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生命保険に相続税はかかる?相続税がかかるケースと計算方法

日本人の生命保険への加入率は男女ともに約80%と高く、多くの人が身近な人の死によって死亡保険金を受け取ることになります。

遺族の生活を守るためにもとても大切な死亡保険金ですが、「保険金を受け取ったら相続税はかかる?」、「生命保険は相続税対策に使えると聞いた。」、「非課税枠って何?」など、相続税と生命保険の関係に関する疑問をお持ちの方は多いと思います。

そこで今回は、相続税における生命保険の取り扱いについて、ケース別にわかりやすくご紹介してまいります。

1.相続税上、生命保険はみなし財産となる

1-1.遺産分割の対象とならない

相続財産は遺産分割協議を行い、誰がどの財産を取得するのかを決めなければなりませんが、死亡保険金はこの協議の対象にはなりません。

死亡保険金は、契約の時点で受取人が指定されているからです。

1-2.相続税法上、みなし相続財産として課税対象

相続税は、被相続人が死亡した時点で所有していた財産が課税対象となります。

死亡保険金は、被相続人死亡時点では所有していない財産ですので、民法上は相続財産に含まれません。

しかし相続税法上は、被相続人が死亡したことにより受取人の財産となるものであると考えられ、相続財産とみなして相続税の課税対象となります。このような財産を「みなし相続財産」といいます。

2.相続税における相続税の非課税枠

2-1.生命保険の相続税非課税枠

死亡保険金はその受取額の全額に相続税がかかるわけではなく、受取額から次の非課税枠を差し引いた残額が課税対象となります。受取額が非課税枠におさまる場合には、相続税はかかりません。

ただし、この非課税枠があるのは法定相続人のみです。法定相続人以外の人が死亡保険金を受け取った場合には非課税枠の適用はなく、受取額そのままに対して課税されます。

死亡保険金の非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数

なお、法定相続人について詳しくは以下の記事をご覧ください。

関連記事相続税の基礎控除とは?相続税の基本をわかりやすくご紹介

2-2.生命保険の非課税枠|計算例

では、実際にこの算式を使って非課枠と相続税の課税対象となる保険金の額を計算してみましょう。

【条件】

  • 死亡保険金:2,000万円(受取人:妻)
  • 相続人:妻、子2人

非課税枠
500万円 × 3人 = 1,500万円

相続税が課される死亡保険金の額
2,000万円 - 1,500万円 = 500万円

よって、相続税が課される死亡保険金は500万円となります。

3.生命保険に課税される税金

生命保険にかかる税金は相続税に限りません。その契約内容により相続税以外の税金がかかることもあるので、ケース別にご紹介します。

3-1.被保険者、保険料負担者、受取人が変われば課税される税金も変わる

生命保険契約には、被保険者(保険の対象となる人)、保険料負担者(保険料を支払う人)、受取人(保険金を受け取る人)があり、これらが誰になっているかによって、相続税、所得税、贈与税のいずれかがかかります。

課税関係を一覧にするとこのようになります。

被保険者 保険料負担者 受取人 課される税金
A A B 相続税
A B B 所得税
A B C 贈与税

国税庁ホームページから抜粋

相続税がかかるケース

まず相続税がかかるケースは、被保険者が自分自身に生命保険をかけて保険料を負担し、その保険金は自分以外の人に支給される場合です。
被保険者が自分のお金で支払ってきた保険料が、自分が死亡することで保険金という形で受取人に渡るので、相続であるということになります。

所得税がかかるケース

次に所得税がかかるケースは、保険料負担者が自分を受取人にしている場合です。
被保険者が死亡した時には、受取人自身のお金で支払ってきた保険料に対する保険金を、受取人自身が受け取っているので、儲けが出た場合には所得(利益)が出たということで一時所得となり、所得税がかかります。

贈与税がかかるケース

最後に贈与税がかかるケースは、被保険者、保険料負担者、受取人がすべて異なる場合です。
保険料負担者が支払ってきた保険料が、被保険者が死亡することで保険金として受取人へ渡るということは、保険料負担者のお金が受取人に渡された(=生前贈与)ということになりますので、贈与税がかかります。

これらの課税関係を判断するポイントは、誰が保険料を負担して、誰が保険金を受け取ったかという点です。

3-2.生命保険を年金として受領する場合

死亡保険金は一時金で受け取る場合がほとんどですが、保険商品によっては年金形式で受け取ることもできます。

この場合には、被保険者死亡時とその後の年金受け取り時に分けて税金がかかるようになり、被保険者死亡時には年金受給権(年金を受け取ることができる権利)に対して相続税または贈与税、年金受け取り時には所得税がかかります。

