不動産の法人化のメリット・デメリット
個人で所有・運用している不動産を法人化(管理会社や資産管理会社を設立し、不動産を移転・賃貸する形)することにはいくつかの税務・法務・経営上のメリット・デメリットがあります。
法人化のメリット
① 節税効果・所得分散が可能
→ 法人から家族へ役員報酬・給与を支払えば、所得を分散して所得税の累進課税を軽減できます。
法人税率の方が低い場合がある
→ 個人所得税は最高45%+住民税10%ですが、法人税は中小企業なら実効税率約23%程度。
経費計上の幅が広がる
→ 例えば、社宅制度を利用して家賃や車両費を経費化できる場合も。
② 相続対策
株式での承継が可能
→ 不動産ではなく「法人株式」での承継になるため、1つの法人に複数物件を集約すれば、承継が簡易に。
法人の財産は相続税評価額に制限あり
→ 株式の評価(類似業種比準・純資産価額等)によって、相続税評価額が圧縮できる場合あり。
③ 社会保険の加入義務の活用
社会保険の加入要否をコントロール可能
→ 法人役員報酬を年130万円未満にすれば、被扶養者の範囲に収まることも。
法人化のデメリット
① 登記や移転に係るコスト
不動産を法人に移転する際、登録免許税・不動産取得税が発生
→ 例:登録免許税(評価額×2%)、不動産取得税(評価額×3~4%)
② 売買・贈与時に譲渡所得税がかかる
個人から法人への売却・贈与時に譲渡所得税が発生
→ 時価での譲渡とされ、含み益がある場合には税負担が大きくなる可能性あり。
③ 法人の維持コスト
会計・税務申告の外注費、法人住民税の均等割(最低7万円/年)など赤字でも均等割がかかる
④ 損益通算・特別控除が使えない
不動産所得と給与所得などの損益通算ができない
個人事業主なら使える青色申告特別控除(最大65万円)が使えなくなる
法人化のメリットデメリットを勘案し慎重に判断しましょう。