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【税制改正】生前贈与加算が7年に延長決定!今からできる対処法とは

20221216日、2023年度(令和5年度)税制改正大綱が発表され、生前贈与加算が3年から7年に延長されることになりました。

今回は、生前贈与加算の税制改正について、今からできる対策も含めて解説させていただきます。

1.2023年度税制改正大綱で生前贈与加算が7年に

相続税と贈与税の一体化については以前から話が出ていましたが、生前贈与加算の改正はその一環としてとうとう着手されたなという印象です。

それではまずは、改正の概要について見ていきましょう。

1-1.生前贈与加算の改正について

生前贈与加算とは、相続開始前に行われた贈与については、相続財産に足し戻す制度です。現行では相続開始前3年以内の贈与が対象となっていますが、税制改正によって7年に延長されることとなりました。

3年から7年に延長ということは、これまでの倍以上の期間が生前贈与加算の対象になるということであり、人によっては加算対象になる贈与額が倍増するケースもあるでしょう。残念ながら、納税者にとっては単純に不利な改正となります。

ただし緩和措置として、相続開始前47年の間に行われた贈与については、この延長された4年間で合計100万円を控除することができます。

1-2.いつから生前贈与加算は7年に延長される?

生前贈与加算が7年に延長されるのは、202411日以降の贈与からです。ただし、202411日の相続からいきなり7年前の贈与が生前贈与加算の対象になるわけではありません。

202411日以降に行われた贈与が7年分の中に含まれますよという意味で、4年以上の生前贈与加算が行われ出すのは2027年1月1日以降です。7年分の延長が始まるのは、最短で2031年1月1日の相続からということになります。

2.生前贈与加算3年から7年に延長される理由

現行制度において生前贈与は、相続税対策のスタンダードとなっているほど、相続税の節税効果が高い方法です。贈与も相続も資産が他人へ移転する点では変わりないにもかかわらず、生前贈与だけは、税負担の総額が大幅に軽減されてしまう点が問題視されてきました。

そこで「資産移転の時期の選択により中立的な税制」を実現するための一環として、生前贈与加算の期間延長が行われることとなったのです。

2-1.「資産移転の時期の選択により中立的な税制」とは

資産移転の時期の選択により中立的な税制とは、資産の移転方法や金額に関係なく移転された資産の総額にかかる税金が一定となる税制をいいます。

つまり、贈与であっても相続であっても、他の人に資産を譲ったのであれば、税目の名称は違えども税額は同じであるべきです。早めに贈与することで相続税が抑えられる現状の制度では、課税の公平がはかれているとはいえません。

2-2.他国における生前贈与加算の年数

あらゆる税制改正は、他国の状況も参考にしながら行われます。外国の生前贈与加算の年数は次の通りです。日本の3年がどれほど短いかお分かりいただけるでしょう。

国名 生前贈与加算の対象年数
アメリカ 一生涯(過去すべての)
フランス 15
ドイツ 10
韓国 10
イギリス 7

3 生前贈与加算7年が暦年贈与に与える影響

それでは、生前贈与加算が7年になることで具体的にどのような影響があるのでしょうか。解説させていただきます。

3-1.暦年贈与を選択すると実質的な相続税の増税に

生前贈与加算の対象になった贈与財産は、相続財産に加算されて相続税の対象になり、贈与を行った意味がなかったということになります。

したがって、その加算対象になる期間が3年から7年と倍以上延長されるということは、単純に加算しなければならない贈与財産が増えて、相続財産が増えるということになり、実質的な増税といえます。

3-2.どれくらい相続税は増税になるか?

以下の事例で、生前贈与加算の期間が3年と7年とではどれほど相続税の増税になるのか計算してみます。

  • 被相続人:父
  • 相続人:長女のみ
  • 相続財産:1億円
  • 生前贈与:毎年100万円ずつ

【現行3年の場合】

1億円+生前贈与加算300万円-基礎控除3,600万円=課税遺産総額6,700万円

6,700万円×30%700万円=相続税の総額1,310万円

【7年の場合】

1億円+生前贈与加算700万円-控除額100万円-基礎控除3,600万円=課税遺産総額7,000万円

7,000万円×30%700万円=相続税の総額1,400万円

この事例の場合には、生前贈与加算が7年に延長されることで3年に比べて相続税が90万円増加しました。

相続税の速算表【平成27年1月1日以後の場合】

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

4生前贈与加算延長に寄せられるよくある質問(FAQ)

生前贈与加算延長にはどんな対策がある?

生前贈与加算の延長は、単純に納税者不利な改正となっており、対策はないのかと考えられることと思います。既に決まってしまった税制改正に対して今できることはあるのでしょうか。

2023年中に暦年贈与を

生前贈与加算が7年に延長されるのは、2024年1月1日以降の贈与です。2023年中の贈与は改正前の3年の対象ですので、暦年贈与の予定がある方は2023年中に行いましょう。

孫など相続人以外への贈与を検討

生前贈与加算の対象になるのは、相続または遺贈により財産を取得した人です。今回の税制改正において、この対象者の範囲に変更はありませんでした。

生前贈与加算の対象期間に贈与を受けた人であっても、相続時に財産を取得しなければ生前贈与加算の対象外になります。そのため、贈与先は孫など相続人にならない方を検討し、生前贈与加算の対象者とならない方を選択するといいでしょう。

対策は税理士に相談したほうがいい?

本記事では、生前贈与加算の延長についてのみ解説させていただきましたが、今回の税制改正では他にも相続時精算課税制度などに手が加えられます。

税制は生き物と呼ばれているほど、時代の状況に応じて毎年変化していきます。専門的な知識のない方が独自に対策を行ってしまいますと、税制改正に即していなかった、次の改正によって不利になったなど、対策のつもりが思わぬ損失を被る可能性があります。

税理士は常に最新の税制を捉えています。具体的な対策を検討される際には税理士へ相談された方が良いかと思います。

5.まとめ

生前贈与加算の対象期間が3年から7年に延長されます。ただ、202411日以降の贈与からの適用であることから、2023年中はまだ猶予があります。また相続開始前47年の贈与については100万円の控除額があるため、無条件に贈与全額が対象になるわけではないということを知っておいてください。

生前贈与による相続税対策をご検討中の方は、早めに税理士に相談されることをおすすめいたします。

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「あんしん相続」には、ご家族の協力、連携はもちろんですが、専門家のサポートも必要になってきます。

例えば、上記のような場合以外にも、下記のように税理士・弁護士・司法書士を含めた総合的なアドバイスが必要になるケースが少なくありません。

  • 相続税の額を抑えたい
  • 評価が難しい土地がある
  • 相続財産に不動産が多い
  • 相続関連の手続きがよくわからない
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    など

弊所では税理士・社会保険労務士・行政書士・弁護士でUグループを形成しており、ワンストップで相続手続き全般についてご相談いただけます。

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