事業承継税制の要件やメリット・デメリットをわかりやすく解説
会社を次の後継者へ引き継がせる「事業承継」には、予想以上にお金がかかります。特に事業を引き継ぐ後継者には、株式が移転…[続きを読む]
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目次
企業の世代交代である「事業承継」は、企業の存続や発展を高めるために非常に重要です。
特に中小企業では、経営者の高齢化や、少子化による後継者不足が大きな問題になっています。企業が後継者問題を解決できずに廃業を選択することになれば、その企業で働いている従業員は職を失ってしまうことになるため、事業承継に向けて早めの準備が必要です。
従来、日本では経営者の親族に事業承継を行う「親族内承継」が一般的でしたが、近年では親族以外に事業承継を行うケースも増加しています。ここでは「事業承継のパターンと、それぞれのメリット・デメリット」について詳しく解説します。
企業の事業承継のパターンは主に3つの方法に分類されます。それぞれの特徴を見てみましょう。
親族内承継は、その名の通り経営者の子どもや兄弟などの親族が事業を継承する方法です。
事業承継の方法として最も一般的な方法であり、事業承継のおよそ3分の1が親族内承継になっています。一方で、近年では親族内承継の割合は減少傾向になってきており、親族以外の承継へシフトしています。
親族内承継の割合
年 | 親族内承継が経営者の就任経緯に占める割合 |
---|---|
2018年 | 39.6% |
2019年 | 39.1% |
2020年 | 39.3% |
2021年 | 38.7% |
2022年 | 34.0% |
【出典】「近年事業承継をした経営者の就任経緯」|中小企業庁
親族外承継は、血縁関係のない人へ事業を引き継がせる方法で、社内の人に引き継がせる方法と、社外の人に引き継がせる方法に区分されます。一般的に社内の人に承継させる方法を「社内承継」と言い、社外の人に承継させる方法を「外部招へい」と言います。
親族外承継には、後継者に経営のみを承継させ、株式の承継は行わない方法(内部昇格・外部招へい)と後継者に株式を譲渡する「MBO・EBO(Manegment Buy Out・Employee Buy Out)」という方法があり、近年では、自社内の役員や従業員へ事業承継するケースが増加して、2022年には親族内承継と同じ割合になっています。
従業員承継の割合
年 | 従業員承継が経営者の就任経緯に占める割合 |
---|---|
2018年 | 31.6% |
2019年 | 31.7% |
2020年 | 31.9% |
2021年 | 31.4% |
2022年 | 33.9% |
【出典】「近年事業承継をした経営者の就任経緯」|中小企業庁
M&Aは、株式譲渡や事業譲渡などにより社外の第三者へ事業承継を行う方法です。もともとは大企業で活用されていたものでしたが、中小企業でも親族内承継や親族外承継により事業承継ができない場合などに活用されることが多くなってきています。
一口にM&Aと言っても、合併、株式交換、会社分割、事業譲渡など、様々な方法がありますが、基本的には買収された企業はそのまま存続し、事業も継続されるため、廃業を避け、従業員を守る方法として有効です。
社外への引継ぎの割合
年 | 社外への引継ぎが経営者の就任経緯に占める割合 |
---|---|
2018年 | 24.2% |
2019年 | 25.1% |
2020年 | 24.8% |
2021年 | 25.9% |
2022年 | 27.8% |
【出典】「近年事業承継をした経営者の就任経緯」|中小企業庁
親族内承継は、昔から一般的に行われてきた事業承継方法であるため、従業員や取引先の理解や協力を得やすいというメリットがあります。
承継前から事業に関わっている親族が次の経営者になるのであれば、既に従業員や取引先との関係性を維持できるため、スムーズな事業承継が可能になります。
親族内承継であれば、早めに後継者候補を決めることができるため、事業承継までの時間を十分に確保することができます。
後継者に様々な部署での経験や他社での経験を積ませることで、次の経営者としての能力を身につけることができ、企業の発展に繋がります。
事業承継の課題の1つに、「株式の移転」をする際に、後継者に多額の資金が必要になる点を挙げることができます。
しかし、親族内承継であれば、経営者が保有する株式を相続によって移転することが可能です。要件を満たすことで税制優遇措置を利用することができ、発生する相続税を抑えて株式を移転することができます。
親族内に後継者の資質を持った人がいるとは限りません。もし、後継者の資質を持った人がいたとしても、本人に後継者になる意思がない場合も考えられます。また、後継者にそぐわない方が経営者になると社内からの反感や取引先へ悪影響がでるリスクがあります。
親族内に後継者候補が複数人いる場合には、誰が後継者になるのかで後継者争いになってしまうおそれがあります。
後継者が決まっていても、相続が発生すると遺留分の問題が発生し、株式を相続しない相続人が株式を相続した後継者へ遺留分侵害額請求を起こすリスクも考えられます。
親族外承継では、経営者としての能力や意欲、適性によって後継者を選択することができるため、親族内承継よりも後継者の選択肢が広いというメリットがあります。
後継者が経営権を持つためには現経営者から株式を買い取らなければなりません。買い取りには多額の資金が必要になるケースが多く、後継者にまとまった資金が必要になります。
現経営者の親族が株式を保有していると、株式を売却したくない親族株主とトラブルになる可能性があります。
親族内にも社内にも適正な後継者がいない場合、廃業を選択せざるを得ない状況になってしまうことになります。M&Aを選択し、後継者を外部に求めることで後継者不在による廃業を回避することが可能です。
M&Aにより買収を行う企業のノウハウや資金力を活用し、シナジー効果により企業のさらなる発展を期待することができます。
後継者になってくれるM&Aの相手先を自力で探すことは難しく、候補先が見つかったとしても従業員の雇用継続や株式価格の交渉に多くの時間と労力がかかります。M&Aのマッチングや交渉には、専門家の協力が必要になるでしょう。
M&Aの買収企業によっては、これまでの企業風土や経営方針を大きく変わる可能性もあります。
M&Aによって経営陣が変わり、従業員のモチベーション低下や離職に繋がるケースが考えられるため、M&Aによる事業承継を行う場合には前もって従業員や取引先への丁寧な説明が必要になるでしょう。
事業承継には主に3つの方法があり、それぞれメリット・デメリットは様々です。
どの方法においても、次のポイントが重要になってきますので、事業承継を検討する際には意識しておきましょう。
円滑な事業承継を実現するためには、早めに計画をたて後継者を育成することが重要です。
親族内に後継者候補がいる場合、社内に後継者候補になる人がいる場合、どちらにしても事業承継を行う時期を決定し、早めに後継者の育成を行い、経営者としての能力を身につけた後に事業承継を行うようにしましょう。
事業承継を行うにあたって、国や地方自治体などが実施している補助金や助成金で利用できるものはないかを確認しましょう。
事業承継・引継ぎ補助金など、公募によるものもあるため、要件をしっかりと確認しましょう。
経営者から後継者へ株式の贈与・相続が行われた場合に納税額が猶予・免除される「事業承継税制」があります。
事業承継税制を利用することができれば、後継者の負担を大きく軽減することができるため、要件を満たすように早めから準備を行いましょう。
事業承継は企業にとって大きな転換点であり、これからの企業の存続、発展に大きく関わる重要な問題です。後継者がいる、いないに関わらず、早めからの準備が成功を左右する問題でもありますので「まだ後継者のことを考えるのは早い」と思わずに、できるだけ早いタイミングで専門家に相談してみましょう。
当事務所では、事業承継税制も含め、中小企業の事業承継をサポートさせていただいています。ぜひ、お気軽にご相談ください。
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