目次
遺言書を見つけた場合、勝手に開封してはいけません。まず、家庭裁判所で検認という手続きが必要になります。
今回は遺言書の「検認」について、具体的な手続きも含めてご紹介してまいります。
1.遺言書の検認とは
最初に、検認とはどのような手続きで、何のために行うのでしょうか。
1-1.遺言書の検認とは
検認とは、家庭裁判所へ遺言書を持っていき、その状態や内容を明確にして偽造や変造を防ぐ手続きです。
検認での内容確認は、用紙、日付、筆跡、訂正箇所の署名や捺印の状況などで、遺言書の有効性の判断ではありません。検認を受けたからといって遺言書の有効性が保障されたわけではありません。
1-2.検認が必要な遺言書
遺言書には自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言がありますが(特別方式遺言は除く)、検認が必要な遺言書は自筆証書遺言、秘密証書遺言です。
一方で、公正証書遺言は、公証人役場で証人2人の立ち会いのもと、遺言者が公証人へ遺言の内容を伝え、公証人が作成する遺言書です。遺言書はそのまま公証人が保管しますので偽造や変造の心配がなく、検認は不要となっています。
また、民法の改正により、2020年7月10日から自筆証書遺言を法務局で保管してもらうことができるようになりました。この保管制度を利用した場合には、自筆証書遺言であっても検認は不要になります。
2. 遺言書の検認手続きの流れ
遺言書を発見してからの流れを具体的にご紹介させていただきます。
2-1.家庭裁判所へ申立て
申立先
遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立てを行います。
申立人
- 遺言書の保管者
- 遺言書を発見した相続人
必要書類
以下は、基本的に必要になる書類です。相続人によっては別途必要になる書類がありますので、家庭裁判所の指示に従われてください。
- 遺言書
- 申立書(様式は下記リンク先より入手することができます。)
- 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本(除籍謄本)
- 相続人全員の戸籍謄本
【参考サイト】裁判所|遺言書の検認
費用
- 遺言書1通につき収入印紙800円分
- 連絡用の郵便切手(家庭裁判所によって異なりますので、申立先へ直接ご確認ください。)
2-2.検認期日の連絡
検認は申し立てたその日には行われません。一般的には申立後、数週間から1ヶ月程度で申立人に検認日を調整するための電話連絡があります。
その後、家庭裁判所から相続人全員に「検認期日通知書」と「出欠回答書」が送付されます。
申立人は検認手続きに必ず出席しなければなりませんが、他の人は任意になります。全員出席していなくても手続きは問題なく行われますし、出席しなかったことでの不利益は特にありません。
2-3.検認期日
検認期日になりましたら、遺言書と申立書に捺印した印鑑、その他裁判所から指示されたものがあれば持参します。
出席した相続人と裁判所職員の立会いのもと遺言書が開封され、日付、署名、押印、内容などが確認され、検認調書が作成されます。
検認が終了しましたら、すぐに検認済証明の申請を行い、検認済証明書が貼り付けられた遺言書原本を返却してもらいます。これでようやく不動産の名義変更などの相続の手続きに進むことができます。
欠席した相続人に対しては後日、検認が終了した旨の通知が送付されます。
3. 遺言書の検認についてのポイント
最後に、検認について押さえておいていただきたいポイントをご紹介したいと思います。
3-1.検認まで遺言書は開封してはならない
検認を受ける遺言書は、検認期日に初めて開封されますので、中身が気になるお気持ちは重々理解できますが、決して開封しないようにしてください。
万が一、開封してしまった場合には5万円以下の過料に処せられます。また何より、開封してしまったことで遺言書の偽造や変造を疑われる可能性があり、相続争いの原因になってしまうことが1番の問題点かと思います。
ただし、開封してしまった遺言書であっても検認は可能ですし、遺言書が無効になることもありません。
3-2.検認しなくても罰則がある
家庭裁判所で検認をせずに遺言書の内容に沿って手続きを進めしまった場合にも、開封してしまった場合と同様の罰則があり、5万円以下の過料に処せられますので注意してください。
3-3.遺言書の検認は遺言書の効力を左右しない
検認手続きの目的は、「遺言書が確かに存在していることの周知」と「形式的な確認」、そして「証拠の保全」です。
検認の場で遺言書の効力について異議を主張したとしましても、裁判所がそれについて判断することはありません。
遺言書の効力について争いたい場合には、裁判を起こすことになります。検認と遺言書の効力とは全く別物であるとお考え下さい。
3-4.検認終了までの期間に注意
預貯金や不動産の名義変更手続きなどには、検認済証明書が付いた遺言書が必要になりますので、検認終了まで相続手続きを進めることができません。
検認手続きは、申し立てから終了まで最短でも1ヶ月程度かかりますので、相続税申告など期限のある相続手続きがある場合には間に合わない可能性もあります。
早め早めの対応をおすすめいたします。
【関連記事】相続税申告はいつまでにしなければならない?申告期限について徹底解説
3-5.立ち会えなかった相続人は検認調書の閲覧が可能
検認に出席しなかった、またはできなかった相続人で検認調書を閲覧したい場合には、家庭裁判所で検認調書を申請すれば確認することができます。
3-6.検認は専門家に依頼できる
検認手続きはご紹介してまいりました通り、複雑な手続きではありませんが、弁護士や司法書士などの専門家に代行を依頼することもできます。
既に相続争いになっているため相続人間でのやり取りが難しい場合や、検認後の相続手続きまで一括して依頼されますと、相続にかかる負担がかなり軽減されるのではないかと思います。
まとめ
公正証書遺言と法務局での保管制度を利用した自筆証書遺言以外の遺言書は、開封せずに家庭裁判所で検認を受けなければなりません。
検認が終わらなければできない相続手続きも多くありますので、計画的な行動が重要になります。ご自身での手続きに不安を感じられましたら、専門家へ相談されると良いかと思います。