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新型コロナウイルス感染症対策をきっかけに多くの企業は、オンラインへの移行が求められています。企業が新しいことに挑戦するためには、必ず投資する資金が必要です。従業員がオンラインで働くテレワークについても例外ではありません。東京都ではテレワークを推進する一環として都独自の助成金を準備しています。
ここでは、2021年版の東京都テレワーク助成金についてご紹介します。
1.東京都が実施しているテレワーク助成金
企業のIT関連への投資は政策として行われており、経済産業省のIT導入補助金をはじめ、各自治体で独自の助成金や補助金の交付、IT関連の支援を行っています。ITに関する支援が最も充実している東京都には、次の2つの助成金・奨励金制度があります。
テレワーク促進助成金
テレワークへ移行するための職場環境整備を行う場合に交付を受けることができる助成金です。具体的には社内通信環境の整備にかかる費用、システムの再構築費用、業務改善や効率化を目的として導入する機器の購入費用などが助成の対象になります。
テレワーク・マスター企業支援奨励金
テレワークのさらなる普及と定着、拡大を図る企業に交付される奨励金です。奨励金の額は、テレワークの実施人数や通信費、機器の購入費用、ソフト使用料などをもとに計算され、最大で80万円の奨励金が交付されます。
【参考】東京都以外の助成金
※東京都以外でも、以下の自治体でIT関連の助成金を交付しています。東京都以外の企業は、お住いの自治体のホームページで確認することをおすすめします。
山梨県「オフィス移転等に対する新たな助成制度」
山梨県に企業のオフィスを移転する場合の助成金です。オフィスの賃貸料や通信回線の使用料、社員への住宅手当まで幅広い費用に対して助成金が交付される制度です。最大で3,000万円まで助成されます。
札幌市「新型コロナウイルス感染症対策テレワーク導入補助金」
テレワークに取り組む札幌市内の中小企業に対し、テレワーク環境整備に関する費用が補助されます。最大で60万円が補助されます。
金沢市「中小企業テレワーク導入支援助成金」
テレワークに対応するために職場環境作りにかかる費用の一部が助成されます。助成金は最大で20万円です。
2.テレワーク促進助成金
ここでは、東京都の「テレワーク促進助成金」についてご紹介します。
2-1.テレワーク助成金の概要
在宅勤務やモバイル勤務等を可能にするために設置される情報通信機器等の購入費用について助成されます。
2-2.助成率・助成限度額
テレワーク助成金の助成率・助成限度額は次のとおりです。助成金の上限額は、従業員数が30人以上の企業の方が高く、助成率は従業員数が30人未満の方が高く設定されています。
常時雇用する労働者数 | 助成金の上限 | 助成率 |
---|---|---|
30人以上999人以下 | 250万円 | 2分の1 |
2人以上30人未満 | 150万円 | 3分の2 |
2-3.対象になる経費
助成の対象になる経費には、次のような経費があげられます。
科目 | 内容 | 具体例 |
---|---|---|
消耗品費 | 1,000円以上10万円未満の機器 | パソコン、タブレット、スマートフォン、周辺機器等 |
ソフトウェア | 10万円以上のソフトウェア | 財務会計ソフト、CADソフト等 |
外注費 | システム機器の設置費用、保守委託料、運用サポート費 | VPN環境構築の初期設定費用、VPNルーター保守管理費用等 |
賃借料 | 機器のリース料やレンタル料 | パソコンリース・レンタル料等 |
使用料 | ソフトウェア利用料等 | ライセンス使用料等 |
2-4.助成の要件
テレワーク助成金の交付を受けるためには2種類の要件があります。
2-4-1.テレワーク勤務実績要件
テレワーク勤務実績要件では、テレワーク助成期間中に次の要件を満たさなければ助成金を満額受給することはできません。
- 助成事業の実施期間(支給決定日から3か月以内)に、テレワーク実施対象者全員にテレワーク勤務を6回以上実施させた実績があること
(テレワーク勤務実績が6回に満たないテレワーク実施対象者に係る経費は、助成額の確定時に減額対象となります)
2-4-2.助成対象事業者要件
テレワーク助成金の対象事業者には以下の要件があります。要件を満たしていなければ申請することができません。内容は多岐にわたるため、重要なものだけご紹介します。
- ①東京都内で事業を営む中堅・中小企業者であること
従業員の数が2名以上999人以下でなければなりません。 - ②都が実施する「2020TDM 推進プロジェクト」に参加していること
「2020TDM 推進プロジェクト」とは、東京オリンピック・パラリンピック時の交通混雑緩和プロジェクトです。以下のサイトより参加申し込みを行うことができます。
https://2020tdm.tokyo/project/index.html - ③都税に未納がないこと
- ④過去5年間に重大な法令違反等がないこと
- ⑤労働関係法令を遵守していること
2-5.助成金支給までの流れと申請方法
テレワーク助成金の申請から支給までの流れは次のような手順で行われます。
手順①申請書の作成と提出
助成金の申請に必要な書類(次項)を作成し、公益財団法人東京しごと財団へ郵送で提出するか、またはJグランツを活用した電子申請により書類の提出を行います。訪問による提出は受け付けられませんので注意が必要です。また、社会保険労務士などの代理人による申請は電子申告が不可となっています。
手順②審査・支給決定通知
公益財団法人東京しごと財団で申請書の審査が行われ、合格すると支給決定通知が届きます。
手順③助成事業の実施
申請書で計画したテレワーク環境整備のための機器の発注・契約・購入を支給決定日から3か月以内に行います。また、この3か月で「テレワーク勤務実績要件」である「テレワーク実施対象者全員にテレワーク勤務を6回以上」の要件を満たさなければ助成額の減額対象になってしまいます。支給決定前に購入した機器などは、助成金の対象外になってしまうため注意しましょう。
