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家族信託にかかる費用相場と費用を抑えるポイント

家族信託はメリットが多く、利用価値が非常に高い制度です。

しかし、家族信託の費用は高いといったイメージがあるかと思います。果たして、実際に家族信託の費用は高いのでしょうか?

そこで今回は、多くの方が気にされている家族信託にかかる費用についてご紹介いたします。

1.家族信託にかかる費用

家族信託を組成するまでには、以下のステップがあり、各ステップでそれぞれ費用が発生します。費用は、依頼する方に請求されるのが原則です。

  1. 専門家のコンサルティング
  2. 家族信託の契約書作成
  3. 契約書の公正証書化
  4. 信託財産に不動産がある場合は信託登記の手続き

金額は、家族信託の対象となる財産の種類や数、金額などの内容に左右され、一言でいくらとは言えませんが、今回は一般的な相場をそれぞれご紹介いたします。

1-1.専門家へのコンサルティング費用

家族信託の専門家への相談費用

30~100万円程度

家族信託を成功させるためには、事前の計画が最も重要です。
成年後見制度や遺言などの方法もある中、本当に家族信託で良いのか、将来の相続のことなどを含め、綿密な計画が必要不可欠となります。

家族会議を行うなど、ご自分で計画を立てることもできます。しかし、ここは専門家のアドバイスを受けられた方が良いと思います。

実際に家族信託に要する費用のうち最も大きな割合を占めることにはなりますが、様々なトラブルを回避し、ご自分たちの置かれた状況に沿った計画にするためにも、専門家への相談は重要です。

専門家への報酬は、信託財産の1%程度が相場となっています。

契約書作成費用

コンサルティング料などに含まれることが多い

家族信託の計画を立案できたところで、その内容に基づき信託契約書を作成します。

この作業のみを専門家に依頼するケースは考えにくく、通常この費用はコンサルティングや公正証書化する費用に含まれます

1-2.契約内容を公正証書化する費用

公正証書の作成費用

5千円~10万円程度

公正証書は、法律の専門家である公証人が、当事者に本人の意思に基づく契約であることを確認のうえ作成するため、万一訴訟になっても証拠能力が高く、また、契約書正本の紛失や盗難にあっても、謄本は公証役場に保管されており再発行が可能です。信託契約書は、必ずしも公正証書にする必要はありませんが(※)、こうした理由から公正証書にしておくことが推奨されています。

信託契約書を公正証書化するためには、公証役場に支払う手数料が発生します。この手数料は、契約書に記載された財産価格によって決まります。

※ ただし、委託者が受託者を兼ねる「自己信託」の場合は、契約書は公正証書等によらなければ法的な効力がありあません。

財産金額 手数料
100万円以下 5,000円
100万円超~200万円以下 7,000円
200万円超~500万円以下 11,000円
500万円超~1,000万円以下 17,000円
1,000万円超~3,000万円以下 23,000円
3,000万円超~5,000万円以下 29,000円
5,000万円超~1億円以下 43,000円
1億円超~3億円以下 43,000円(+超過額5,000万円までごとに13,000円)
3億円超~10億円以下 95,000円(+超過額5,000万円までごとに11,000円)
10億円超 249,000円(+超過額5,000万円までごとに8,000円)

【参考サイト】12 手数料 「Q3. 法律行為に関する証書作成の基本手数料」|日本公証人連合会

公正証書の作成代行費用

10~15万円程度

信託契約書を公正証書にするためには、公証役場での事前の打合せが必要となります。

もちろん、事前準備を含めて当事者だけで契約書を公正証書にすることは可能です。しかし、代行費用を支払って専門家に依頼することもできます。

煩雑な事前の打合せは専門家に任せておけば、作成当日に公証役場に行くだけで公正証書化が完了するので、当事者の負担が軽くなります。

1-3.不動産の登記費用

登録免許税

土地:固定資産税評価額  ×  0.3%
家屋:固定資産税評価額  ×  0.4%

信託財産に不動産がある場合には、委託者から受託者への所有権移転登記と、信託の登記が必要となります。

このうち、委託者から受託者への所有権移転登記の登録免許税は非課税ですが、信託の登記については、上記の登録免許税が発生します。

登記代行費用

不動産1件当たり5~10万円程度

司法書士に不動産の登記手続きの代行を依頼すると、不動産の数に応じて報酬がかかります。

2.ケース別家族信託の費用シミュレーション

家族信託にかかる費用は、依頼する専門家と信託財産の金額、不動産の有無に左右されます。

実際にかかる費用をイメージしていただきやすいように、ケース別に費用のシミュレーションをしてみましょう。

信託財産:預金5,000万円のみのケース

内容 金額
家族信託の相談費用 50万円
公正証書化の実費 2万9千円
公正証書化代行費用 10万円
合計 62万9千円

信託財産:預金1,000万円、土地5,000万円、家屋2,000万円のケース

内容 金額
家族信託の相談費用 80万円
公正証書化の実費 4万3千円
公正証書化代行費 10万円
登記代行費用 10万円(2件分)
登録免許税 23万円(土地15万円、家屋8万円)
合計 127万3千円

