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2024年以降のマンションの相続税評価額の計算方法と節税対策について

ご両親やご自分が住むマンションが相続時にどのような評価額でいくらの相続税がかかるのか気になっている方は多いと思います。

そこで、今回は、マンションが相続財産となった時どのような相続税評価計算が行われるのか、また、世間でよく言われているマンション購入による相続税の節税方法について、マンションに特化して詳しくご紹介いたします。

1.相続税が課されるマンションの建物と土地

戸建て住宅は、建物部分と土地部分が明確に分かれており、単純にこの2つを評価します。マンションの相続税評価も、土地と建物とに分けて行うことになります。

1-1.マンションの専有部分と共有部分

マンションには、専有部分と共有部分があります。

専有部分は、購入者が居住する各部屋のことで、共有部分は、エレベーターやエントランスホール、多目的室などマンションの住人が共有して使う部分です。

実は、分譲マンションは、その部屋のみを購入するのではなく、共有部分も同時に購入しているのです。

1-2.区分所有権と敷地利用権について

専有部分を所有する権利区分所有権土地を利用する権利敷地利用権といいます。

この敷地利用権は、マンションの専有部分の各所有者が共有しており、持分割合が定められています。持分割合とは、全ての専有部分の床面積に対する各専有部分の床面積の割合のことで、登記簿謄本や売買契約書に「敷地権の割合」という項目に記載されています。

2.マンションの相続税評価方法

次に、マンションの相続税評価方法を改正改正のポイントを交えて解説します。

2-1.土地の相続税評価額計算

土地の評価は、まずマンションが建っている土地のすべてを路線価方式または倍率方式を使って計算し、それに持分割合を乗じて専有部分に対する土地の評価額を算出します。

基本的に路線価が設定されている土地については路線価方式、地方などで路線価が設定されていない土地については倍率方式を使用します。

路線価方式

土地全体の評価額 = 路線価 × 地積 × 各種補正率

倍率方式

土地全体の評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率

マンションの専有部分の土地の評価額

専有部分に対する土地の評価額 = 土地全体の評価額 × 持分割合

路線価や倍率は国税庁が毎年公表しており、次のリンク先から確認することができます。

【参考サイト】財産評価基準書|国税庁

路線価方式、倍率方式についてお知りになりたい方は、次の記事を是非お読みください。

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2-2.建物の相続税評価額計算

マンションの建物の評価は、固定資産税評価額です。

固定資産税評価額は、毎年春に市区町村役場から届く「固定資産税課税明細書」に記載されています。

記載様式は市区町村によって若干異なりますが、多くの場合、一番左側に「土地」か「家屋」かが記載されています。「家屋」の欄を右には、「固定資産税課税標準額」があり、ここに記載されている金額が固定資産税評価額であり相続税評価額になります。

2-3.マンションの相続税評価方法の改正

従前は、建物の固定資産税評価額と先ほどの土地の評価額と合算した金額が、所有する部屋の相続税評価額でした。

しかし、2024年1月1日以降に発生した相続や贈与からマンションの相続税評価方法が改正されました。

その理由は、固定資産税が再建築価格をベースに算定されており、建物全体の固定資産税評価額を面積に応じて振り分けるため、面積が同じでも市場価格が高い高層階と市場価格が低い低層階の固定資産税評価額が同じになってしまい、実勢価格との乖離を利用した相続税対策が横行していたからです。

ただし、前述したマンション1室に対応する建物部分と敷地部分を評価することに変わりありません。次に、評価乖離率を以下の算式の通り算出します。

  1. 一棟の区分所有建物の築年数(1年未満の端数は1年とする) × △0.033
  2. マンションの総階数(地下は含まない)÷33×0.239(小数点以下第4位切捨て)
  3. 評価する部屋が所在する階(地下は0階)× 0.018
  4. (マンション一棟の敷地面積×敷地権割合 又は 共有持分割合)(小数点以下第3位切り上げ) ÷専有登記床面積× △1.195
  5. ❶~❹+3.22=評価乖離率