どの税金がかかるかは、3-1.と同様に、被保険者、保険料負担者、受取人が誰になっているかによります。

被保険者 保険料負担者 受取人 課される税金
年金受給時 死亡時
A A B 所得税 相続税
A B B
A B C 贈与税

保険料負担者と受取人が同じ場合では、死亡時に税金はかからず年金受給時に所得税がかかるのみです。一見お得なように思われるかもしれませんが、他2つのパターンでも相続税や贈与税が課された部分に対しては所得税が課されない仕組みになっています。

3-3.解約返戻金に課税される税金

加入している生命保険契約を解約すると、保険契約者に解約返戻金が支払われる場合があります。この解約返戻金は課税の対象となり、保険契約者と保険料負担者が同一なのか、異なるのかでかかる税金が変わります。

保険契約者=保険料負担者の場合は所得税

解約返戻金の額からこれまでに払い込んできた保険料の合計を差し引いた残額に対して所得税がかかります。払込保険料を超えた解約返戻金を受け取った場合には、その差額部分は利益になるからです。

保険契約者≠保険料負担者の場合は贈与税

解約返戻金全額に対して贈与税がかかります。
保険料負担者のお金が解約返戻金という形で保険契約者に移動しており、贈与があったことになるからです。

4.相続税上の生命保険のメリット

4-1.「500万円×法定相続人」の非課税枠がある

2.でご紹介した通り、死亡保険金には非課税枠がありますので、死亡保険金と同額を現金として相続した場合よりも、相続税を大きく節税することができます。

4-2.相続放棄をした相続人も死亡保険金は受け取れる

死亡保険金は被相続人の財産ではなく、受取人の固有の財産ですので、受取人として指定されている人が相続放棄をしている場合であっても、死亡保険金を受け取ることができます。

ただし、相続放棄をした場合には相続人とはみなされなくなり、非課税枠の適用を受けることはできません。

なお、非課税枠を計算する際の法定相続人の数には、相続放棄した相続人も含めます。

4-3.保険金が早期に受け取れる

人の死後には、葬儀費用や納税資金など何かとまとまったお金が必要になります。

これに対して死亡保険金は、受取人の保険請求手続き後1週間前後で指定口座に振り込まれますので、まとまった現金をすぐに調達することができます。

4-4.受取人固有の財産になるため争いが起きない

死亡保険金は、受取人として契約されている人の固有の財産であり、受取人の口座に確実に振り込まれます。
遺産分割協議の対象になりませんので、その死亡保険金を巡っての争いが起きることはありません。また、遺留分の対象にもなりませんので、受取人がその死亡保険金について遺留分減殺請求を受けることもありません。

遺言書がなくても死亡保険金を利用することで、被相続人が現金を渡したい人に確実に渡すことができます。

4-5.銀行に比べて利息が良い

今の日本は低金利時代が続いており、預金でお金を増やすことはできません。

参考までに、2019年10月時点におけるみずほ銀行の定期預金の金利は、年0.010%となっています。1,000万円預けていても、1年で1,000円しか増えないのです。

これに対して生命保険は、商品によっては返戻率が110%を超えるものもあり、銀行より高い利回りになっています。

5.生命保険で相続税対策

生命保険は、複数の保険会社がそれぞれ様々な商品を取り扱っているため選択肢が多く、相続の状況に応じてベストな商品を選ぶことができます。
そして不動産を用いた対策などよりも貯金感覚で行えるためハードルが低く、比較的誰でも加入することができるので、相続税対策として多くの人が利用しています。

それでは最後に、生命保険を使っての相続税対策とはどのように行うのか、どのような生命保険を使うと良いのか具体的にご紹介します。

5-1.貯蓄型終身保険

保険は主に定期保険と終身保険に分かれます。

定期保険とは、定められた期間内のみ死亡保障を受けられる保険です。

終身保険とは、契約から死亡するまで死亡保障を受けることができる保険であり、確実に死亡保険金を受け取ることができます。

また保険には、掛け捨て型と貯蓄型があります。
掛け捨て型は保険料が安いですが、名称通り掛け捨てです。
貯蓄型は保険料は掛け捨て型に比べて高くなりますが、何らかの事情で万が一解約することになっても貯蓄されてきた部分を解約返戻金として受け取ることができます