信託財産:預金3億円、土地1億円のケース

内容 金額
家族信託の相談費用 130万円
公正証書化の実費 9万5千円
公正証書化代行費 10万円
登記代行費用 5万円(1件分)5万円(1件分)
合計 159万5千円

家族信託を相談できる専門家には、弁護士や司法書士、税理士、金融機関など様々あります。誰に依頼すれば安くなるということはなく、それぞれの料金設定によります。

家族信託を多く取り扱っている専門家であれば、ホームページなどに料金を明記しています。ご自分の相談内容に応じて選択すると良いかと思います。

3.家族信託の手続き後に発生する費用

信託契約が無事スタートした後にも、状況に応じてかかる費用があります。

3-1.信託契約の内容を変更する場合

原則として委託者、受託者、受益者の合意のもとで、信託契約書の内容を変更することができます。
新たな契約書を作成する必要はなく、既存の契約書を変更する手続きを取ります。契約書の一部変更を門家に依頼すると、10万円程度の費用がかかります。

さらに、受益者を変更した場合には、受益者変更登記の登録免許税として、不動産1件につき1,000円かかります。

なお、委託者と受益者が同一であった契約を別々にした場合には、受益者に対して贈与税などの税金が発生する可能性があります。

3-2.受益者代理人、信託監督人を専門家に依頼する場合の報酬

家族信託では、受託者が適切に財産管理を行っているかどうかを監督するための、「受益者代理人」と「信託監督人」を設置することができます。次に該当しない限り、家族はもちろん、弁護士などの専門家がなることもできます。

  • 未成年者
  • 成年被後見人
  • 被保佐人
  • 受託者

受益者代理人、信託監督人のいずれについても、信託契約に報酬を受ける旨の定めがある場合にのみ、報酬を請求することができます。

受益者代理人

毎月数万円程度

受益者代理人とは、受益者が持っている権利のすべてを行使することができる人です。

信託監督人

毎月数万円程度

信託監督人とは、受益者が持っている受託者に対する監督権限を行使することができる人です。
受益者代理人に比べて行使できる権利が限定的となります。

3-3.家族信託で発生する税金

この他にも、家族信託では、所得税や贈与税、相続税などの税金が発生します。

詳しくは、以下の記事をご一読ください。

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4. 家族信託の費用を抑える方法

ご紹介してまいりましたとおり、家族信託には最低でも数十万円の費用がかかります。
最後に、費用を節約する方法をご紹介いたします。

4-1.無料相談や分割払いの利用

専門家によっては初回の相談を無料にしていたり、電話相談を無料としているところもあります。
無料で相談したからといって、契約しなければならないわけではありません。
場合によっては無料の相談だけで解決することもあるかもしれません。気軽に利用してください。

また、分割での支払いに応じているところもあります。支払の負担にお悩みの方は、相談してみると良いかと思います。

4-2.公証役場で確定日付をもらい公正証書にしない

信託契約書を公正証書化せず、契約書に確定日付印を貰うのみにすると700円で済ませることができます。

確定日付を貰うだけであれば、公証役場との事前準備や打ち合わせは必要なく、契約書が作成されていれば即日貰うことができるため、専門家の代行も必要ありません。
公正証書化するための代行費用や公証役場への実費と比較すると、10~20万円程度の節約になります。

ただし、確定日付の日にその信託契約書が存在したことを証明することはできますが、公正証書ほどの強い証拠能力はない点、また契約書の再発行はできない点にご留意いただきながら、確定日付でのみで足りるのかどうかご検討されると良いかと思います。

4-3.手続きすべてを自分で行う

家族信託にかかる費用の大部分は専門家への報酬です。ここを節約すると費用負担は公正証書化と登記の実費のみになります。

ただし、すべての手続きを当事者のみで行うことはおすすめできません。

家族信託には綿密な計画と、法的な契約書、登記が必要となります。これらを専門知識のない方たちだけの判断で決行してしまうと、次のようなトラブルが発生してしまう可能性が高くなります。

  • 家族信託契約が無効になる可能性
  • 法務局で登記を受け付けてもらえない可能性
  • 家族間のトラブルになる可能性
  • 家族信託がベストな選択か、自分で考えた家族信託の仕組みがベストか客観的な判断ができない

確かに、ここまでご紹介した費用を合算すると、安いとは言い難いでしょう。

しかし、これらのトラブルを回避して将来に備えられるとしたら、家族信託の費用は決して高くはないのではないでしょうか。

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家族信託については、上記のような場合の他に、下記のように税理士・弁護士・司法書士を含めた総合的なアドバイスが必要になるケースが少なくありません。

  • 健康上の不安がある
  • 老後の財産管理・処分に不安がある
  • 財産に含まれる不動産の割合が多い
  • 共有不動産が相続トラブルの原因とならないか心配
  • 先妻の子がいる、結婚している子がいないなど財産の承継に不安がある
    など

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