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事業承継のために定款チェックをしておこう!

定款

日常業務をするうえでは、会社の定款を意識することはあまりないかもしれませんが、実は、事業承継で重要なポイントの一つが、定款です。

定款が事業承継にどのように関わってくるのか、定款のチェックポイントと、定款の変更方法を解説します。

1.事業承継では定款が重要

事業承継を行うにあたって忘れがちなのが「定款の確認」です。定款は会社のルールを記載するもので、会社設立時に必ず作成しなければならない書類です。しかも、合同会社以外の会社は公証役場で認証を受けなければならない重要な書類です。

会社の事業承継の検討を行う際には「定款に何が記載されているのか」を確認しておかなければ、自社株式が分散して集約することが困難になってしまうことがあります。

1-1.定款の記載事項

定款は会社設立時に会社法に基づいて作成しなければならず、最初に作成される定款のことを「原始定款」と言います。会社設立後は、株主総会の決議により定款の内容を変更することは可能です。定款に記載される事項には「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つの区分があります。

1-1-1.絶対的記載事項

定款に必ず記載しなければならない事項のことを「絶対的記載事項」と言います。絶対的記載事項は会社の基礎になる事業目的や商号、本店の所在地、発行可能株式総数などの情報を記載します。

1-1-2.相対的記載事項

相対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項ではないが、会社が決めたルールがあるのならば定款に記載しなければ効力がない事項のことを言います。「株式の譲渡制限に関する規定」など、事業承継に関する重要な事項が記載される区分でもあります。

1-1-3.任意的記載事項

特に定款に記載する必要がない事項です。定款に記載しなくても効力が発生しますが、定款に記載することで明確になるものもあります。「会社の事業年度」「取締役などの数」「株主総会の議長」などが任意的記載事項に該当します。

1-2.事業承継に関する事項は「相対的記載事項」

定款の記載区分の中でも、事業承継に関する主な記載事項は「相対的記載事項」になります。記載していなければ、効力が発生しない事項ですので必ず確認し、必要であれば定款を変更する準備をしましょう。

2.定款のチェックポイントは3つ

事業承継関連で定款をチェックするポイントは3つあります。

2-1.株式譲渡制限会社かどうか

会社の株式が第三者に渡ってしまい、株式が分散してしまうと事業承継はスムーズに進みません。株式が分散してしまったり、望ましくない人に株式が渡ったりすることを防ぐ規定を「株式譲渡制限」と言います。

定款で株式譲渡制限を規定すると、株主総会の決議や取締役会の決議で承認されなければ株式を譲渡することができません。株式譲渡制限会社のことを「非公開会社」と言い、多くの会社がこの非公開会社に該当します。

最近設立された会社については、ほとんどの会社が株式譲渡制限会社になっていますが、創業が古い会社には株式譲渡制限が付いていない場合もあります。昭和41年以前は、株式会社に株式譲渡制限を付けることができなかったため、定款をずっと変更していない場合は、株式譲渡制限がついていないままになっている場合もありますので、注意しましょう。

2-1-1.株式譲渡制限会社の確認方法

株式譲渡制限は登記事項になりますので、会社の「履歴事項全部証明書」で確認することができます。履歴事項全部証明書の「株式の譲渡制限に関する規定」に次のように記載されている場合は、株式譲渡制限会社に該当します。

株式の譲渡制限に関する規定  当会社の株式を譲渡するには、取締役会の承認を受けなければならない

上記の例では、承認を受ける機関が取締役会になっていますが、会社の任意で「株主総会」や「当会社」にすることができます。

2-2.相続人等に対する売渡し請求

株式譲渡制限により、株式の分散や望ましくない人に株式が渡ってしまうことを防止することができますが、株主が亡くなり、相続により相続人に株式が渡る場合は防ぐことができません。

そこで、「株主に相続が発生した場合に、その相続人等に対して、相続で受け取った株式を会社に売り渡すように請求できる制度」を規定したものが「相続人等に対する売渡し請求」です。この制度では相続人が持つ株式の買取りができるため、この制度は株の分散を防ぐために有効な方法です。

「相続人等に対する売渡し請求」は相対的記載事項であるため、定款に定めていなければ効力がありませんので、定款に次のような項目がないかを確認し、ない場合は株主総会の特別決議の承認を得て定款を変更し、規定を新たに設ける必要があります。

<相続人等に対する売渡しの請求の記載例>
「当社は、相続その他の一般承継により当社の株式を取得した者に対し、当該株式を当社に売り渡すことを請求することができる」

2-2-1.相続人等に対する売渡し請求の問題点

売渡し請求は株式分散を防止するのに効果的ですが、株主構成をしっかり確認して検討しなければ少数株主に会社を奪われてしまうかもしれないリスクもあります。

売渡し請求は少数株主の相続人等だけではなく、大株主の相続人等にも請求できます。請求には株主総会の決議が必要ですが、大株主の相続人等は利害関係者になるため、その決議に参加することはできません。もし、大株主の相続人等の買取り請求の決議が可決された場合、少数株主が筆頭株主になり、会社が奪われてしまう可能性も考えられます。

2-3.種類株式の活用

株式には、普通株式以外にも「種類株式」というものがあり、議決権を制限した「議決権制限株式」や決定事項の拒否権を持つ「拒否権付株式(いわゆる黄金株)」などがあり、定款に定めることでこれらの株式を発行することができます。これらの株式を発行することにより、事業承継を有利に進めていくことができます。

2-3-1.議決権制限株式

議決権制限株式は、株主総会での議決権の行使を制限、または議決権を持たない株式のことを言います。この議決権制限株式により安定した事業承継が可能になります。

例えば、オーナーが1000株を保有している状態で990株を無議決権制限株式に変更し、990株の無議決権制限株式を後継者に生前贈与したとします。後継者は990株を保有していますが、議決権がないため、重要な決議事項はオーナーが決議することができます。後継者が成長過程の段階での事業承継で有効な方法になります。

2-3-2.拒否権付株式

拒否権付株式は、議決権制限株式と反対の性質を持ちます。拒否権付株式を1株でも発行すると、株主総会で決議された事項でも拒否権付株式を持つ株主が拒否することができます。オーナーに拒否権付株式を1株発行し、残りの株式は後継者に贈与するといった活用方法が可能です。

3.定款を変更するには

事業承継を検討する場合は、定款の確認を行いましょう。

そのうえで、株式譲渡制限会社でない場合は、株主総会の特殊決議(議決権を行使できる株主の頭数の半数以上および議決権の3分の2以上の賛成)を経て、定款の変更、変更から2週間以内に登記申請が必要になります。

また、種類株式を利用する場合については、株式総会の特別決議、定款の変更、2週間以内の登記申請が必要です。

相続人等に対する売渡し請求についても、株主総会の特別決議、定款の変更が必要です。登記申請は必要ありません。

事業承継は、会社のルールである定款の現状を確認し、変更が必要であれば適切なタイミングで行うことが重要です。事業承継プランを策定しながら、自社に必要な方法を検討してみましょう。

まとめ

事業承継における株式のトラブルを防ぐためには、定款に必要事項を定めておくことが重要です。ただし、定め方によっては、現経営者に不利な方向に働くこともあります。

そうならないように、可能な限り専門家に相談のうえで、定款の変更を検討することをお勧め致します。

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