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資金繰りは会社経営で最も大切な内容の一つですが、なかなかうまくいかない現状があるかもしれません。
資金繰りが悪化してしまう要因と、対策のコツを紹介します。
1.資金繰りとは
資金繰りとは、簡単に言えば「会社の資金のやりくり」のことです。会社を経営していくうえで必要な収入と支出を適切に把握、管理を行い、収支が過不足にならないように調整することを言います。
売掛金を回収して現預金が増加し、仕入や経費の支払い、借入金の返済で現預金が減少する、この一連の流れを管理することが資金繰りです。資金に該当するものは基本的には現金預金だけですが、すぐに現金化できるコマーシャル・ペーパーなどがあれば含めることができます。
会社を経営するうえでの資金繰りは非常に重要です。資金繰りが滞ってしまうと、帳簿上では黒字経営であっても、資金不足で倒産してしまう「黒字倒産」に陥ってしまうこともあります。黒字倒産を回避するためにも資金繰りの改善は必要不可欠です。
2.資金繰りが悪化する原因
赤字が続いていると当然、資金繰りが悪化しますが、黒字であっても資金繰りが悪化する場合があります。資金繰りが悪化する原因は次のとおりです。
2-1.回収サイトが長い
回収サイトとは「売上が発生して売掛金が入金されるまでの期間」のことを言います。例えば、回収サイトが60日であれば、売上が発生して60日後に資金を回収できることになります。
回収サイトは、営む業種によって異なりますが、回収サイトが長くなると、その間に発生する費用の支払いや買掛金の支払いが難しくなってきます。特に、回収サイトが買掛金の支払いサイトを上回ると、資金繰りが悪化し、融資を受けるなどの手立てが必要になってしまいます。
2-2.事業の急拡大
事業を拡大し、売上が増加することは経営にとって望ましいことですが、資金繰りが悪化する可能性があるため注意が必要です。
「回収サイトが長い」と重なる部分がありますが、仕入代金の支払いや人件費の支払は当月末払い、売上に伴う売掛金の入金は翌々月払いといった会社の場合、売上の増加で大きな利益が計上されますが、売掛金が入金される前に増加した仕入や人件費などの支払いが先にきてしまい、資金が不足してしまうことがあります。
2-3.物価が高騰し、想定以上のコストが発生した場合
近年の社会情勢による物価上昇により、会社のコストも増加しています。製造業や飲食業などでは、日々価格が変動する原材料価格が高騰すると、会社の資金繰り悪化に繋がります。価格の高騰を売上価格に転嫁することができれば資金繰り悪化を防ぐことができますが、価格転嫁できなければ資金繰り悪化を止めることができません。
2-4.損益と収支を混同している
損益と収支は同じような言葉ですが、全く違う概念の言葉です。損益は、発生した売上から経費を差し引いたもので資金の動きには関係ありません。一方、収支は収入から支出を差し引いたものであり、資金の残高を示しています。
損益は「損益計算書」、収支は「資金繰り表」で管理を行いますが、経営者が損益と収支を混同している場合は危険です。損益計算書では利益が出ていても、売上代金が入金されておらず、資金ショートする可能性もあります。損益と収支をしっかりと区別して、管理することが重要です。
3.資金繰り改善の対策方法10選
資金繰りが悪化してきている場合には、次の改善方法を検討してみましょう。
3-1.資金繰り表の作成
資金繰りを管理、改善するためには、会社の一定期間のお金の出入りを管理する「資金繰り表」を作成し、見える化に取り組みましょう。お金の流れを可視化することで、現状の把握、改善点の検討を行うことができます。
また、資金繰り表は金融機関から融資を受ける際の資料としても活用することができるため、資金繰りの改善の第一歩として、まずは資金繰り表の作成から始めましょう。
3-2.回収サイトと支払いサイトの見直し
