目次
年間110万円を超える財産の贈与を受けた人には贈与税がかかりますが、贈与税の算式自体は、シンプルです。
今回は、贈与税の計算方法・税率について詳しくご紹介します。
1.贈与税の税率と計算方法
まず、贈与税を計算する際の基礎になる事項のご紹介をします。
1-1.贈与税の計算年度
贈与税は貰う度にかかるわけではなく、毎年1月1日から12月31日までの間に贈与された財産の合計に対してかかります。
例えば、2019年の1月20日に100万円、5月31日に200万円、2019年に500万円の贈与があった場合、2018年は合計300万円に対して、2019年は500万円に対して贈与税を計算します。
贈与税の税率
贈与税の税率には、一般贈与財産用と特例贈与財産用との2パターンがあります。
課税価格 (贈与額-110万円) |
一般贈与財産用 | 特例贈与財産用 | ||
---|---|---|---|---|
税率 | 控除額 | 税率 | 控除額 | |
~200万円 | 10% | – | 10% | – |
200万円超~300万円 | 15% | 10万円 | 15% | 10万円 |
300万円超~400万円 | 20% | 25万円 | ||
400万円超~600万円 | 30% | 65万円 | 20% | 30万円 |
600万円超~1,000万円 | 40% | 125万円 | 30% | 90万円 |
1,000万円超~1,500万円 | 45% | 175万円 | 40% | 190万円 |
1,500万円超~3,000万円 | 50% | 250万円 | 45% | 265万円 |
3,000万円超~4,500万円 | 55% | 400万円 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
特例贈与財産とは、直系尊属から贈与の年の1月1日時点において20歳以上の人への贈与財産のことをいいます。
例えば、父から20歳以上の子への贈与、祖母から20歳以上の孫への贈与などです。
下記の税率表を見ていただくと分かりますように、一般贈与財産より贈与税負担が少なくなるように設定されており、次世代への財産承継を円滑に行うことができるようになっています。
一般贈与財産とは、特例贈与財産以外が該当します。
例えば、他人同士の贈与、祖父母から未成年の孫への贈与、夫婦間の贈与などです。
【参考サイト】No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|相続税 |国税庁
一般贈与財産 | 特例贈与財産以外 |
---|---|
特例贈与財産 | 直系尊属から贈与の年の1月1日時点において20歳以上の人への贈与財産 |
1-3.贈与税の計算式
贈与税の計算式は非常にシンプルです。
(贈与額※- 110万円)× 税率 - 控除額 = 贈与税額
年間の贈与額の合計から基礎控除額110万円を差し引いた残額に、上記表の該当する税率を乗じて控除額を差し引きます。
次項では、具体的な金額を使っての計算をご紹介していきます。
※贈与税は贈与財産のすべてにかかるわけではなく、対象になるものとならないものがあります。詳しくはこちらをご確認ください。
【関連記事】贈与税とは?|どんな時にかかる?非課税枠は?わかりやすく解説
2.贈与税の具体的な計算
一般贈与財産と特例贈与財産とに分けて、具体的な贈与税を計算してみましょう。
2-1.一般贈与財産の計算
兄から弟へ、土地1,000万円の贈与があったとします。
兄弟間の贈与は直系尊属から20歳以上の人への贈与には該当しませんので、一般贈与財産に該当します。
贈与額1,000万円から基礎控除110万円を差し引いた残額は890万円ですので、上記の税率表の、一般贈与財産用、課税価格600万円超~1,000万円に該当し、税率は40%、控除額は125万円となり、算式にすると、次の通りとなります。
(1,000万円-110万円)× 40% - 125万円 = 231万円
2-2.特例贈与財産の計算
祖父から30歳の孫へ、現金600万円の贈与があったとします。
祖父母は孫の直系尊属であり孫は20歳以上ですので、特例贈与財産に該当します。
贈与額600万円から基礎控除110万円を差し引いた残額は490万円ですので、上記の税率表の、特例贈与財産用、課税価格400万円超~600万円に該当し、税率は20%、控除額は30万円となります。算式は、以下の通りです。
(600万円-110万円)×20%-30万円=68万円
同じケースで一般贈与財産に該当する場合
これが一般贈与財産に該当する場合には、どれほど贈与税が変わるのか比較してみましょう。
(600万円-110万円)×30%-65万円=82万円
特例贈与財産の場合には税率20%と控除額30万円で贈与税額は68万円でしたが、一般贈与財産になりますと税率30%と控除額65万円で贈与税額は82万円となり、約1.2倍になりました。
この差は贈与額が大きくなればなるほど開いていきます。
3.贈与税の非課税措置
贈与税には様々な非課税措置があり、適用を受けることで贈与税負担を大きく軽減することができます。
ここでは代表的な非課税制度をご紹介します。
3-1.相続時精算課税
60歳以上の両親や祖父母などの直系尊属から、20歳以上の子や孫などに対しての贈与については、最大2,500万円まで非課税になります。
2,500万円を超えた部分ついては、一律20%の税率で贈与税がかかります。
なお、相続時精算課税制度について詳しくは、以下の関連記事をお読みください。
【関連記事】相続時精算課税制度とは?|その仕組みメリット・デメリットについて
次の事例1.を使って、実際に計算してみます。
【事例1.】
- 贈与者:75歳の祖母
- 受贈者:20歳の孫
- 贈与財産:現金3,000万円
- 相続時精算課税の適用を受けることを選択
(3,000万円 - 2,500万円)× 20% = 100万円
3-2.住宅取得等資金の非課税
両親や祖父母などの直系尊属から、20歳以上の子や孫が住宅を取得するための資金の贈与については、住宅取得の契約締結日や住宅の性能などに応じて、300~3,000万円が非課税になります。
では、次の事例2.を使って実際に計算してみましょう。
【具体例2.】
- 贈与者:父
- 受贈者:35歳の子へ
- 贈与財産住宅を購入するための資金3,300万円
- 住宅取得等資金の非課税額3,000万円に該当
(3,300万円-3,000万円-110万円)×10%=19万円
この制度は贈与税の基礎控除110万円と併用することができますので、非課税額3,000万円を超える300万円から更に110万円を差し引くことができます。
この制度を利用することで、3,300万円もの贈与をしても贈与税は19万円で済みました。
3-3.教育資金の一括贈与の非課税
両親や祖父母などの直系尊属から、30歳未満の子や孫が教育資金に充てるためのお金の贈与については、最大1,500万円まで非課税になります。
受贈者が金融機関と教育資金管理契約を締結して専用口座を開設し、教育資金非課税申告書を提出することや、お金を引き出す時には領収書など教育資金であることを証明する書類を提出することなど制約は多いですが、金融機関の窓口のみで完結する点がメリットです。別途、税務署へ贈与税申告などしなくて大丈夫です。
ただし、30歳までに1,500万円を教育資金として使いきれなかった場合には、残高に対して贈与税がかかります。
3-4.結婚・子育資金の一括贈与の非課税
両親や祖父母などの直系尊属から、20歳以上50歳未満の子や孫が結婚や子育てに充てるためのお金の贈与については、最大1,000万円まで非課税になります。
受贈者が金融機関で専用口座を開設することなど、要件は教育資金の一括贈与と同様です。