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相続した財産のうち、プラスの財産からマイナスの財産を相続財産から控除することができる債務控除ですが、債務だけではなく被相続人の葬式費用も含まれます。
一般財団法人日本消費者協会が行った「第11回葬儀についてのアンケート調査報告書」 によりますと、2017年時点における葬儀費用の全国平均は約196万円となっており、相続税節税に大きな影響がある費用であることが分かります(※)。
今回は、債務控除の葬式の費用について詳しくご紹介してまいります。
※【出典】 「葬儀業界の現状」7.葬儀費用の紹介(全国・関東B)|全日本葬祭業協同組合連合会
1.葬式費用の控除の仕組み
相続税の債務控除の大原則は「被相続人の死亡時点に確定している債務」です。
これに対して葬式費用は、被相続人の死後に遺族によって決められ遺族が負担するものですので該当しないのですが、人が死亡した場合には必ずかかる費用であるとして債務控除の対象になっています。
控除の上限はなく、認められる範囲であればいくらでも控除できます。
なお、相続税の債務控除について、詳しくは、次の関連記事を是非お読みください。
【関連記事】相続税の債務控除|相続財産から差し引くことができる債務とは
1-1.控除の対象となる人・ならない人
葬式費用を控除することができるのは相続人と包括受遺者で葬式費用を負担した人で、次の人は対象になりません。
- 特定受遺者
- 制限納税義務者
相続放棄をした人も債務控除の対象にならないのですが、負担した葬式費用に限っては対象となります。
1-2.葬式費用を負担した者が控除を受けられる
葬式費用の債務控除は、その金額を負担した人の遺産総額から差し引かれます。
ここで誰が負担すると相続税が最も有利になるかを考えてみたいと思います。
配偶者が存命の場合には配偶者が喪主となり、費用負担も主には喪主ということが一般的ですが、配偶者の相続税計算には「配偶者に対する相続税額の軽減」という制度があり、最低でも1億6,000万円までの相続財産には相続税がかからないようになっています。
配偶者の相続財産が1億6,000万円に満たない場合には、債務控除を受けたとしても意味がなくなってしまうのです。
葬式費用は喪主が負担しなければならないという決まりはありませんので、相続税のことだけを考えますと、葬式費用は子が負担した方が債務控除の節税効果を最大限生かすことができます。
2.控除対象となる葬式費用
葬式費用とは一般的に、お通夜、葬儀、告別式、火葬を合わせたものを呼びます。
葬式費用として債務控除に含めることができるものは、基本的にその流れの中にある費用が並びます。
- 通夜、告別式について葬儀会社へ支払った費用
- 喪主、施主負担分の供物、供花代
- 通夜、精進上げでの料理、飲み物代
- 弔問者への飲み物、おつまみ代
- 親族などへの心づけ
- 運転手への車代
- お布施、読経料、戒名料
- 火葬、埋葬、納骨費用
- 遺体や遺骨の回送、運搬にかかった費用
- 死体の捜索費用
- 死亡診断書料
など
3.控除対象とならない葬儀費用
反対に次のような費用は債務控除の対象外になります。
考え方としましては、「お通夜、葬儀、告別式、火葬に直接関わらないもの」と覚えていただければと思います。
- 解剖費用
- 喪主、施主負担分以外の供物、供花代
- 香典返戻費用
- 初七日法要費用
- 四十九日法要費用
- 位牌、仏壇、墓石、墓地の購入費用
- 墓石の彫刻料
- 永代供養料
など
4.判断が分かれるもの
次の費用は、状況に応じて債務控除の対象になるかどうかが分かれます。
親族の宿泊費や交通費
喪主側が負担する風習が親族内にある、金銭的な事情で支払わなければならないなどの理由があり、妥当な金額が支払われている場合には控除対象になります。
会葬返礼品
香典返しをしていない場合には、会葬返礼品がそれに代わるものと考えられますので控除対象外です。
反対に香典返しをしている場合には、控除対象になります。
お別れの会
お別れの会については葬式と直接関係がある会なのか、法要に近い会なのかで判断します。
例えば、家族葬とは別日にお別れの会を行い、友人やビジネス関係者などが参列した場合には、家族葬には参列できなかった人たちで葬式を行ったものと考えられますので、お別れの会の費用も控除対象になります。
5.葬式費用を控除の対象とするためのポイント
控除対象になる葬式費用を漏れなく控除するために抑えていただきたいポイントを、最後にご紹介いたします。
5-1.領収書は取っておく
債務控除を受けるために葬式費用の領収書の添付は必須になりますので、領収書が発行されるものについては控除対象になるかならないかにかかわらず、すべて貰っておいてください。慌ただしい時期ではありますが、基本的に領収書の再発行はされませんので紛失しないようしっかり管理する必要があります。
債務控除として申告しているのに紐づく領収書がない場合には、架空計上をしているとして否認される可能性があります。
債務控除が関係する支払先からは領収書を貰えるのが通常です。
領収書のないイメージがあるお布施でも発行できる場合がありますので、お寺に問い合わせてみてください。もらえない場合には、後述するように、記録を取っておきましょう。
5-2.葬式費用の領収書の宛名は相続人
領収書の宛名は、その費用を負担した相続人の名前が記載されていなければなりません。
ただし葬式費用は次から次に支払いが起こりますので、誰が負担するのかまだ決まっていないということも多いかと思います。その場合には、とりあえずすべてを喪主名義で受け取っておくと良いかと思います。それで否認されることはまずありません。
5-3.領収書が発行されない費用について
葬式費用には、お布施や葬式を手伝ってくれた親族へ支払った心づけなど領収書が発行されないものがあります。
これらについては、いつ誰にいくら支払ったかをノートなどに記録しておくことで証拠資料にできます。
特にお布施は金額が高額になる場合が多いですので、支払日、お寺名、住所、電話番号などより詳細に記録するようにしてください。
この記録は領収書代わりになりますので、情報の正確性が非常に重要です。支払ったらすぐに記録することを心掛けられると、漏れが生じにくいかと思います。
5-4.葬式費用に充当した互助会に積み立てたお金について
葬儀会社の互助会に積立金があり葬式費用に充当した場合の取り扱いは、積立をしていたのが被相続人なのか、相続人なのかによって異なります。
被相続人が積み立てていた場合
積立金が被相続人のものである場合にはその積立金は相続財産になり、積立金で支払った分を含めた葬式費用の総額は債務控除になります。
例えば、積立金が100万円、葬式費用の総額が300万円だったとしますと、100万円は相続財産に加算されたあと300万円が債務控除として差し引かれることになり、実質的には200万円しか債務控除を受けていないことになります。
相続人が積み立てていた場合
積立金は積み立ててきた相続人の財産ですので被相続人の相続財産に含める必要はなく、積立金を含めて支払った葬儀費用の総額のみを債務控除として考えれば大丈夫です。
先ほどの例でいきますと、100万円を相続財産に加算させる必要はなく、300万円の債務控除のみ受けることになります。
5-5.香典は非課税
香典は参列者から喪主への贈与であり、被相続人の相続財産ではありません。
また贈与ではありますが、常識範囲内の金額であれば贈与税も非課税となっていますので、葬式費用に充てる、喪主が全額受け取る、相続人間で分ける、その後の法事費用に充てるなど、自由に使っていただけます。
まとめ
お通夜、葬儀、告別式、火葬に直接関係する費用は、葬式費用として債務控除の対象になります。
葬式費用をしっかりと把握し、領収書を漏れなく貰っておくことは相続税の節税に繋がりますので、計画的なご対応をおすすめいたします。