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タワマン節税が終了へ?マンションの相続税評価の改正

タワーマンション

「タワマン節税」という言葉を聞いたことはないでしょうか?

タワマン節税とは、タワーマンションの市場価値に比べて相続税法に則って計算した相続税評価額が低くなることを利用して行われる相続税の節税対策です。

特に上層階であればあるほど市場価値と相続税評価額の乖離が大きくなり、節税効果が高くなります。多くの資本家が行っていた「タワマン節税」ですが、国税庁は税負担の公平性の観点から問題視しており、規制を強めています。ここでは、タワマン節税の概要と20236月に行われた国税庁の有識者会議で方針が固まったマンションの相続税評価額について解説します。

1.タワーマンションの購入が相続税の節税になる理由

タワーマンションの購入が相続税の節税になる理由は購入した価格(市場価格)と相続税評価額の開き(乖離率)が大きいから」です。相続税評価額は国税庁が定める財産基本通達に基づいて計算するため、不動産の市場価格と相続税評価額にはどうしても開きがでてしまいます。不動産の中でもタワーマンションは開きが大きいため、相続税対策として利用されています。

1-1.タワーマンションの建物部分の相続税評価

タワーマンションの建物部分の相続税評価額の計算は、固定資産税評価額そのものになります。市区町村が算定する建物の固定資産税評価額は市場価格の6070%程度と言われていますが、タワーマンションの高層階であれば市場価格との開きが大きくなります。

その理由は、固定資産税評価額の算定方法にあります。固定資産税の算定方法は再建築価格をベースに算定されており、建物全体の固定資産税評価額を面積に応じて振り分けます。そのため、面積が同じでも市場価格が高い高層階と市場価格が低い低層階の固定資産税評価額が同じになってしまうのです。

タワーマンションの高層階の固定資産税評価額は市場価格を反映しておらず、低層階と同じ固定資産税の負担になり、税の公平性が保たれていない状態になっています。税の公平性を保つため、平成29年の税制改正により、高層階になればなるほど固定資産税も高くなる仕組みに変更となりました。

ただし、この改正はあくまでも固定資産税の負担額の調整だけであり、固定資産税評価額の計算方法については改正されていないため、高層階の市場価格と固定資産税評価額にはいまだに大きな開きがあります。

1-2.タワーマンションの敷地部分の相続税評価

タワーマンションの敷地部分の相続税評価は「路線価」によって行われます。一般的に路線価により計算された相続税評価額は市場価格の8割程度と言われていますが、タワーマンションの場合は市場価格との開きが大きくなります。

その理由は、タワーマンションの「戸数の多さ」にあります。マンションの場合、一区画の土地に建つマンションの戸数が多ければ多いほど、1戸あたりの敷地部分は少なくなり、相続税評価額が低くなります。そのため、土地についても市場価格と相続税評価額との開きがでてきます。

1-3.タワーマンションは市場価格と相続税評価額に大きな乖離がある

タワーマンションの建物、敷地の相続税評価額は「高層階ほど市場価格が高くなる状況」を反映していないため市場価格と相続税評価額に大きな乖離があります。

下記のグラフは、マンションの相続税評価額と市場価格の乖離を表したものです。タワーマンションを含むマンション全体の乖離率は徐々に上がってきており、平成30年には2.34倍になっています。つまり、マンションの相続税評価額は市場価格の4243%程度になり、一戸建ての平均的な相続税評価額が市場価格の60%であることを考えると、大きく乖離していることがわかります。

【出典】「報道発表資料」|国税庁

2.マンションの相続税評価の見直しはタワーマンションに限らない

市場価格と相続税評価額の乖離を利用したタワマン節税ですが、いきすぎた節税を行うケースも増加しています。そのため、国税庁ではタワマン節税を封じるマンションの相続税評価の見直しを検討しています。

2-1.いきすぎたタワマン節税でタワマン裁判に

国税庁は、今まで行き過ぎた節税対策について、個別に対応してきました。

令和4年4月19日に最高裁判所により判決が下されたタワーマンションの相続税評価額について、総則6項(※)を基に、納税者と国税庁が争った裁判があります。

※総則6項とは:「通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる場合、国税庁長官の指示を受けて評価する」とする財産評価基本通達の条文

納税者は約14億円のタワーマンションの2つの物件を借金して購入し、相続が発生、そのタワーマンションは財産評価基本通達をもとに相続税評価額33,000万円で計算し、相続税額0円で申告を行いました。この申告について、国税庁ではタワーマンションの相続税評価額が低すぎるとし、独自で不動産鑑定を行い2億円超の追徴課税を要求し、裁判に発展した事例です。

この裁判では、総則6項を適用し国税庁の課税処分を適法と判断し、納税者の敗訴が確定しています。

2-2.タワーマンションだけではなく、一般のマンションも対象に

新しいマンションの相続税評価方法の方針は、国税庁の有識者会議で固まっており「タワーマンションだけではなく、分譲マンション全体が対象になる見込み」です。

タワーマンションを利用することで大きな相続税の節税効果を得ることができますが、中規模のマンションであっても戸建てと比べると相続税を圧縮することが可能です。そのため、戸建てと比べてマンションが相続税法上有利にならないように分譲マンション全体を対象に調整が行われる予定です。

この規制は分譲マンションを保有する人全員に関係する規制になります。タワーマンション以外に暮らす人にとっても大きな影響を及ぼすと思われますので、こまめに改正の動向をチェックされることをおすすめします。

なお、総階数が2階以下の物件や居住用の戸数が3戸以下で全て親族が住んでいる場合(二世帯住宅の場合など)は調整の対象から外れる見込みになっています。

3.マンションの相続税評価の方向性

新しいマンションの相続税評価方法については「マンションの評価額が市場価格の60%未満」である場合に新たなマンション評価方法により相続税評価額が補正されることになります。評価方法の見直しをグラフで表すと次のようになります。

【出典】同「報道発表資料」|国税庁

マンションの乖離率が60%未満であれば60%が相続税評価額となり、60100%であれば従来の相続税評価額、100%を超える場合は100%(つまり市場価格)が相続税評価額になります。

3-1.マンションの相続税評価の見直し案

マンションの相続税評価の見直しについて、具体的な方法が決定されたわけではありませんが、次のような評価方法が見直し案として提案されています。

評価乖離率とは、従来の相続税評価額と市場価格の割合を表しています。

【出典】同「報道発表資料」|国税庁

3-2.細かな内容は検討中

マンションの相続税評価の見直し案は検討中であり、建物と敷地を一体として補正するのか、評価額と市場価格の乖離の要因は評価乖離率の計算にある4要因以外にないのか、国税庁のホームページで自動計算ツールを用意するのかなど、細かな点については議論がなされている最中です。

まとめ

マンションの相続税評価の見直しにより、多くの資本家が行ってきたタワマン節税が規制されることになります。また、タワーマンションだけではなく、一般マンションを利用した資産の組み換えにも影響を及ぼすと思われます。

今後は今まで以上に相続シミュレーションと相続税対策を慎重に行う必要がありますので、相続税対策をお考えの際は、当事務所にお気軽にご相談ください。

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