中小零細企業の60~70%が赤字だと聞くことがあります。むしろ赤字が当たり前のような雰囲気さえ中小零細企業の経営者の中にはびこっている感じです。
しかしこれは大変危険なことだと思います。世間一般が赤字だから自分の会社も赤字でも仕方がないという感覚で経営を行っていれば、いつの間にか赤字経営が当たり前になってしまいます。「赤字で大変だ」という危機感を喪失し、何としても利益を出すという「気概」が失われてしまいます。経営者としてあるべき強い経営姿勢が弱体化され、またそれを容認してしまうと本当に会社をダメにしてしまいます。
確かに、円高、消費の低迷など経済環境に厳しいものがありますが、その悪環境下でも知恵と努力で黒字決算を創出するところに経営者としての価値があると思いますがいかがでしょう。突発的要因で1期は赤字、しかし翌年には回復させる、そのような強い覚悟を復活させましょう。
そこで、赤字がいかに「大きな危機」であるのかを改めて実例で見てみましょう。
具体例・赤字会社A社
この表は、利益と資金の関係を視覚的につかむのにとても便利な表(利益と資金の構造図)で、毎月の月次報告や決算報告でも使わせていただいています。
① A社の利益は△2,700千円の赤字です。減価償却費が2,000千円あり営業収支は△1,000千です。しかし、6,000千円の借入金の返済が重くこの資金を賄うために、銀行借入5,000千円と社長からの借入3,000千円を行って資金繰りをつけています。
A社のキャッシュフロ-
当期の赤字 △2,700千円
減価償却費 2,000
税金支払額 △300
差 引 △1,000 ・・・営業収支
借入金返済 △6,000
借入金発生 8,000(銀行借入金5,000+社長借入金3,000)
キャッシュフロ- 1,000千円
② A社は、当期利益が改善できれば営業収支はプラスに転じます。仮に1,300千円(4,000千円の利益改善)の利益が計上できたとしましょう。すると営業収支は減価償却費の効果で3,000千円のプラスです。
改善されたA社のキャッシュフロ-
当期の黒字 1,300千円(△2,700千円+損益改善4,000千円)
減価償却費 2,000
税金支払額 △300
差 引 3,000 ・・・営業収支
借入金返済 △6,000
借入金発生 3,000(銀行借入金0+社長借入額3,000)
キャッシュフロ- 0千円
借入金発生を行わなくともキャッシュフロ-は0千円。期限のない自己金融である社長借入3,000千円で銀行借り入れをしなくて済むようになります。この選択の良いところは、何よりも営業収支がプラスに転じたことで、将来への展望が見える会社に変化したことです。同じ資金繰りでも借入に頼った場合には、将来その借入返済の負担が重くのしかかってきます。自助努力か借入金かの判断のときに、黒字決算にコミットすることで会社の未来が開けました。
では、4,000千円の利益をいかに生み出すかということですが、A社にとって年間4,000千円(月350千円弱)の利益改善は射程距離圏内でしょう。またCFを維持するためには金融機関との返済額減額交渉も功を奏するでしょう。問題なのは、安易に金融機関からの借り入れに依存し、黒字決算を放棄していることです。黒字決算は会社の未来を作り、社長も社員もみんなが元気になる特効薬です。赤字の会社は一刻も早く黒字転換のための努力をしましょう。
プロからの一言
赤字脱却には経営計画が必須です。経営計画に基づいて販売計画、購買計画、人員計画、経費計画、借入計画、投資計画を立て黒字化への道筋をつけましょう。お手伝いさせていただきます。