遺言を作ったけど小規模宅地の適用がなかったら?
今回のテーマは相続税評価額の80%減額ができる小規模宅地特例についてです。
被相続人の居住用不動産についての小規模宅地特例は多くが関心を持たれています。
ところがその適用にあたっては要件があり簡単ではありません
こんな例がありました。
被相続人父で相続人が子供2人長男Aと長女B
相続財産は
父の住んでいたマンションP(1億円)と
長男Aの住んでいたマンションQ(5千万円)の二つです。
長女Bは独身で父とマンションPに同居しています
父は遺言でマンションPは長男Aに、マンションQは長女Bに相続させると書いていました。
長男Aには1億円のマンションを残したいという気持ちが強かったのでしょう。
しかし、この結果、この遺言では小規模宅地特例の適用がないこととなりました。
その理由は以下の通りです
マンションPは父の居住用ですが、長男が父所有のマンションQに居住していたためいわゆる「家なき子」に該当しません。同居もしていません。
また、マンションQはそもそも父の居住用でもなく、長女Bの居住用でもありません。
マンションP・・父とBの居住用・・長男A相続・・Aは父所有のマンションQに居住していたため同居ではなく、「家なき子」にも当たらず小規模宅地特例不適用
マンションQ・・長男A居住用・・長女B取得・・父、Bの居住用ではないため小規模宅地特例不適用
ではどうすればよかったのか?
遺言を書く前に小規模宅地特例適用の有無を考慮に入れた検討を行っておくことが必要だったのではないでしょうか。数千万円単位で相続税評価額が変わってきますので相続税額にも大きな影響を及ぼします。
上記の例でいえば、以下のようであれば特例適用の可能性がありました。
① AはマンションPを相続するのだから生前から父と同居することができなかったのだろうか?
② Aが他のマンションに転居して「家なき子」に該当することは選択肢になかったのか?
③ マンションPは長女Bが相続し、マンションQは長男Aが相続することはできなかったのか?
④ 遺言を破棄してAB合意のもとに➂の相続をすることは可能か?
もちろん税務の側面だけで判断することはできません。
現実的に難しい場合も少なくないと思います。
遺言を書く場合には小規模宅地特例以外にも考慮すべき問題が多くあります
事前の確認をされることをお勧めいたします。