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会社経営を行っている方や経理の業務を行う方にとって非常に重要な業務に「決算」があります。
決算という言葉は聞いたことがあるという方もいると思いますが、決算とは何か? 決算業務では何を行えばいいのか? あまり詳しくない方もいるのではないでしょうか。
ここでは、法人の決算の目的や業務の流れ、必要書類について詳しく解説します。決算の流れがわかるとスムーズに業務を進められ、期限に余裕を持って法人の確定申告を行うことができるようになります。
1.法人の決算とは
法人の決算とは、会社の一定期間ごとの収益と費用を確定させ、決算日時点の会社の資産と負債、純資産(資本)を把握する業務のことを言います。会社によっては、四半期ごとに決算を行うこともありますが、一般的な中小企業の場合は法人税や消費税を確定させるために年1回の決算を行います。
1-1.決算の目的
法人の決算は、正確に会社の損益や財務状況を把握すること以外にも次のような目的があります。
1-1-1.税額を確定させるため
法人は、原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内に、法人税をはじめ消費税、法人住民税、法人事業税など、各種税金の確定申告を行わなければなりません。これらの申告書は決算書を基礎として作成することになるため、法人の各種税金を確定させるうえで決算業務は必要不可欠です。
1-1-2.株主などの利害関係者に報告するため
法人には、株主へ財務状況や事業報告を行う義務があります。決算を行わなければ決算書を作成できず、株主は会社の状況を知ることができません。株主が出資した資本金が適切に運用されているかを知るうえでも決算業務は必ず必要になります。
また、決算書は融資を申し込む金融機関や取引先などからも要求される場合が多いため、円滑に事業を行うためにも重要です。
2.法人の決算の流れ
法人の決算業務の流れは各会社によって異なりますが、大まかな流れはどの会社も共通しています。一般的な決算の流れは次のとおりです。
2-1.決算の基礎となる日々の記帳を正確に行う
決算は日々の記帳の集大成と言っても過言ではありません。決算業務に移る前に日々の記帳が正確に行われているかどうかをチェックし、帳簿の残高が実情と合致しているかを確認しましょう。
【帳簿と突き合わせる主な項目】
- 預貯金の残高
- 売掛金・買掛金の残高
- 固定資産台帳と実際の固定資産
- 借入金の残高
- 預り金(従業員の社会保険料や源泉所得税)の残高
2-2.決算整理前の試算表を作成
記帳の確認の後は決算の元になる最終月の試算表を作成します。最終月の試算表は「決算整理前試算表」と言い、決算の土台となります。できるだけ完成度の高い試算表を作成することができるかどうかが今後の決算業務のスムーズさに影響を及ぼしますので、正確さを意識して作成しましょう。
決算整理前に試算表を作成する場合は、各勘定科目別に分けられた総勘定元帳をチェックすることが大切です。試算表や総勘定元帳の作成は会計ソフトを利用していれば自動で作成されますので、必ず確認しましょう。
2-3.実地棚卸を帳簿に反映させる
実地棚卸とは、商品や製品、原材料、仕掛品などの棚卸資産の数量や状態を直接確認・把握する作業のことを言います。
実地棚卸で確認した棚卸資産は、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法など、事業に適した評価方法により金額を算定し、月初の棚卸しまたは期首の棚卸しを仕入や原価に振替え、期末棚卸高を仕入や原価から振替える仕訳を入力することで実地棚卸を帳簿に反映させます。
2-4.決算整理仕訳を入力する
実地棚卸以外の決算整理仕訳を作成し入力を行います。主な決算整理仕訳には次のようなものがあります。
仮勘定の整理
仮払金や仮受金の勘定科目に残高がある場合、適切な残高に振替を行います。例えば、従業員の出張のために会社が一時的に立て替えている場合には仮払金や立替金という科目で処理していることがあります。既に出張が終了し、精算ができる場合であれば仮勘定から旅費交通費などの適切な科目へ振替を行います。
減価償却費の計上
建物や機械などの固定資産は耐用年数に応じて減価償却を行い費用化します。決算整理仕訳では対象期間の減価償却費の計上を行います。
期間損益の計上
法人の決算は「発生主義」を用いて行われます。期間内の損益に当たらないものは経過勘定である「前払費用」「前受収益」「未払費用」「未収収益」として計上し、期間内の正しい損益に振替を行います。
引当金の処理
将来発生すると思われる損失に備え、その損失を負債に計上する「引当金」の計上を行います。引当金には貸倒引当金、退職給付引当金、賞与引当金などがあります。
2-5.税金を計上する
決算整理仕訳の入力が終わったら次は税金の計算を行います。まずは消費税の計算と未払消費税の仕訳を入力し、次に、税引前当期純利益を基準にして法人税や法人事業税、法人住民税の計算を行い、税額を未払法人税等として計上します。
2-6.決算書の作成
税金の計上が終了したら貸借対照表と損益計算書が確定します。その他の決算書として株主資本等変動計算書と個別注記表があり、配当などの純資産の部の変動がある場合には株主資本等変動計算書に記載が必要です。個別注記表には、決算書を補足する情報や会計方針などの詳細を記載します。
2-7.取締役会・株主総会等で承認を得る
株式会社の場合は、定時株主総会または取締役会で決算書の承認を得る必要があります。(合同会社の場合は承認プロセスが会社法に定められていません。)
2-8.法人税申告書の作成、提出と納税
税金の計上により計算した法人税等の申告書を作成し、税務署、都道府県、市区町村に申告書を申告期限までに提出します。提出と同時に納税が必要になりますので、納税資金を準備しましょう。
2-9.決算書の保存
決算書は、会社法で10年間の保管が義務付けられています(税法では7年)。大切な書類ですので、しっかりと保管・管理を行いましょう。
3.法人決算の必要書類
決算に必要な書類(法人税申告書の必要な書類)は決算書だけではありません。具体的には次の書類を作成し、添付する必要があります。
【法人決算の必要書類】
- 各種確定申告書(法人税・消費税・法人事業税・法人住民税)
- 決算書(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)
- 勘定科目内訳書
- 事業概況説明書
※法人税申告書には決算書、勘定科目内訳書、事業概況説明書の添付が必要になりますが、都道府県に提出する法人事業税、市区町村に提出する法人住民税については添付の必要はありません。ただし、法人事業税における外形標準課税法人に該当する場合には決算書等の添付が求められます。
4.法人決算は自分でできる?税理士に依頼したほうが良い?
法人の決算は経営者や経理担当者が行っても法律的に問題はありません。そのため、税理士に依頼しなくても法人の決算を行うことができます。
ただし、法人の決算は個人の確定申告よりも複雑になっており、会計の知識と、法人税に関する知識が必要です。消費税の課税事業者であれば、消費税に関する知識が求められます。そのため、税理士に依頼することが一般的です。
これまで見てきたとおり、法人の決算には日々の記帳業務の他にやらなければならないことが多くあり、間違えてしまうと税務調査でペナルティが課されてしまうこともあります。正しい決算、正しい申告を行うためにも税理士に依頼することをおすすめします。
また、税理士に依頼することで節税のアドバイスをもらうこともでき、法人税を抑えることができるケースもあります。
法人の決算でお悩みの場合は、一度、税理士にご相談ください。