺産分割の席上、次男が「その株式の贈与は無効だ」と弁護士を立てて訴えてきました。
長男にしてみれば、父から贈与されたものであり全く思いもよらないことでした。長男は父の思いを次男に語り理解を求めましたがよい答えをもらうことはできませんでした。
会社法に照らすと確かに株券発行会社のため株券の交付が必要でした。結局、株式の贈与は無効とされ改めて遺産分割をすることになりました。
定款の確認不足が原因でした。
株券発行会社は登記簿謄本に「株券発行会社」と記されています。株券不発行とするためには定款変更を行って登記をする必要があります。
株券発行会社のままにしておくと、株主から株券発行を請求されかねないというリスクもあります。早期の対応が求められるところです。