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相続税と贈与税|節税対策の上手な方法

相続税について気になっている方なら、生前贈与が相続税対策になることをお聞きなったことがあると思います。

実際のところ相続税と贈与税は、どちらを払った方が有利になるのでしょうか?

分かりやすく比較しながらご紹介いたします。

1.相続税と贈与税の違い

1-1.相続と生前贈与との違い

相続と生前贈与は、無償で行う財産の譲渡という点では共通しています。

一方、両者の大きな違いは、財産を譲渡する人が生存しているか、死亡しているかです。

相続と生前贈与の違いを簡単にまとめると以下の通りです。

生前贈与 相続
方法 贈与者・受贈者の意思表示による契約 法律により相続人に移転
財産承継のタイミング 贈与者の生存中 被相続人の相続開始後
財産を受け取る人 贈与契約を締結した受贈者 法定相続人
課される税金 贈与税 相続税
課税対象 年間110万円を超える贈与財産 基礎控除額を超える相続財産
課税される人 受贈者 相続人・受遺者・死因贈与の受贈者
納税時期 贈与があった翌年の2/1~3/15 相続開始を知った日の翌日から10カ月以内

相続税は死亡した人の遺産の相続があった時に相続人などに対して課され、贈与税は贈与者の生存中に財産を譲渡した時に、財産を貰った受贈者に対して課されます。

1-2.税率は贈与税のほうが高い

相続税対策として生前贈与が多く活用されていますが、実は次の通り、相続税よりも贈与税の方が税率は高く設定されています。

単純に、同額の相続と贈与があった場合には、贈与税の方が高くなります。

相続税

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

【出典サイト】No.4155 相続税の税率|国税庁

贈与税

贈与税は、贈与された財産が「特例贈与財産」に該当するか、「一般贈与財産」に該当するかで税率が異なります。

「特例贈与財産」とは祖父母や父母などの直系尊属から18歳以上の子や孫へ贈与された財産を差し、「一般贈与財産」とはそれ以外の贈与財産を差します。

一般贈与財産用

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

特例贈与財産用

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,00万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

【出典サイト】No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|相続税 |国税庁

1-3.相続税と贈与税の基礎控除

相続税にも贈与税にも次の基礎控除があり、遺産総額や贈与額が基礎控除額以下であれば非課税となります。

相続税の基礎控除額 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
贈与税の基礎控除額 年間110万円まで

したがって、10年間毎年110万円の贈与を行えば、合計で1,100万円の贈与を非課税で行うことができます。もっとも、税務署に毎年一定の金額を贈与することが契約当初から決まっている「定期贈与」とみなされてしまうと、総額である1,100万円に贈与税が課されてしまうので気を付けなければなりません。

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1-4.生前贈与は「生前贈与加算」しなければならない

相続税の算出時には、相続開始前(死亡日前)一定期間内に被相続人から受けた生前贈与を、相続財産に加算しなければならない生前贈与加算」があります。

生前贈与加算は、被相続人の死亡が近くなったからと、相続税を逃れるために急いで贈与を行う租税回避を防止するために設けられている制度です。

2023年度の税制改正で「被相続人の相続開始前一定期間」が3年から7年に延長されました。ただし、徐々に延長されていくため、7年すべての贈与が相続財産に加算されるのは、2031年1月1日の相続からで、さらに延長された4年分については総額100万円まで相続財産に加算されません。

なお、相続時に、生前贈与を相続財産に加算をしなければならないのは、最初の贈与税の申告時に「相続時精算課税制度」を選択しなかった場合です。

2022年12月16日、2023年度(令和5年度)税制改正大綱が発表され、生前贈与加算が3年から7年に延長されること…[続きを読む]
「相続時精算課税制度」とは、生前贈与の方法の1つで、2,500万円まで贈与税が非課税となる制度です。 2,500万円…[続きを読む]

2.生前贈与と相続を使ったシミュレーション

それでは、実際に生前贈与をしなかった場合の相続税額と生前贈与した場合の贈与税と相続税の合計をシミュレーションしてみましょう。

2-1.遺産すべてを相続した場合の相続税額

まず、以下の事例で、最初に相続税の総額を算出してみます。

事例

法定相続人:子供2人
遺産総額:現金2億円

相続税は、各相続人が法定相続分により課税遺産総額を取得したと仮定して相続税の税率を乗じて仮の相続税額を計算し、足し合わせて相続税の総額を算出するため、この場合、相続税率は30%、控除額は700万円です。

  • 課税遺産総額:2億円 - 基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 2人)=1億5,800万円
  • 課税遺産総額に法定相続分を乗じた額:1億5,800万円×法定相続分1/2=7,900万円
  • 子供1人当たりの仮の相続税額:7,900万円×30%―700万円=1,670万円
  • 相続税の総額:1,670万円+1,670万円=3,340万円

