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グループ通算制度のメリット・デメリット

グループ通算制度は、グループ内の法人が所得を通算することができる制度です。グループ内のある会社の黒字を、他の会社の赤字と相殺することで、節税することが可能です。

ただ、グループ通算制度はやや複雑であり、メリットとデメリットがそれぞれありますので、詳しく紹介していきます。グループ通算制度を採用するかどうか判断するうえでのご参考としてください。

1.グループ通算制度とは?

グループ通算制度」とは「100%資本関係がある国内のグループ法人の間で所得を通算することができる制度」です。グループ内の法人に黒字の会社と赤字の会社がある場合に所得を通算することができ、税負担を抑えることが可能です。

以前は「連結納税制度」によりグループを1つの納税単位と捉えて親会社が連結で申告し、納税する制度がありましたが、1つの法人で修正があった場合にグループ全体で修正が必要になるなど事務負担が問題となっていました。

グループ通算制度は1つの法人で後発的に修正が発生した場合であっても、原則的に他の法人に影響させない仕組みになっており、連結納税制度よりも使いやすい制度になっています。

グループ通算制度

2.グループ通算制度のメリット

グループ通算制度はグループに強制される制度ではなく、選択制の制度です。適用するかどうかは、グループ法人の任意になります。グループ通算制度を適用する主なメリットは、次のとおりです。

2-1.グループ内の所得の通算によるキャッシュの増加

グループ通算制度では、グループ内の法人の所得(黒字)と損失(赤字)を相殺することができます。所得から損失を差し引くことができるため、グループ全体の所得は少なくなります。法人税の計算は、所得に法人税率を乗じて計算しますので、所得が少なくなれば法人税が少なくなりキャッシュの増加に繋がります。

グループ通算制度を適用しない場合は、法人単体で申告することになるため、所得が発生した法人は納税を行い、損失が発生した法人は繰越欠損金として繰り越すことになりますので、グループ通算制度を適用した方がグループ全体の税負担を抑えることが可能です。

グループ通算制度による所得の通算の具体的な例を見ていきましょう。

<グループ通算制度の適用なし>

グループ
会社
所得金額 法人税
(23.2%)
欠損金
の繰越
親会社 8,000万円 1,856万円
子会社① 2,000万円 464万円
子会社② -1,000万円 -1,000万円
合計 9,000万円 2,320万円 -1,000万円

<グループ通算制度の適用あり>

グループ
会社
所得金額 欠損金
の分配
分配後
の所得
法人税
(23.2%)
親会社 8,000万円 -800万円 7,200万円 1,670.4万円
子会社① 2,000万円 -200万円 1,800万円 417.6万円
子会社② -1,000万円
合計 9,000万円 -1,000万円 9,000万円 2,088万円

子会社②に損失がでており、その他のグループ法人は黒字の場合でグループ通算制度の適用がない場合(単体での申告)は、子会社②の損失1,000万円が翌期以降に繰越になり、グループ法人には何の影響も与えません。

一方、グループ通算制度を適用した場合は、子会社②の損失は他のグループ法人の所得に応じて通算することができるため、法人税232万円を抑えることができます。法人税を抑えることができると、キャッシュの増加に繋がり、グループ全体のキャッシュフローが改善されることになります。なお、グループ内での税負担は「通算税効果額」により精算されます。

ただし、子会社②の損失はグループ内で通算されるため、繰越欠損金として翌期以降に繰り越されることはありません。

2-2.繰越欠損金の早期解消

青色申告の場合、損失がでた場合に最大で10年間欠損金を繰り越すことができ、所得がでた場合に充当させることができます。しかし、法人が赤字体質である場合には、所得が発生せずに欠損金が充当されないまま10年を過ぎてしまうこともあります。

グループ通算制度では、グループ内に赤字体質の法人がある場合やグループ内に繰越欠損金がある場合には、グループ全体で所得を通算することができるため、繰越欠損金を早期に解消できるようになります。

2-3.税額控除の限度額の増加

研究開発税制・外国税額控除といった税額控除の限度額は、法人税額に対して一定の割合で計算されます。グループ内の法人が単独で税額控除の限度額を計算するよりも、グループ通算制度を適用してグループ全体で税額控除の計算を行ったほうが、税額控除の限度額が増加します。税額控除の限度額が増加すると、グループ全体での税負担が軽減されるため、グループ全体のメリットになるでしょう。

2-4.税務コンプライアンスの向上

グループ通算制度の前身である「連結納税制度」では、親会社が子会社の申告も一括して管理し、申告納税を行っていたため、親会社の事務負担が問題になっていました。グループ通算制度では、各法人がそれぞれ個別で申告納税を行う必要があり、親会社の事務負担の軽減とともに、子会社の税務コンプライアンスの向上が求められることになります。

子会社の税務コンプライアンスが向上することで、グループ全体の税務バランスの強化に繋がるでしょう。

3.グループ通算制度のデメリット

グループ通算制度にはメリットだけではなく、次のようなデメリットもあります。

3-1.中小企業向け特例措置が利用できない場合がある

中小企業は、税制面で大企業よりも優遇されており、特例措置が設けられています。グループ通算制度を適用すると、グループ法人のうち1社でも中小企業に該当していないとグループ全体が大会社として取り扱われ、中小企業向け特例措置が利用できなくなってしまいます。

3-2.法人税の軽減税率をグループ全体で受けることになる

中小企業である場合、800万円以下の所得については15%の軽減税率が適用される「法人税の軽減税率」があります。グループ通算制度を適用すると、グループ全体の合計所得のうち800万円以下の部分だけが軽減税率の対象になるため、状況によってはグループ通算制度を利用していない場合よりも税負担が増加してしまうこともあります。

3-3.交際費等損金算入限度額の減少

中小企業には、交際費を損金にできる限度額が設定されています。「年間800万円までの交際費」または「交際費のうち接待飲食費の50%まで」のいずれかを選択して、損金に算入にすることができます。グループ通算制度を適用すると、通算定額控除限度額(年800万円)を各法人が支出する交際費等の金額に応じて分配することになるため、結果として、各法人の交際費等損金算入限度額が減少することになります。

3-4.クループ加入前の繰越欠損金はグループ全体で使用できない

グループ法人が時価評価法人に該当しない法人(完全支配関係がある法人など)である場合で、通算前に繰越欠損金が発生している場合には通算グループに繰越欠損金を持ち込むことができます。ただし、持ち込んだ欠損金は「特定欠損金」として区分され、グループ全体で使用することはできません。持ち込んだ法人の所得を限度額としてのみ使用することができます。

3-5.事務手続きの負担が増加する

グループ通算制度を適用するためには、適用開始日の3か月前までに申請を行わなければなりません。申請するまでには、グループ内の法人がグループ通算制度の要件に該当するかどうかの確認が必要です。また、グループ通算制度を適用している場合は、資本金の額にかかわらず電子申告による申告を行う必要があり、これまでよりも事務手続きの負担が増えるでしょう。

3-6.グループ全体で連帯納付責任を負う

グループ通算制度を適用すると、グループ全体で法人税の「連帯納付責任」を負うことになります。グループ内で法人税の納付が行われていない法人がある場合は、グループ内の他の法人が代わって法人税の納付を行わなければなりません。

まとめ

グループ通算制度のメリットとデメリットについて主なものを紹介しました。これ以外にも、個別の会社の状況に応じて、判断すべきポイントがあります。もし、グループ通算制度を採用すべきかどうか悩まれた場合は、税理士等の専門家にご相談されることをお勧めします。

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