事業承継税制の要件やメリット・デメリットをわかりやすく解説
会社を次の後継者へ引き継がせる「事業承継」には、予想以上にお金がかかります。特に事業を引き継ぐ後継者には、株式が移転…[続きを読む]
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事業承継において、考慮しなければいけない重要な課題の一つが税金対策です。事業承継では、承継の方法によって、それぞれ税金がかかるからです。
ここでは、株式譲渡、贈与、相続、それぞれの事業承継の方法に応じて、どんな税金がかかるのか? また、そのメリット・デメリット等を解説します。
中小企業にとって、次の世代に会社の引き継ぎを行う「事業承継」は、早めから準備に取りかからなければならない非常に重要な検討課題です。事業承継の準備を整えていなければ、経営者が急病により引退してしまうと廃業せざるを得なくなり、事業を存続させていくことができなくなってしまいます。
事業承継の方法は、経営者の子どもなどへ事業を承継する「親族内承継」、親族以外の会社の役員や従業員に承継する「親族外承継」、M&Aによる「第三者への売却」の三種類に分けられています。
どの方法についても、経営者が保有している会社の自社株式を移転しなければならないため、承継方法に応じて所得税・贈与税・相続税が課税されることになります。
「どの税金がどれくらいかかるのか」を考慮せずに事業承継を進めてしまうと、思っていた以上の税負担が発生してしまいます。計画通りに事業承継を行うことができなくなってしまい、事業承継が失敗してしまう可能性もあります。
事業承継で発生する税金は、自社株式を売買するのか、贈与するのか、亡くなった時に相続するのかによって種類が異なります。また、中小企業の自社株式は市場価格がないため、売買、贈与、相続のどのパターンであっても自社株式の株価を算出する必要があります。事業承継の方法別に発生する税金を見ていきましょう。
経営者の株式を譲り渡す「株式譲渡」による事業承継を行う場合には、所得税が課税されます。株式譲渡は、主にM&Aによる第三者への売却、役員や従業員に承継する親族外承継で用いられる承継方法です。
株式譲渡では、「自社株式を売却した経営者に所得税(譲渡所得)が課税」されます。非上場株式の譲渡は、他の所得とは区分して税金の計算を行う「申告分離課税」が適用され、税率は一律20.315%です。
譲渡所得にかかる税金は、売却価格から株式の取得費と売却にかかる手数料を差し引いたものに20.315%を乗じて税金を算出します。
売買による事業承継のメリットは「現経営者が資金調達を行うことができる」ことです。譲渡所得税の負担はあるものの、経営者が保有している自社株式を現金化することができるため、その資金を老後資金への充当や新たな事業を行う際の原資などに利用することができます。
また、売買による事業承継はM&Aや親族外承継で利用されるため、経営者の親族内で相続トラブルなどが発生することもなく、事業承継後は安定して後継者が事業を続けていくことができます。
売買による事業承継のデメリットは「後継者の資金調達」です。後継者は株式を購入するための資金調達が必要になります。株式の価格は売り手と買い手の合意により決められますが、「税務上の株式の評価額」よりも著しく低い金額であった場合は、「みなし譲渡」「みなし配当」「みなし贈与」が課税されるおそれがあるため、自社株式の譲渡には慎重な対応が必要です。
税務上の株式の評価額は、会社の財務状況や類似業種の業績などをもとに税法上のルールにより求めることになります。評価額の計算は複雑ですので、専門家に依頼するとよいでしょう。
贈与による事業承継は、経営者が後継者に対して無償で贈与する方法で、贈与税がかかります。親族内承継で利用されることが多く、一度に贈与するのではなく、早期から長い年月をかけて贈与を行うことで贈与税を軽減することができます。また、贈与税の相続時精算課税制度を選択することで2,500万円の非課税枠が利用できます。
贈与による事業承継のメリットは「後継者に株式の買い取り資金が必要ない」ことです。売買による事業承継の場合は、後継者が買い取り資金を用意しなければならず、非常に多額の資金が必要になる場合があります。贈与による事業承継の場合は、株式の買い取り資金は必要ありません。贈与税の負担は発生しますが、長い年月をかけることで贈与税の負担を軽減させることが可能です。
また、早期から株式を後継者に贈与しておくことにより、後継者が早期に経営に参画しやすくなり、経営面での事業承継も同時に行うことができます。
贈与による事業承継のデメリットは「特別受益と判断されるおそれがある」ことです。特別受益とは、一部の相続人だけが特別に得ていた利益のことを言います。生前贈与によって特別な利益を受けた相続人がいる場合は、その財産を相続財産に持ち戻し、相続人全員で遺産分割を行うことになります。
経営者が自社株式を保有したまま亡くなった場合、後継者である相続人が相続により株式を取得する方法であり、相続税がかかります。後継者が相続人でなければならないため、親族内承継で利用されます。
相続による事業承継のメリットは「後継者に資金が必要ない」ことです。相続では、相続税は課税されますが、売買でないため株式の買い取り資金を準備する必要はありません。
相続による事業承継のデメリットには「相続トラブルのリスク」があげられます。生前に経営者が既に遺言で親族内に後継者を決めていた場合であっても、遺留分の問題が発生します。例えば、経営者の財産のほとんどが自社株式であった場合、後継者である相続人が相続財産の多くを1人で相続することになります。他の相続人は少しの財産しか相続できなくなってしまい、最低限保証された遺産取得分(遺留分)を主張され、トラブルになってしまう可能性があります。
また、遺言がなく、相続人全員での遺産分割協議により相続財産を分割することになる場合は、後継者以外の経営に関わっていない相続人が株式を相続する可能性があります。後継者に株式が集約されていなければ、経営の意思決定がスムーズにできなくなり、引き継いだ後の経営リスクになってしまいます。
贈与または相続により株式を移転し、事業承継を行う場合、多額の納税資金が発生し、円滑な事業承継が難しくなってしまうケースがあります。事業承継税制では、贈与税または相続税の納税が猶予され、一定期間にわたって要件を満たすと猶予された税額が免除されます。
事業承継税制の要件は、非常に複雑なものになっており「先代経営者の要件」「後継者の要件」「会社の要件」「事業継続要件」を満たす必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
事業承継税制の主なメリットは「納税資金が必要ない」ことです。事業承継税制(特別措置)を利用すれば、相続税または贈与税の全額が猶予され、要件を満たすことで免除になります。
事業承継税制を適用するためには、複雑な要件をクリアしなければならず、一度適用を受けると途中で廃業したり、会社を売却したりすることはできません。もし、廃業や売却すると猶予された税額と猶予されていた期間の利息を納付しなければなりません。
事業承継でかかる税金をまとめると次のとおりです。
事業承継の方法 | かかる税金 |
---|---|
株式譲渡(売買) | 所得税 |
贈与 | 贈与税 |
相続 | 相続税 |
それぞれの承継の方法にメリット・デメリットがあり、対策方法も異なります。
株式の評価額が大きいと、税金の金額も高くなりがちです。税金は一括で納付しますので、現金の用意が必要です。
事業承継を検討する際には、早い段階から税理士などの専門家にご相談のうえで進めていかれることをオススメいたします。
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