定期保険も更新手続きを行うことで、保障期間を更新して伸ばすことはできますが、加齢や病気をした場合などでは更新ができない場合がありますので、相続税対策として死亡保険金を目的としている場合には、死亡保険金が確実に受け取れ、途中解約しても解約返戻金がある貯蓄型の終身保険に入っておくと良いと思います。

5-2.一時所得の活用

相続税対策の1つに生前贈与がありますが、生命保険を組み合わせると更に有効な対策にすることができます。

まず、被保険者A、保険料負担者B、受取人Bの生命保険契約を結び、AはBへ毎年、保険料相当額を生前贈与します。そしてAが死亡すると、死亡保険金はBに支払われます。この死亡保険金は利回りによって、生前贈与で受けた現金を単純に貯蓄していた場合よりも増えた金額となります。

3-1.でご紹介した通り、保険料負担者=受取人である死亡保険金の受け取りには、払い込んだ保険料より増えた部分については一時所得として所得税がかかりますが、一時所得の計算は、そこから更に特別控除50万円が差し引かれます。

この一時所得を活用することで、贈与税の非課税枠110万円を利用しつつ、一時所得の特別控除50万円も利用して節税に繋げることができます
ただし、これはすべての相続に通じるものではなく、全額相続税で支払った方が良い場合、贈与税と相続税で支払った方が良い場合などケースによって様々です。
どのように金額を割り振るかは、税理士にご相談されてみてください。

5-3.解約返戻金を活用

被保険者A、保険料負担者B、受取人Cの生命保険で、Bが死亡した場合にBの相続税の対象となるいわゆる「生命保険契約に関する権利」は解約返戻金の額で評価します。

ただし、この生命保険契約に関する権利については、生命保険の非課税枠を使うことができません。 そしてその生命保険契約は相続され、その相続人がその後の保険料を支払うことになります。

契約初期の解約返戻金は低額であり、その後解約返戻金が上がる保険に加入することで、解約返戻金が低いうちに相続し、解約返戻金が上がるのを待って解約することで多額の現金を受け取ることができます。

この保険は、満期保険金がありませんが、初期の解約返戻金が低額であり、比較的早い段階で解約返戻金が高くなる傾向があり、納税対策として活用されることがあります。

5-4.受取人の選択は慎重に

相続税対策のために生命保険契約をする場合には、受取人を誰にするかは重要になります。

受取人は配偶者など相続人に

まず、これは死亡保険金の非課税枠を利用するために受取人は相続人にしましょう。相続人以外だと非課税枠は適用されず、死亡保険金の額にそのまま相続税がかかってしまいます。

そして次に、相続人の中でも配偶者よりも子を受取人とする方が相続税の節税になります。
なぜなら、配偶者には配偶者の税額軽減という大きな非課税枠があるため、死亡保険金の非課税枠を子に適用した方が相続税の総額は少なくなるからです。

孫を受取人に指定すると相続税が大きくなる

最も注意していただきたいのは孫です。相続税対策という視点から見ると、孫を受取人にすると次の理由から返って相続税が大きくなってしまいます。

  • 孫は相続人ではないため死亡保険金の非課税枠の適用がない
  • 相続税の2割加算の対象になる
  • 生前贈与加算の対象になる

相続税の2割加算とは、相続税は被相続人との関係性によって相続税が1.2倍になる場合があります。孫はそれに該当するのです。

生前贈与加算とは、相続開始前3年以内に行われた生前贈与については、相続税の計算に含めなければならない制度で、実質的にその生前贈与はなかったことにされてしまいます。

ただし、この制度が適用されるのは相続または遺贈によって財産を取得した人なので、本来であれば相続人ではない孫は対象ではありません。「生前贈与は孫へ。」と言われる所以です。

ところが、死亡保険金を孫が受け取ってしまうと相続または遺贈により財産を取得した人に該当してしまうため、生前贈与加算の対象になってしまうのです。

保険金の受取人の選択は慎重に行ってください。

6.生命保険で相続税対策をお考えの方はご相談を

生命保険は、被保険者、保険料負担者、受取人が誰であるかによってかかる税金が変わります。

また、生命保険は上手に利用すれば、相続争いの防止、資産運用、相続人の納税資金準備、さらには税金も大きく節税することができます。しかし、受取人の選択など難しいポイントがあることも確かです。相続税に詳しい税理士に相談することをおすすめいたします。

当事務所では、生命保険を使った相続税対策のご相談も承っています。お気軽にお問い合わせください。

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相続税申告に際しては、下記のように税理士・弁護士・司法書士を含めた総合的なアドバイスが必要になるケースが少なくありません。

  • 相続税の額を抑えたい
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  • 相続関連の手続きがよくわからない
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