事業承継税制の要件やメリット・デメリットをわかりやすく解説
会社を次の後継者へ引き継がせる「事業承継」には、予想以上にお金がかかります。特に事業を引き継ぐ後継者には、株式が移転…[続きを読む]
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次の後継者へ事業を引き継がせていく「事業承継」は、企業運営にとって避けては通れない課題です。後継者が見つからず、事業承継を進めていくことができなければ、会社を廃業するしか道はありません。近年の事業承継を取り巻く環境はどのようになっているのでしょうか。
中小企業庁が発表している中小企業白書のデータを中心に、事業承継の現状と課題、および解決方法を解説いたします。
①東京商工リサーチのデータでは2022年に休廃業・解散した企業の数は49,625件になっており、前年と比べて11.8%増加しています。増加の背景には、飲食業や建設業などに対するコロナ関係支援政策が少なくなり、今後の先行きがつかずに事業を撤退する経営者が増加していると考えられます。
②帝国データバンクのデータでは、休廃業・解散した企業の数は53,426社と、前年に比べて少なくなっています。これはコロナ禍での政府機関や金融機関などからの活発な融資活動により「まだ持ちこたえている」という状況だと考えられます。今後、原材料高騰などの影響により中小企業にとっては厳しい状況が続くでしょう。
経営者の高齢化は年々深刻になっており、年齢の分布は60歳から70歳までに多く分布しています。これは、これから「事業承継を行う経営者」や「廃業する経営者」が増加することを表しており、60代未満では活発な事業承継が行われていないことが見て取れます。
2022年の経営者不在率は減少しており、2011年以降、初めて60%を切っています。これは買収や出向などによる「M&A」が一般化してきたことなどが影響していると考えられますが、依然高い状況であることは変わりありません。
経営者が高齢になるにつれて後継者が決まっている割合が増加しており、70歳以上の経営者では約66%が「経営者が決まっている」状況になっています。残りの約34%については、候補者はいるが本人の了承を得ていない、候補者がいないケースであり、事業承継の先行きが不透明な状況です。
経営者の子などの親族が後継者となる「親族内承継」が一番高い割合になっていますが、2022年では従業員承継と同じ水準になっています。一方「社外への引継ぎ」が増加しており、買収や出向を中心にしたM&Aなどを利用した事業承継が普及してきていると考えられます。
事業承継後の売上高成長率は、2年間はマイナス成長ですが、それ以降は年々成長していることがわかります。後継者により事業の効率化やイノベーションを促進する取り組みを行い、売上高に寄与したと考えられます。事業承継は企業が成長するきっかけになったと言えるでしょう。
中小企業庁のデータによると、事業承継の主な課題は次の4つが考えられます。
後継者の人選は、企業の将来を決めると言っても過言でないほど重要です。既に後継者候補が決まっていたとしても、その後継者候補に「経営者としての資質があるのか」を早期に見極める必要があります。
また、後継者育成には想像以上に時間がかかります。社内の業務を一通り経験し、経営会議に参加して企業方針や経営状況を把握するなど、やるべきこと・覚えるべきことがたくさんあります。
事業承継はスタートが肝心です。できるだけ早く後継者候補の人選を行い、育成を意識することが大切です。
親族内で事業承継を行うと、後継者以外の親族との関係性が事業に影響を与えることがあります。特に社内に複数の親族がいる場合には、後継者になれなかった人との間でトラブルが発生することもありますので、親族内の関係性も考慮しながら人選する必要があります。
後継者が親族外である場合、後継者が自社株式を買い取る必要があるため、十分な資金が必要になります。また、株式の譲渡をめぐって経営者親族から反感を買う可能性もあります。
経営者や親族が会社の借入金の連帯保証人(個人保証)になっているケースでは、個人保証の引継ぎが事業承継の妨げになります。経営者の個人保証を後継者が引き継ぐと、後継者は重い責任を負うことになり、仮に会社が借入金を返済できなかった場合は後継者に返済義務が移ります。
個人保証の対策として中小企業庁では「経営者保証ガイドライン」により「個人保証の解除」を金融機関等に働きかけており、近年の融資では個人保証を外すことができるケースが増加しています。
後継者に株式を贈与する、または相続させると株式の評価額次第では多額の税金が発生するため「税負担の問題で事業承継が進まない」といった問題が生じます。解決策として納税の猶予、免除を受けられる「事業承継税制」が用意されていますが、満たさなければならない要件が多く、現在のところ使い勝手のいい制度ではありません。
株価対策を行いながら生前贈与するなど、早めから行動に移すことが重要です。
株主が経営者親族のみの場合であれば問題ありませんが、第三者へ株式が分散している場合は今後トラブルに発展する可能性があるため、早めに買取りを進めていく必要があります。そのためどれだけ後継者に株式が集約できるかどうかが事業承継のカギになります。
後継者の育成には「社内での後継者教育」が重要です。後継者候補に営業部門、財務部門、労務部門などの主要な部門をローテーションさせながら専門知識や業務プロセスについて教育を行います。
経営に携わるようになると、次は「経営者による直接指導、引継ぎ」を行います。経営理念やノウハウ、業界の動向などを直接指導することにより、後継者の経営者としての意識が高まります。
後継者候補がいない場合は、M&Aにより後継者を探すこともできます。M&A仲介業者などへ相談するといいでしょう。
後継者の負担を軽くするためには「個人保証を外すこと」が大切です。個人保証を外すためには「経営者保証ガイドライン」をもとに企業の安全性を分析し、その結果を金融機関などへ提出し、個人保証を外す相談を行うといいでしょう。また、2020年より開始された「事業承継特別保証制度」の利用も検討しましょう。
事業承継特別保証制度は、一定の要件を満たすことで事業承継時の個人保証を不要とする制度です。この制度では、事業承継前からある既存の融資についても、借り換えにより個人保証を外すことができます。また、融資の際に経営者保証コーディネーターの確認を受けることで保証料を大幅に下げることができますので、事業承継特別保証制度を利用する場合は専門家に相談しましょう。
後継者への株式の贈与、相続を行った時の税金については「事業承継税制」の利用を検討しましょう。事業承継税制の中でも「特例措置」を受けることで贈与税、相続税が猶予され、5年経過後に免除されます。
ただし、事業承継計画書の作成や雇用の要件など、満たさなければならない要件が多く、複雑な制度になっています。どの企業でも利用できる制度ではないため、まずは自社が制度の対象になるかどうか専門家である税理士に相談しましょう。
最新の中小企業白書のデータによれば、ここ数年、以前よりも事業承継が進みやすい傾向になりつつあります。しかし、まだ多くの企業が、事業承継の課題を抱えているのも事実です。
事業承継は事業の引き継ぎだけでなく、法律や税金の問題もからむため、専門家に相談しながら進めていくのが望ましいでしょう。
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