評価水準=1÷評価乖離率

マンションの評価水準<0.6の場合

マンションの評価水準が0.6より小さければ、土地と建物の評価額に評価乖離率と0.6とを乗じて相続税評価額を算出します。

マンションの相続税評価額=(土地の評価額+建物の評価額)×評価乖離率×0.6

マンションの相続税評価額は、算出した土地と建物の評価額の合計よりも、上がることになります。

0.6≦マンションの評価水準≦1

マンションの評価水準が0.6以上で、1以下であれば補正の必要はなく、土地・建物の評価額がそのままマンション1戸の相続税評価額になります。

マンションの評価水準>1の場合

一方、マンションの評価水準が1より大きい場合は、土地・建物の評価額に評価乖離率を乗じて相続税評価額を算出します。

マンションの相続税評価額=(土地の評価額+建物の評価額)×評価乖離率

評価水準が1より大きい場合には、相続税評価額が土地・建物の評価額の合計よりも、小さくなります。

以上をまとめると、次の通りとなります。

区分 区分所有補正率 評価額への影響
評価水準<0.6 評価乖離率×0.6 評価額が上がる
0.6≦評価水準≦1 補正なし 影響なし
1<評価水準 評価乖離率 評価額が下がる

ただし、一棟所有の賃貸マンションなど区分所有の登記がないものや、事業用のテナント物件などの居住の用途に供することができるもの以外のマンションなどには、これらの計算は不要です。

【参考外部サイト】「居住用の区分所有財産の評価について(法令解釈通達)」国税庁

2-4.マンションも小規模宅地等の特例の対象

相続税の計算には、土地の評価額を大幅に減額することができる小規模宅地等の特例制度があり、マンションも土地については、小規模宅地等の特例を適用することができます。

特にそのマンションが自宅であれば、330㎡まで80%の評価減ができ、1億円の土地でも330㎡までは、2,000万円に対してのみ相続税がかかります。

マンションは、土地を共有している分、各専有部分当たりの所有面積は小さくなり、330㎡に到達することはほとんどなく、要件を満たせば、所有する土地全体に小規模宅地等の特例を適用することができます。

非常に節税効果の大きい制度であり、適用要件を満たすかは必ず確認することをお勧めします。

なお、小規模宅地等の特例について、詳しくは、次の関連記事をご参照ください。

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3.マンションの相続税評価額計算の具体例

では次に、具体的なマンションの評価額を、ケース別に計算してみましょう。

なお、事例1の「親子で相続した場合」以外は、マンションの相続税評価改正後の補正がないものとして計算します。

3-1.親子で相続した場合

親である被相続人が自宅として所有していたマンションの一室を、子が相続した場合です。

事例1.

  • 土地の路線価:20万円
  • 地積:15,000
  • 建物の固定資産税評価額:3,000万円
  • 建物の築年数:10年
  • マンションの総階数:33階
  • 所有するマンションの階数:10階
  • マンション1棟の敷地面積:15,000㎡
  • 専有登記床面積:75.47㎡
  • 持分割合:2,000,000分の5,000
  • 子は被相続人と同居しており、相続税の申告期限まで所有し住み続けている

土地の相続税評価額

土地の路線価20万円 × 地積15,000㎡ = 土地全体の相続税評価額30億円

30億円 ×持分割合 5,000/2,000,000 = 専有部分の土地の相続税評価額750万円

土地部分は小規模宅地等の特例の特定居住用宅地等に該当するため、80%の評価減が可能です。

750万円 × 80% = 小規模宅地等の特例適用額600万円

750万円 - 600万円 = 小規模宅地等の特例適用後の専有部分の土地の相続税評価額150万円

建物の評価額

建物部分の評価額は固定資産税評価額そのままとなりますので、3,000万円です。

マンションの評価額

土地150万円 + 建物3,000万円 = 3,150万円

補正

  1. 築年数10年× × △0.033=△0.33
  2. 総階数33回÷33×0.239=0.239
  3. 評価する部屋が所在する10階× 0.018=0.18
  4. 1棟の敷地面積15,000×持分割合5,000/2,000,000÷専有登記床面積75.47× △1.195=△1.1875
  5. ❶~❹の合計+3.22=評価乖離率2.1215

評価水準=1÷評価乖離率2.1215=0.47136<0.6

土地・建物の評価額3,150万円×評価乖離率2.1215×0.6=マンションの相続税評価額4,009.6万円(百円未満切り捨て)

3-2.賃貸マンションを相続した場合

被相続人が所有している賃貸マンション1棟で貸付事業を行っており、親族がその賃貸マンションを相続した場合です。

事例2.

