上原note
2023.05.24
預貯金債権の仮払制度
遺産分割がまとまらず、預金の払い出しができないために、葬式費用、借入金返済などの支出ができない場合があります。
相続財産の中には預金があって、それを取り崩せば支払えるのに、相続が開始したということで金融機関が口座を凍結してしまい、支払えないケースです。
これは民法898条で「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」とされ、預貯金債権も相続人の共有となっているため遺産分割が確定するまで単独では引きおろしができないためです。
このような事態に対処するために令和元年7月から2つの仮払い制度が設けられました。
① 民法909条の2(遺産分割前における預貯金債権の行使)
他の相続人の合意がなくても単独で以下の金額の払戻ができるようになりました。
相続人が単独で払い戻しをすることができる金額
=相続開始時預貯金の額(口座基準)× 1/3 × 当該相続人の法定相続分
(ただし、一つの金融機関から払い戻しができるのは150万円まで)
② 家庭裁判所による仮分割の仮処分(従来制度の緊迫要件の緩和)
家庭裁判所は預貯金に限定して仮払いの必要性があると認められた場合は、他の相続人の利益を侵害しない範囲で預貯金の仮払いを認めることができます。
しかし、この処分は遺産分割の調停または審判を申し立てることが条件とされていますので時間と費用を要します。150万円以上の多額の費用に支払いをする必要がある場合などに検討することになるでしょう。