相続税の2割加算の対象範囲と計算方法
相続税には2割加算という制度があるのはご存じでしょうか。単純に通常の相続税の1.2倍を納めなければならなくなる制度で…[続きを読む]
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未婚率の上昇や少子高齢化により、独身者や、配偶者と死別して一人暮らしをする、いわゆる「おひとりさま」が増えてきています。
元気に生活している間はよいですが、認知症などにより判断能力が低下してくると財産管理を適切に行うことができなくなってしまいます。
また、財産を残したとしてもおひとり様では希望する相手にわたらない可能性もあります。そのためおひとりさまは、万が一に備えて早めに相続対策を講じておくことが大切です。
今回は、おひとりさまの相続対策について解説します。
おひとりさまが亡くなった場合には、誰が相続人になるのでしょうか。
民法では、法定相続人の順位および範囲を以下のように定めています。
法定相続人 | 順位 |
---|---|
配偶者 | 常に相続人 |
被相続人の子ども(直系卑属) | 第1順位 |
被相続人の両親(直系尊属) | 第2順位 |
被相続人の兄弟姉妹 | 第3順位 |
おひとりさまには配偶者がいないため、配偶者以外の第1順位から第3順位までの相続人が各順位に応じて遺産を相続することになります。
なお、第1順位の相続人である子どもが被相続人よりも先に亡くなっていた場合でも、被相続人に孫がいた場合には、代襲相続によって孫が遺産を相続します。また、第3順位の相続人である兄弟姉妹も同様で、先に兄弟姉妹が亡くなっていたとしても甥姪がいた場合には、被相続人の甥姪が遺産を相続します。
おひとりさまに法定相続人がいない場合や、すべての法定相続人が相続放棄をした場合には、おひとりさまの遺産を相続する人が誰もいない状態になります。
こうしたケースでは、利害関係人の申立てにより相続財産管理人が選任され、相続債権者などへの弁済後、被相続人の遺産は最終的に国庫に帰属します。
ただし、おひとりさまに特別縁故者がいる場合には、裁判所の判断により遺産の全部または一部が特別縁故者に分与されることがあります。
おひとりさまの相続では、以下のようなトラブルが生じやすくなります。
おひとりさまは、一緒に生活している人が誰もいないため、亡くなった後の財産を把握することが困難です。ご自分の持っている財産をまとめた財産目録がなければ、遺産を把握するのに大きな手間がかかり、残された者に大きな負担をかけることになります。
また、スマートフォン・パソコンなどのデジタル端末やSNS・クラウドに上げたデータについては、パスワードが分からないと処分が難しいため、デジタルだけでなく紙にも情報を記載しておくことが大切です。
おひとりさまの兄弟姉妹が相続人になる場合には、相続税が2割加算される結果、他の相続人が相続した場合に比べて高額な相続税が課税されます。これは、兄弟姉妹が遺産を相続するのは偶然性が高いと考えられており、相続税負担を公平にするために設けられている制度です。
なお、代襲相続によって甥姪が相続する場合にも、同様に相続税が2割加算されます。
仲が悪く、長年にわたって一切交流がないという兄弟姉妹であっても、兄弟姉妹以外に法定相続人がいない場合には、遺産が相続されることになります。このような結果を回避するためには、生前にしっかりと相続対策を行っておくことが大切です。
おひとりさまができる代表的な生前対策としては、以下の2つが挙げられます。
おひとりさまであっても遺言書を作成しておけば、法定相続人以外に対しても遺産を渡す(遺贈する)ことができます。
法定相続人がいない場合や、法定相続人には遺産を渡したくないという場合には、遺言書を作成することでその希望を叶えることができます。特に、兄弟姉妹には遺留分がないことから、兄弟姉妹に相続させたくない場合には、遺言書を作成しておくことが効果的です。
ただし、遺言書を作成する際には、必ず遺産目録も作成するようにしましょう。単に「すべての遺産を○○に相続させる」とした遺言も有効ではありますが、財産を残された人は、どのような遺産があるかわからず困ってしまうからです。
また、遺言書を作成する場合には、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言の形式にすることをおすすめします。公正証書遺言にすることによって、自分の死後、確実に遺言を見つけてもらうことができ、形式の不備によって無効になるリスクも軽減できます。
家族信託契約とは、認知症などにより自分で財産管理ができなくなることに備えて、信頼できる家族に自分の財産を管理する権限を与える契約のことをいいます。
家族信託は、以下の3者間で行われます。
委託者は、信託契約によって受託者に財産の管理を委ね、受託者は、財産の管理によって利益を得た場合には受益者に渡します。おひとりさまの家族信託の一般的なケースとしては、委託者と受益者をおひとりさまとし、受託者を兄弟姉妹や信頼できる第三者として設定するケースです。
また、家族信託では、自分が亡くなった後の葬儀、納骨、埋葬などの処理を死後事務委任契約として含めることもできます。
このように家族信託は非常に複雑な制度となっていますので、どのような制度設計にすべきかわからない方は、判断能力があるうちに専門家に相談することをおすすめします。
以下では、おひとりさまの相続についてのよくある質問について回答します。
遺言を作成したとしても、自分が亡くなった後、遺言のとおりに相続してもらえるかどうかが不安な場合には、遺言で遺言執行者を指定しておくとよいでしょう。
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するための手続きを行う人のことをいい、遺言執行に関するさまざまな権限が与えられています。それにより相続人同士や相続人と遺贈者とのトラブルを回避することができます。
判断能力を失ってしまった場合には、生活や健康維持のための身上監護をしてもらう制度を利用する必要があります。
家族信託では財産管理はできても、身上監護には対応することができません。
この場合には、成年後見制度を利用して、本人に代わり財産管理や身上監護を行う成年後見人を選任してもらう必要があります。
おひとりさまの相続では、遺産の把握が困難であり、遺産を相続する相続人がいないなどさまざまな問題が生じます。このような問題を解決するためには、生前の相続対策が重要になります。
ご自身の状況に応じた相続対策を行うためにもまずは専門家に相談することをおすすめします。
上原会計事務所では、相続対策だけでなく、家族信託にも対応しています。是非一度ご相談ください。
生前対策については、上記のような場合以外にも、検討する課題が多く、専門家の助けが必要なケースが少なくありません。
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