手順④実績報告書類の作成と提出
支給決定日から4か月以内に助成事業の実績報告書類を作成して提出しなければなりません。提出時には「テレワーク規定」と「テレワーク東京ルール実践企業宣言制度への登録に関する資料」を一緒に提出する必要があります。「テレワーク東京ルール実践企業宣言」とは、テレワーク戦略ビジョンを踏まえ実践ルールを策定し実施していくことに賛同するためのものです。下記サイトで登録することができます。
「テレワーク東京ルール」実践企業宣言
https://www.telework-rule.metro.tokyo.lg.jp/
手順⑤審査・助成金額の確定
実績報告書類が審査され、助成金額が確定します。
手順⑥助成金請求書兼振込依頼書の提出
助成金額が確定すると通知が送付されてきます。そこに記載されている助成金額を公益財団法人東京しごと財団へ請求することで助成金が指定した銀行口座へ振込まれます。
2-6.必要書類
テレワーク助成金の申請には多くの書類が必要になります。ここではその中でも重要な書類を紹介します。必要な書類全てを確認する場合には、下記サイトをご覧ください。
【参照サイト】テレワーク促進助成金 募集要項
<申請に必要になる書類(一部)>
- 事業計画書兼支給申請書(様式第1号)と事業所一覧
- 誓約書(様式第2号)
- 就業規則
- 商業・法人登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 「2020TDM 推進プロジェクト」への参加に関する資料
- テレワーク環境構築図
- 見積書(事業計画書兼支給申請書に記載されている購入費用がわかるもの)
<実績報告に必要になる書類(一部)>
- 実績報告書(様式第7-1号)と事業所一覧
- テレワーク実施状況(稼働実績)報告書(様式第7-2号)
- テレワークに関する規程
- 「テレワーク東京ルール実践企業宣言」制度への登録に関する資料
- 見積書、発注書、契約書、納品書
2-7.申請期間
テレワーク助成金の申請期間は、令和3年5月10日(月)~令和3年12月24日(金)までとなります。
3.テレワーク・マスター企業支援奨励金
続いて、東京都が行っている「テレワーク・マスター企業支援奨励金」についてご紹介します。この奨励金を受給するためには、令和3年6月30日までに事前エントリーを行い、3か月間の「テレワーク定着トライアル」を行わなければなりません。
3-1.テレワーク・マスター企業支援奨励金の概要
「テレワーク定着トライアル期間(令和3年5月12日~9月30日)」に、テレワーク可能な労働者数のうち「社員の7割以上が週3日以上、3か月間」テレワークを実施した企業を東京都が「テレワーク・マスター企業」として認定します。
テレワーク・マスター企業に対してテレワーク実施人数、および通信費や機器・ソフト利用料など奨励金の対象経費に基づき最高80万円の定額の奨励金を支給する制度が「テレワーク・マスター企業支援奨励金」です。
3-2.奨励額
テレワーク・マスター企業支援奨励金の奨励額は、申請企業が設定したテレワーク実施期間(3か月)のテレワーク実施人数(1日平均)とトライアル経費によって異なります。
トライアル経費とは、テレワーク実施期間(3か月)に、社員がテレワークを実施するために企業が負担した経費のうち奨励金の対象になる経費のことを言います。
テレワーク 実施人数 (1日平均) |
トライアル経費 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
80万円以上 | 60万円以上 | 40万円以上 | 20万円以上 | 10万円以上 | 10万円未満 | |
70人以上 | 80万円奨励 | 60万円奨励 | 40万円奨励 | 20万円奨励 | 支給なし | 支給なし |
50人以上 | – | 60万円奨励 | 40万円奨励 | 20万円奨励 | 支給なし | 支給なし |
30人以上 | – | – | 40万円奨励 | 20万円奨励 | 支給なし | 支給なし |
1~30人未満 | – | – | – | 20万円奨励 | 10万円奨励 | 支給なし |
3-3.対象になるトライアル経費
奨励金の対象になる経費は、申請企業が設定したテレワーク実施期間(3か月)に支出した次のような経費がトライアル経費に該当し、奨励金の対象になります。
科目 | 内容 | 具体例 |
---|---|---|
人件費 | テレワークに係る手当て | 在宅勤務者が負担する自宅の水道光熱費及び通信費用等、テレワーク規定等に定めている経費 |
役務費 | 機器の通信に係る費用 | 携帯電話通話料、インターネット通信料など |
委託費 | システム導入時運用サポート費 | テレワーク実施に向けたコンサルティングやテレワーク手当導入のためのコンサルティング経費等 |
賃借料 | 機器リース・レンタル料 | サーバー利用料、パソコン等機器のリース・レンタル料 |
使用料 | サテライトオフィス利用料 ソフトウェア利用料 クラウドサービス利用料 |
サテライトオフィス施設利用料、ソフトウェア利用に係るライセンス使用料等 |
3-4.申請手続きおよび申請に必要な書類
申請手続きを行うためには、令和3年6月30日までに事前エントリーを行い、3か月間の「テレワーク定着トライアル」が必要です。期限が迫っていますので、お急ぎください。詳しい申請手続き、および申請に必要な書類は下記ホームページをご覧ください。
【参照サイト】テレワーク・マスター企業支援奨励金 募集要項
まとめ
今回は「東京都が行っている企業のテレワークに対する助成金と奨励金制度」についてご紹介しました。
テレワーク・マスター企業支援奨励金については期限が迫っており、利用が難しいかもしれませんが「テレワーク助成金」についてはまだ申請期間に余裕があります。ただし、提出しなければならない事業計画書兼支給申請書や実績報告書の作成には時間を要すると思われます。