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遺言書は、相続を円滑に進めるためのとても重要な手立てとなります。
しかし、昨今、遺言書を遺すことが話題になることはありますが、実は、遺言書を書く人はまだまだ少数で、平成30年に行われた55歳以上の方を対象とした調査でも、「自筆証書遺言を作成したことがある」方が、3.7%、「公正証書遺言を作成したことがある」方が3.1%という結果が出ています(※)。
このような事情から、親に遺言を書いて欲しいと思っていても、なかなか切り出せないのが現状ではないでしょうか。
そこで、今回は、気持ちよく遺言書を書いてもらうための方法と、遺言書を作成するにあたってのポイントをご紹介させていただきます。
※ 「我が国における自筆証書による遺言に係る遺言書の作成・保管等に関するニーズ調査・分析業務」「 2)遺言書について」P.11より|法務省
1. 高齢になった親に遺言書を書いてもらう方法は?
まず、遺言書を書いてもらうための方法をいくつかご紹介いたします。
1-1.遺言書を書くことに抵抗がないかを知る
もし、遺言書を書くことを躊躇しているのであれば、まずは、その理由を知ることが遺言書を書いてもらうための第一歩となります。
上記でご紹介した調査では、55歳から75歳以上のどの世代でも公正証書遺言・自筆証書遺言について「作成する気がない」とする回答が6割を超えています。
遺言書を書かくことを躊躇するのは、おそらく以下に挙げる理由が複雑に絡み合っていると考えられます。
- 自分が死ぬことを前提としており縁起でもない
- 自分の家族が相続争いになるはずがない
- 一般家庭には関係のない話だ
- 書き方についての法律の規定が分からず面倒
- 法律の相続分で分ければいい
これらの絡み合った理由を一つずつ解きほぐしていくことが、一番の近道でもあるのです。
時間をかけながら向き合う必要があるかと思いますが、次のような方法で、話のきっかけを作れるかもしれません。
1-2.自分で遺言書を書いてみる
遺言書を書いてもらう前に、自分で遺言書を書いてみるのも一つの方法です。自分で遺言書を書くことによって、今まで意識していなかったことに気づくことがあるかもしれません。
遺言書を書く際には、自分の親や配偶者、子供の将来について真剣に考える必要があります。作成するにあたり、自筆証書遺言の修正方法など具体的にどこが面倒なのか気付くこともあるでしょう。
また、親に遺言書を書いてもらいたいと説明する際にも説得力が増し、実際に書いてもらう段になって直面した問題を一緒に考える際に、自分の体験が生きてきます。
1-3.遺言書の必要性を説明する
遺言書がなくても遺産分割はできますが、仲の良い家族だからといって、スムーズにいくかどうかは、保証の限りではありません。相続争いは誰にでも起こり得ることなのです。
相続は、大きなお金が絡むこともあるため、人格が変わってしまう人もいます。そのうえ、元は他人である各相続人の配偶者が介入することで、話が厄介な方向に進んでいくこともあります。
また、財産がたくさんあるから相続争いが起こるというわけでもありません。例えば、相続財産が自宅と預金だった場合には、金額にかかわらず1円単位まで平等な分割をすることが難しくなり、「私も家ではなく預金が欲しい」となる可能性もあります。
遺言書がないことによって、遺された家族がこういったトラブルを抱えるかもしれないリスクをじっくりと説明してください。
遺言書は書かせるものではなく、自由意思で書くものです。説得ではなく、あくまでも説明をするという点については、お忘れにならないようお願い致します。
1-4.セミナーに通ってもらう
セミナーに通ってもらうのも一つの方法です。
最近では「終活」という言葉が一般的になり、自分の死に関するセミナーが全国各地で行われるようになりました。
遺言書を書くことに躊躇していた方でも、セミナーであれば、専門の講師が分かりやすく説明し、何より同世代の方々と共に学ぶことで、遺言書へのイメージが改善されていくかと思います。
最初から遺言書セミナーでは直接的で抵抗を感じる方もいらっしゃるかと思いますので、まずはエンディングノートのセミナーに誘ってみられてはいかがでしょうか。
1-5.専門家への相談のサポートを受ける
遺言書を書いてもらったとしても、その内容が十分ではないために、遺言書の存在がかえって火種となってしまい、相続トラブルに発展することもあります。
トラブルのない遺言書を作成するためには、弁護士など専門家のサポートが必要不可欠になります。
遺言書を書いてもらう約束だけ取り付けて、後は任せっきりでは、片手落ちとなってしまいます。スマートフォンやパソコンを駆使して情報収集をし、相談先をリサーチしてください。
公証人に依頼する場合には、公証人役場を探して連絡を取り、一緒に行くなどしますと、親も「面倒」だと感じることなくスムーズに遺言書作成を進めていくことができるでしょう。
2. 遺言書を書いてもらうための留意点
最後に、親に遺言書を書いてもらう際に留意すべきポイントをご紹介させていただきます。
せっかく書いてもらっても、次のようなことになりますと本末転倒になってしまいます。
2-1.遺言書を無理やり書かせると欠格事由となる
親をだましたり、強迫して無理やり遺言書を書かせたりした場合や、既に書いてある遺言書を変更させるなどした場合には、相続人である子供であっても相続欠格に該当し、相続権を失って、(民法891条)相続できない可能性があります。
2-2.無理に書かせた遺言書は無効となる
無理やり書かせた遺言書は、親の真意が書かれたものではありませんので無効になります。
高齢で遺言書の文面を考えることが難しいという場合には、子供が文面を作ってあげることはあるかと思いますが、決してその内容を強制しないようにしなければなりません。
内容すべてについて説明し、十分に理解と納得をしてもらってから採用してください。
2-3.自筆証書遺言は自書でなければ無効となる
自筆証書遺言は、親本人がすべて手書きで作成しなければなりません。
本人以外が代わりに作成したあとに、本人が署名捺印したものでは無効となってしまいます。
ただし、自筆証書遺言に添付する財産目録については自書でなくてもかまいなせん。パソコンからプリントアウトしたものや、子供の代筆でも認められます。
まとめ
遺言書は、どのようなご家族であっても、作成しておくに越したことはありません。
ただし、遺言書は作成する本人の意思を表すものですので、決して強要はしないようにしてください。
ご自分での説明に限界を感じられましたら、専門家への相談も是非ご一考ください。