  • 土地の路線価:50万円
  • 地積:1,000
  • 建物の固定資産税評価額:3億円
  • 親族は貸付事業を引き継いでいる
  • その他小規模宅地等の特例の要件は満たしている

土地の評価額

路線価50万円 ×地積 1,000㎡ = 土地の相続税評価額5億円

土地部分は小規模宅地等の特例の貸付事業用宅地等に該当し、200㎡まで50%の評価減が可能です。

5億円 × 200㎡/1,000㎡ × 50% = 5,000万円

5億円 - 5,000万円 = 小規模宅地等の特例適用後の土地の相続税評価額4億5千万円

建物の評価額

3億円

マンションの評価額

土地4億5千円 + 建物3憶円 = 7億5千万円

3-3.夫婦共有名義で一方が死亡した場合

夫婦共有名義で自宅用マンションの一室を購入した後、夫が死亡しため、夫の持ち分を妻が相続した場合です。

マンションの持分割合に更に夫婦の持ち分が加わりますが、夫の持分を評価すれば良いだけで難しくはありません。

事例3.

  • 土地の路線価:100万円
  • 地積:20,000
  • 建物の固定資産税評価額:5,000万円
  • 持分割合1:,000,000分の2,000
  • 夫婦の共有持分割合2分の1ずつ

土地の評価額

30万円 × 20,000㎡ = 60億円

60億円 × 2,000/1,000,000 = 1,200万円

これを夫の持ち分にします。

1,200万円 × 1/2 = 600万円

更に土地部分は小規模宅地等の特例の特定居住用宅地等に該当し、80%の評価減が可能です。

600万円 × 80% = 小規模宅地等の特例適用額480万円

600万円 - 480万円 = 120万円

建物の評価額

建物部分の評価額は固定資産税評価額5,000万円ですが、これは建物全体の価格であり、夫の持ち分を計算しなければなりません。

固定資産税は共有名義となっている人それぞれに届くわけではなく、原則として全額が代表者に送付されるようになっていますので注意してください。

5,000万円 × 1/2 = 2,500万円

マンションの評価額

土地120万円 + 建物2,500万円 = 2,620万円

4.マンション購入による相続税対策

マンションへの投資は相続税対策としても有効です。マンションがなぜ相続税対策になるのか、またその対策方法や注意点をご紹介します。

4-1.不動産は現金より相続税評価額が低くなる

土地の評価に使う路線価や固定資産税評価額は、公示価格の7~8割程度になるように設定されています。

また建物の相続税評価額である固定資産税評価額は、建築場所や築年数などによって多少異なりますが、おおよそ時価の5割程度となります。

現金や預金は金額がそのまま相続税評価額となり、現金が1憶円あれば1憶円に対して相続税がかかってしまいます。しかし、1億円を使って不動産を購入しておけば、相続税評価額を数千万円下げることができ、相続税の節税に繋がります。

4-2.小規模宅地等の特例がある

被相続人が自宅や事業用に使用していた土地には、要件さえ満たせば、評価額を5080%も減額できる小規模宅地等の特例が適用できます。

いずれ相続が発生した際に特例の適用対象となれるように、適用要件に合わせてマンションを購入するのも方法の1つです。

4-3.賃貸にすると更に節税になる

購入した不動産を賃貸にすれば、借地権割合、借家権割合、賃貸割合を考慮して評価額を計算できるので更に節税となります。

例えば、自用地価額が5,000万円、借地権割合70%、借家権割合30%、賃貸割合100%の土地があったとします。

賃貸にしていない場合には5,000万円ですが賃貸するだけで、次の評価額となります。

5,000万円 ×(100% - 70% × 30% × 100%)= 3,950万円

4-4.マンション購入による相続税対策のリスク

マンション購入による相続税の軽減効果は確かです。しかし、絶対に損をしない不動産投資はありません。

市場価値の下落、賃貸需要の低迷、不動産管理の手間や費用など数々のリスクが表裏一体であることを忘れてはいけません。

マンションは非常に大きな買い物です。目の前の相続税だけに囚われることなく、数十年先を見据えた計画が重要になります。マンションによる相続税対策を検討される方は、税理士などの専門家のアドバイスを受けることをおすすめいたします。

5.マンションの相続税評価は当事務所へご相談を

ここまでご紹介した通り、マンションの相続税評価は改正があったため、多少複雑になっています。

マンション購入による相続税対策をお考えの方も、ご自分が所有するマンションの相続税評価が気になる方も、相続税について疑問があれば、ぜひ当事務所にお気軽にお問い合わせください。

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