上原note
2021.09.01

無償返還の届出と借地権に注意

アパートを持っている地主さんの節税対策に一つとしてアパートを法人に譲渡するという方法があります。土地は個人のままとし、建物部分だけを法人に譲渡するのです。

そのようにすると、アパートからの収益は法人に移動しますので、個人の所得が減少して将来の相続税を増額させないことが可能というストーリーです。

この時、法人に借地権の問題が生じます。

借地権とは、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権をいう(借地借家法2)とされています。建物を移動して借地権が法人に移れば、法人が借地権を無償で取得したとして借地権の課税が生じてしまいます。

 

そこで、その対策として「土地の無償返還に関する届出書」を貸主、借主連名で提出することが行われています。この方法によれば、土地を返還するときに、“無償で返還する”という約束なので借地権の移動はなく、法人に対する借地権課税は回避されます。

 

では、「無償返還の届出書」を提出した貸主の地主が亡くなったときはどうなるでしょうか?

 

貸主である父親の地主Aさんが亡くなりました

貸地を長男Bさんが相続し、アパートを所有する法人の株式を次男Cさんが相続しました。

数年後に、長男Bさんが「アパートを建替えてマンションにしたいので土地を返してほしい」

「無償返還の届出書が出ているから無償でね」と話したところ、

Cさんから「借地権があるので無償では返せない」と主張されてしまいました。

 

実は、Cさんの主張は正しいんですね

「土地の無償返還に関する届出書」は税務に限定した話です。

アパートを所有する法人には民法上、借地権が存在します。

賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。(民法601

ではどうしたらよかったのでしょう?

相続の際には、貸地の相続人と法人株式の相続人を同一にしておけばよかったことになります。

  • アパートの敷地の相続人➡Bさん
  • アパート所有の法人の株式の相続人➡Bさん

Bさんが敷地もアパートも相続すれば争いは生じません。

父親のAさんもこれを意識して遺言を書いておく必要がありました。


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