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財務分析とは、会社の状況を様々な指標を利用してチェックする分析方法です。
私たちが定期的な健康診断や人間ドックを受け、不調や異常がないかをチェックするように、会社にも定期的な財務分析によるチェックが必要です。
財務分析は手作業で行うと大変ですが、ツールを利用すると簡単にできますので、財務分析に役立つおすすめツールを紹介します。
1.財務分析にはツールが便利
会社の財務分析で基となる重要な資料は決算書です。
決算書をもとに財務分析を行うことで、現在の財務状況を正確に把握し、問題点や今後の課題を見つけ解決していくことができます。
また、財務分析は今後の経営に関する意思決定を行う上で重要な要素となるものです。会社にとってベストな意思決定を行うためには、定期的な財務分析が欠かせません。
1-1.財務分析に利用される各指標
財務分析では「安全性」「収益性」「成長性」「効率性」など、様々な側面から分析を行います。財務分析は目的によって利用される指標が異なりますが、たとえば融資で見られる代表的な財務分析の指標は次の8つになります。
- 債務償還年数 ⇒借入金の返済能力を示す指標
- 自己資本比率 ⇒総資産の中に占める自己資本を示す指標
- 債務超過解消年数 ⇒債務超過の場合に何年で解消できるかを示す指標
- 短期借入カバー率 ⇒運転資金に対する短期借入金の割合を示す指標
- CF返済充当率 ⇒長期借入金の年間返済額の割合を示す指標
- 手元流動性比率 ⇒短期の支払い能力を分析する指標
- 売上総利益率 ⇒粗利が売上高に占める割合を示す指標
- 在庫回転日数 ⇒在庫が回転するサイクルを示す指標
1-2.財務分析ツールで簡単に分析できる
上記のような財務分析指標は、Excelなどの表計算ソフトを用いて分析することができます。しかし、Excelによる財務分析は自社でマニュアル化する必要があるため、数式やマクロを作った人しか理解できないシステム(属人化)になってしまうおそれがあります。「担当者が変わったため財務分析ができなくなった」といった状況になると経営に悪影響を与えてしまいます。
Excelで独自の財務分析を行わなくても、最近では、誰でも扱える便利な財務分析ツールが多くリリースされています。財務分析ツールを利用することで、簡単に自社の財務分析を行うことができます。
2.無料で使える財務分析ツール4選
様々な財務分析ツールの中には「無料」で手軽に利用できるツールもあります。厳選して無料の財務分析ツール4つをご紹介します。
2-1.日本政策金融公庫「財務診断サービス」
中小企業向けに融資を行っている政府系金融機関「日本政策金融公庫」が無料で財務診断サービスを提供しています。
会社の業種、決算書の数字を入力するだけで「収益性」「生産性」「安全性」の3つの側面から9つの指標を示してくれます。日本政策金融公庫の融資先(従業員が50人未満の法人)を対象として集計した「小企業の経営指標」と自社の指標を比較することができるため、自社が平均よりも優れている部分、劣っている部分を把握することができます。
【引用】日本政策金融公庫:財務診断サービス
https://www.jfc.go.jp/n/zaimushindan/index.html
多くの中小企業に融資を行っている日本政策金融公庫が提供しているツールであるため、融資審査の対策として利用することもできます。会社名など、会社を特定できる情報を入力する必要がなく、ソフトのダウンロードも必要ありません。ブラウザ上で手軽に利用できる財務診断サービスになっています。
2-2.J-Net21「経営自己診断システム」
経済産業省が所管する中小企業基盤整備機構が運営する「J-Net21」が「経営自己診断システム」を提供しています。
【参照】経営自己診断システム
経営自己診断システムは、決算書の中から自社の強みや課題を確認するために作成された財務分析サポートツールです。経済産業省・中小企業庁の主導により開発されたツールであり、中小企業信用リスク情報データベース(CRD)に登録されている200万社以上のデータを用いて構築されています。
