妻の預金は亡くなった夫の名義預金、それとも妻の預金?
相続税の調査で一番問題となるのが、いわゆる「名義預金」と言われています。
「名義預金」とは本来は本人の預貯金であるにもかかわらず、妻や子供、その他の人の名義の預貯金にしていることです。
この「名義預金」を本人の相続財産に加えなければ相続税額は減少します。
そのため、「名義預金」を使う例が頻繁に起こります。
もちろん「名義預金」であれば本人の財産として申告しなければなりません。
こんな例がありました
夫はサラリーマンをしており、妻はパートなどに出たことはあるもののほぼ専業主婦でした。
夫は70歳まで会社勤めをし、その後年金生活でしたが、90歳を超える時には夫婦で施設に入っていました。妻が認知症になり物忘れがひどい状態で一人では介護できない状態だったためです。
その夫が先日亡くなりました。
財産を調べると父名義の預金が3,000万円、妻名義の預金が3,000万円ありました。
夫名義の3,000万円の預金は夫の相続財産ですが、妻の3,000万円の預金は「名義預金」でしょうか?
あるいは「名義預金」ではないと主張・立証するためには何が必要でしょうか?
妻はパートに出たことはあるもののほぼ専業主婦だった。
ということは、妻の収入は基本的にはありません。
すると、3,000万円もの預金はどこから?
やはり、夫の財産=「名義預金」ということになりますか?
子供たちから「母も財産を持っていたはず」と言われ、親戚にも協力してもらいながら細かく調べてもらうよう依頼しました。
① 妻の実家の相続の際に祖父母や両親から相続した財産は有りませでしたか?
② 結婚の際に持ってきた持参金はありませんでしたか?
③ 夫や両親から贈与された金銭はありませんでしたか?
④ パートの収入は合計するといくらぐらいでしたか?
⑤ 10年前の妻の預金残高はいくらぐらいでしたか?
⑥ 妻の預金の管理は誰がしていましたか?
⑦ 所得税、贈与税の申告書はありませんか?
⑧ 家にある書類を探してみてくれませんか?
すると、40年前に亡くなった妻の父から土地を相続し、その土地の売却代金が2,500万円近くあることがわかりました。
家にあった戸棚から当時の確定申告書の控えが出てきました。
その預金に年金他を加えると3,000万円ぐらいになります。
ただし、これで妻の預金で「名義預金」ではないとの確定的な証拠とはなりませんが、有力な証拠ではあります。
後は、税務署との話し合いになります。
あきらめなくてよかったです。