相続人が認知症になったら
推定被相続人の方が認知症になる前に、遺言や家族信託などの対策をとって遺産分割の方針を明らかにしておくことは大切とよく言われるところです。
しかし、最近は高齢化が進み推定相続人の方が認知症になるケースも多くあります。
被相続人が100歳、相続人が80歳で認知症などという場合です。
被相続人が遺言などを定めていない場合には、相続人が認知症になっていると、その相続人は自らの判断が適切にできないとされ、遺産分割に参加できなくなってしまいます。
遺産分割をするためには成年後見人を家庭裁判所に選任してもらう必要が出てきます。
選任された成年後見人は相続人の後見人として遺産分割協議に参加することになります。
ただ、この場合には認知症になった相続人の法定相続分は最低限確保される分割がなされることとされています。したがって、相続人間で自由に分割できるということにはなりません。資産の有効活用等の面からは支障をきたすことになります。
さらに、成年後見人は家族の人がなることも可能ですが、その被成年後見人の金融資産が1000万円ぐらい以上あると司法書士等の専門家が選任されることが多くあります。被成年後見人の財産を守るという観点からの処置となっています。
この場合には、成年後見人への報酬として毎月数万円を要しますが、その報酬はその被成年後見人が亡くなるまで発生してしまいます。成年後見人は遺産分割終了後にも解除することはできません。被成年後見人がなくなるまでには、数百万円の支出になることも少なくありません。
推定被相続人が遺言などを作成し遺言執行者を選任しておけば、遺言によって遺産分割がなされるため推定相続人の成年後見人選択というような手続きは不要です。
残される家族のためにも遺言、家族信託の活用を早めに行うことが必要です。