「収益性」「効率性」「生産性」「安全性」「成長性」の5つの指標を分析することができ、同業他社の財務データと比較することができます。特に安全性の指標をデフォルト企業と比較することで倒産リスクを回避することが可能です。
【引用】経営自己診断システム:結果の見方
https://k-sindan.smrj.go.jp/viewpoint
各指標について「中央値を上回っているかどうか」「注意が必要な指標はどれか」などを示してくれる仕組みになっており、分析データの用語解説もあるため、専門知識がなくても手軽に財務分析ができる登録不要の財務分析ツールです。
2-3.経済産業省「ローカルベンチマーク」
通称「ロカベン」と呼ばれる経済産業省が提供している財務分析ツールです。
ロカベンでは、ローカルベンチマークシートを利用し「売上増加率」「営業利益率」「労働生産性」「EBITDA有利子負債倍率」「営業運転資本回転期間」「自己資本比率」の6つの財務指標を把握します。
次に、非財務情報として4つの視点(①経営者、②事業、③企業を取り巻く環境・関係者、④内部管理体制)の情報、業務フロー・商流の情報を入力することでロカベンが完成します。
【引用】経済産業省:ローカルベンチマーク(ロカベン)シート
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/sheet.html
ロカベンは、これまで気付かなかった自社の強みや改善点などを発見することで継続的な経営改善を目的として作成されたツールになっており、融資の際には経営者と金融機関がロカベンを活用し、対話することで金融機関に会社のことをよく知ってもらうことができます。
手軽に利用できる財務分析サービスという位置付けではなく、しっかりと何回も分析することが求められる財務分析ツールになっており、Excelデータが無料で配布されています。経済産業省が力を入れている財務分析ツールであるため、今後、様々な場面での活用が考えられます。
2-4.上原会計事務所「会社の健康診断(財務診断)」
当事務所においても財務分析サービス「会社の健康診断(財務診断)」を提供しています。
会社の「今」の健康状態(財務状態)を診断し、問題点や改善点がないかチェックするサービスです。
定期的に会社の健康診断を受けることで、今後、財務状況に問題になりそうな兆候が現れたら、すぐに対策を行い、会社のリスクを回避することが可能です。
具体的には、直近の決算書の内容を基に財務診断を行い、下記の項目を網羅した企業財務診断報告書を作成します。
- 財務格付判定
- 借換による資金繰り改善シミュレーション
- 格付アップに向けた「8つの重要指標」
- 貴社の財務改善重要実施事項
- 当事務所が提供するコンサルティングメニュー表
- 借入金一覧表
- 業界中央値比較表
特に「財務格付判定」では、会社が金融機関からどうランク付けされているか把握することができます。この格付判定を基に、金融機関からの適切な借入金額や返済額を把握し、資金繰り改善シミュレーションを行います。また、財務改善に向けた重要な実施事項をご提案します。
初回の診断は無料にて行っています。
3.財務分析は分析後の改善が大切!
会社にとって財務分析は、会社の現在の財務状況を正確に知るために重要です。財務分析データを数字として解釈するだけではなく、その指標が示すストーリーを読み解きながら「どうやって会社の強みを活かしていくのか」「どうやって弱点を克服していくのか」など、経営戦略を立てていくことが大切です。
財務分析を行っただけで満足してしまい、行動に移さなければ財務分析の意味がありません。健康診断で異常が見つかったら、病院に通院して病気を治すように、財務分析で課題や問題が見つかったら、正常に戻す対策を行わなければなりません。
財務分析は分析後の改善が大切です。まずは、便利な財務分析ツールを利用し、その結果に基づいて適切な改善を行うことで会社の健全な状態を維持し、さらなる成長を見込むことができます。財務分析は、健全な会社であるために必要不可欠です。分析データを用いた効率的な改善で会社の健康を維持していきましょう。