資金繰り改善において「回収は早く、支払いは遅く」が鉄則です。売掛金の回収が早くできると、資金を経費の支払いに充てることができるため、資金繰りが楽になります。売掛金の回収サイトをいきなり短縮することは取引先との関係悪化に繋がりかねないため難しいですが、少なくとも期限内の回収を徹底しましょう。取引先契約を行う前に与信管理を行っておくと、安全に掛け取引を行えます。
会社を経営すると、どうしても売上をあげることだけにこだわってしまいますが、回収にもこだわりましょう。
買掛金の支払いサイトについては、支払いサイトを長くすることで資金繰りが楽になります。しかし、支払期日を無視してしまうと信用をなくしてしまいますので、まずは支払条件の変更を「交渉」してみましょう。
3-3.削減してもいい経費を検討する
経費を削減すれば、資金繰りは楽になります。しかし、何でも経費を削減すればいいわけではありません。広告費や販売促進費などの売上に直結する経費や商品の品質に関する経費などを削減してしまうと、売上が減少し、さらに資金繰りが悪化してしまう可能性があります。
経費を削減する場合は、削減理由が明確にできるものを優先的に削減しましょう。特に、売上が減少して資金繰りが悪化している場合は、売上に連動しない固定費の削減が効果的です。削減できる固定費には、水道光熱費、通信費、保険料、サブスクリプションサービスなどが挙げられます。
3-4.過剰在庫を適正在庫に
必要以上に在庫を抱えてしまい、売れない状況になってしまうと売掛金が生まれず、在庫を購入した費用だけが発生している状態となり、資金繰りが悪化します。さらに、長期間倉庫のスペースを圧迫し、保管費用や維持費も発生してしまいます。もし、廃棄になると処分費用もかかってしまいます。
過剰在庫を適正在庫にするためには、自社の在庫の可視化を行い、需要予測の精度を高める必要があります。製造業の場合は、生産ラインも合わせて調整しましょう。
3-5.不要な固定資産を処分する
必要のない固定資産がある場合には、売却処分を検討しましょう。特に、使っていない設備など、管理維持に人手や費用がかかるものを優先的に処分し、コストカットを行いましょう。
3-6.法人税の中間申告で資金繰りを行う
法人税には、前年度の確定法人税額が20万円を超えると、翌年度に「予定申告」として前年度の法人税の半分を納めなければなりません。前期は黒字だったが、今期の利益が見込めない場合は、仮決算を行い、今期の業績をもとに中間申告を行うことができます。業績の悪化で資金繰りが厳しい場合には検討しましょう。
3-7.前払金・貸付金・仮払金を減らす
会社の帳簿に前払金・貸付金・仮払金がある場合には、早急に回収して資金繰りの改善を図りましょう。これらの科目は一時的に発生することはありますが、基本的には1~2ヶ月で解消すべき項目です。長期的に残高がある状態が続くと、金融機関の融資審査にも影響することになるため、早めに解消しましょう。
3-8.借入金の金利、リスケを交渉する
資金繰りが厳しい場合は、融資を受けている金融機関に交渉し、金利や返済条件の変更(リスケ)を交渉してみましょう。交渉を行わずに融資の返済が滞ると不良債権扱いになり、法的措置が取られ、倒産せざるを得ない状況になってしまいます。資金繰りを立て直すためにも、まずは交渉してみましょう。
3-9.資金調達を検討する
「今すぐ資金繰りを改善したい」という場合は、資金調達方法を考えましょう。資金調達の方法には、金融機関からの融資、売上債権を利用したファクタリング、クラウドファンディングなどが考えられます。返済が必要になる場合は、無理のない範囲で資金調達を行いましょう。役員個人に資金力がある場合は、役員が会社に資金を貸し付ける方法もあります。
3-10.資金繰り支援を受ける
資金繰りが厳しい場合には、政府の資金繰り支援を検討してみましょう。政府の支援には、売上改善するための「小規模事業者持続化補助金」、生産プロセス改善のための「ものづくり補助金」、ITツールを導入して業務の効率化を図る「IT導入補助金」などがあります。
当事務所では、資金繰りに関するアドバイスを様々な企業に対して行っております。資金繰り計画の作成のサポートも可能です。
資金繰りにお困りの場合は、お気軽にご相談ください。