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親から子、孫への現預金の贈与と相続税対策

親から子や孫への生前贈与は、将来の相続税対策として非常に有効な方法です。
ただ、贈与には贈与税がつきものであり、親から子や孫への贈与であっても当然贈与税はかかります。

そこで、親から子や孫への贈与を行った場合と、行わなかった場合の相続税、贈与税を比較することによって、贈与の相続税対策としての有効性を検証してみたいと思います。

1.贈与の具体例

具体例を見てみましょう。前提条件は以下の通りです。

  • 父80歳が推定被相続人のケースです。
  • 父の相続人は母、長男、次男の三人です。
  • 父の相続財産は36000万円(不動産など2億円+現預金16000万円=遺産総額36000
    万円)とします。
  • 父には孫が4人います。(長男に2人・次男に2人)

親族図

  • このような条件のもと、父が生前に子である長男、次男に、そして長男、次男のそれぞれの孫4人に贈与をするとします。各人へは年間200万円とします。この結果、父が子、孫6人に贈与する1年間の贈与額は200万円×6人=1200万円となります。
  • この贈与を5年間、継続して行うこととします。結果として1200万円×5年=6000万円の贈与がなされることになります。

2.相続税額・贈与税の比較

以上のように、父は財産36000万円のうちから、現預金を年1200万円ずつ、5年にわたり子や孫に贈与しています。

この場合に課される税金がどうなるか、次の2つに分けて計算してみましょう。

①この生前贈与を実行しなかった場合・・遺産総額36000万円

②この生前贈与を実行した場合・・・・・遺産総額30000万円
(36000万円-贈与6000万円=30000万円)

1,2のそれぞれの場合に課される税金は以下のようになります。ただし、「相続税法19条 相続開始前三年以内に贈与があつた場合の相続税額」の規定の適用はないものとします。

①生前対策なし ②生前贈与実行後 節税額
相続税 相続税 贈与税
遺産総額 36,000 遺産総額 30,000 贈与財産/人 200
基礎控除 4,800 基礎控除 4,800 基礎控除/人 110
課税財産額 31,200 課税財産額 25,200 課税財産額/人 90
相続税の総額 7,820 相続税の総額 5,720 贈与税額9万円×6人×5年 270 1,830

①生前対策をしなかった場合
相続税 7820万円
贈与税    0円

②生前贈与をした場合
相続税 5720万円
贈与税  270万円
合計  5990万円

贈与税額は暦年で計算され1人当たり110万円/年の基礎控除があります。

1人当たりの贈与税額は(贈与額200万円-基礎控除110万円)×10%=9万円
5年間の贈与税は9万円/年・人×5年=45万円/人
6人合計で贈与税の合計額は 45万円/人×6人=270万円

③  ①-② の節税額 7820万円-5990万円=1830万円

節税額は上図の通り1830万円となり、非常に大きな節税がなされたことになります。

2-1.いくら生前贈与すれば良いか?

上記の説明では、相続財産36000万円、毎年、現預金を年1200万円ずつ贈与すると仮定しましたが、いくら贈与すれば良いかは、相続財産の金額、贈与年数、および、相続人の人数や区分(配偶者、子供、親、兄弟姉妹)によって異なります。

生前贈与の最適な金額を計算するためのAIシミュレーションツールを利用すると、最適な贈与金額を簡単に求めることができますので、ご自由にご利用ください。

3.贈与実行時の注意点

このように大きな節税効果はあるものの、実際には以下のような問題点があり、それほど簡単ではないことも多いです。

問題点の一つは贈与する側の問題です。

  1. 高齢者の方が直接預金を引き出し、振り込み作業を行うこと自体が難しい。
  2. ご高齢の方が金融機関まで出向くのが困難で事実上引き出しができない
  3. 代理人が引き出そうとすると本人の来店、確認などを求められます。
  4. 振り込め詐欺の多発から、ご高齢者の方の大口預金の引き出しやATMでの振り込などは金融機関も慎重になっています。

一方、贈与を受ける受贈者のお子様やお孫様にも問題があります。

  1. 贈与税の申告や納税の手続きに不慣れである
  2. 贈与の書類の保管、事務手続きができない。
  3. 受贈した預貯金の管理ができない。

4.贈与の確実な実行のために

贈与という法的事務を毎年忘れずに行い、贈与に関する書類を残して申告もすることは慣れないこともあってなかなか難しいことです。

そこで、このような問題点を解決し、贈与の確実な実行、贈与書類の保存、贈与税申告を毎年もれなく行うために次のような方法を検討してはどうでしょう。

4-1.家族信託を活用する

信託贈与する金融資産を信頼できる人に信託する方法があります。

上記の例で言えば、父を委託者、長男を受託者とする家族信託契約を結び、長男が贈与財産の管理を行って毎年の贈与を行います。
税理士が申告、納税などのサポートをすることも業務を確実に行ううえで有効です。

4-2.生命保険を活用する

また、お孫様に贈与した現預金の管理が心配な場合には生命保険を活用することも有効です。

お孫様を契約者・被保険者とする生命保険の保険料に充当することによって、贈与した金銭を毎年積立てることができます。
将来、結婚資金などにあてればお孫様から感謝されるに違いありません。

4-3.他の贈与特例と組み合わせる

この現預金の贈与を住宅資金贈与、教育資金贈与、結婚・子育資金贈与などの特例と合わせ活用すると一層効果的です。

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