子供2人に課税される相続税の総額は、3,340万円です。

2-2.子供2人に1,000万円ずつ生前贈与し残りを相続した場合の税額

次に、子供2人に1,000万円ずつ生前贈与した場合の贈与税と相続税の合計額を算出してみます。

贈与税の総額

  • {(1,000万円―基礎控除110万円)×30%−90万円}×子供2人=354万円

相続税の総額

  • 課税遺産総額:(2億円―生前贈与2.000万円)―基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人2人)=1億3,800万円
  • 課税遺産総額に法定相続分を乗じた額:1億3,800万円×法定相続分1/2=6,900万円
  • 子供1人当たりの仮の相続税額:6,900万円×30%―700万円=1,370万円
  • 相続税の総額:1,370万円+1,370万円=2,740万円

贈与税総額354万円+相続税総額2,740万円=3,094万円

1,000万円を子供2人に生前贈与すると3,094万円となり、生前贈与しないケースより、246万円節税できることになります。

仮に、子供が3人おり、1,000万円ずつ生前贈与すれば、贈与税の総額は531万円となり、相続税の基礎控除の額は4,800万円に広がるため、相続税の総額は1,840万円となり、969万円も節税が可能です。

仮に贈与税がかかったとしても、生前贈与を組合せることで、相続税を抑えることが可能です。

ここでは、生前贈与の額を1,000万円としましたが、これをさらに小分けにして贈与税の基礎控除を有効活用することで、贈与税の額を抑えることもできます。実際に税理士に節税を相談すると、細かいシミュレーションをいくつか行って資産状況や家族構成などによって最適な節税プランを教えてくれるでしょう。

3.相続税対策を効果的にするために

相続は財産を一括で承継しますが、相続税対策とし行う生前贈与は、財産を何年かに小分けにして渡すのが一般的です。したがって、全財産に対してかかる税率と、一部の財産に対してかかる税率とを比較しても意味がありません。

相続税と贈与税は、総財産額、財産の内容、財産の受取人によってどちらが有利になるのか違ってきます。一概にどちらが有利と言い切ることはできません。

節税のために必要なのは、この2つを上手に組合せることです。

3-1.相続財産が基礎控除額以下なら相続税対策は不要

相続税には基礎控除があるため、財産総額が基礎控除額以下であれば、そもそも相続税はかからないため、相続税対策は不要です。

3-2.相続税・贈与税の特例・控除の利用でさらなる節税効果

贈与税や相続税の特例や控除を上手に適用することが、効果的な節税に繋がります。相続でしか使えない特例、贈与でしか使えない特例を上手に使い分けることでより大きな節税効果が期待できます。

贈与税の主な特例・控除

特例・控除の名称 内容
住宅取得資金の贈与 親や祖父母から子や孫に対して、住宅を取得するための資金を一度に贈与すると、省エネ・耐震・バリアフリー住宅は1,000万円まで、それ以外の住宅は500万円まで非課税。
教育資金の一括贈与 30歳に満たない子や孫に対して直系尊属(祖父母や父母など)が教育資金を一括贈与する場合、累計1,500万円までは非課税。
結婚・子育て資金の一括贈与 18歳以上50歳未満の子や孫に対する結婚や子育てにかかる資金の贈与について、受贈者ごとに1,000万円(うち、結婚資金は300万円)まで非課税。

これらの特例・控除については、期間制限や、満たさなければならない適用要件があるため、詳しくは、相続や贈与に強い税理士にお問い合わせください。

相続税の主な特例・控除

特例・控除の名称 内容
配偶者の税額軽減 被相続人の配偶者の相続には、配偶者の法定相続分または1億6,000万円のいずれか高いほうまで非課税。
小規模宅地等の特例 被相続人が住んでいた自宅の敷地や事業用の敷地などの評価額を、最大で8割減できる。
生命保険の非課税枠 被相続人の死亡により受け取った保険金は「500万円×法定相続人の数」まで非課税。

3-3.二次相続まで見据えた相続税対策

前項で触れた通り、相続税には一般に相続税の「配偶者控除」として知られる配偶者の税額軽減があり、被相続人の配偶者には、配偶者の法定相続分か1億6,000万円のいずれか高いほうまで相続税が非課税になる控除があります。

しかし、一次相続でこの「配偶者控除」を上限まで使おうと、遺産分割で配偶者が集中して遺産を取得すると、二次相続では法定相続人が減り基礎控除額が減るうえに、配偶者控除が使えずに、一次相続と二次相続の相続税の合計額が却って増えてしまうことがあります。

相続税対策は、二次相続まで見据えて行う必要があるのです。

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4.相続税節税のシミュレーションは当事務所へご相談を

相続税と贈与税は、どちらを使えば有利になるのかということではなく、どのような配分で行えば有利となるのかがポイントになります。

相続税と贈与税の合計が低くなる組合せを探すには、相続税に強い税理士にシミュレーションをしてもらうのが有効です。

当事務所では、相続税節税のためのシミュレーションを積極的行っています。相続税を節税したい方は、ぜひご相談ください。

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