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親子間の贈与で贈与税はかかる?|かからないための対策方法

親から子への生前贈与は、将来の相続税対策として非常に有効な方法です。

ただ贈与には贈与税がつきものであり、親子間の贈与であっても当然贈与税はかかります。しかし、親子間だからこそ適用できる非課税制度も多くあります。

今回は、親子間における贈与で贈与税がかかってしまうケースと、贈与税がかからないようにするための対策方法、親子間の贈与の非課税制度を紹介します。

1.親子間の贈与で贈与税がかからないケース

親には子を扶養する義務がありますので、元々贈与税がかからない贈与があります。

1-1.年間110万円以下の贈与

親子間の贈与に限ったことではありませんが、暦年贈与を行う場合には、年間110万円の基礎控除額が設けられています。毎年1月1日から12月31日までの間に行われた贈与の合計額が110万円以下の場合には贈与税はかかりません。

【関連記事】贈与税の計算方法と税率について詳しく解説

1-2.生活費・教育費

親には子を監護、教育、扶養する義務があります。子が日常生活を送るために必要な生活費や、教育にかかる費用(教育費)などは、必要な金額である分にはいくらであっても贈与税はかかりません。

親子が同居していれば、親が子の分の生活費も支払いますので、問題になることはないでしょう。

高校生・大学生の子供が、寮や一人暮らしで別居している場合には、寮費や一人暮らしをするにあたっての家賃、仕送りなどが生活費に該当します。また、高校・大学の入学金・学費・設備費、学業に利用する教材・文房具・各種の塾代などが教育費に該当します。

文部科学省による「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果」によれば、4年生の私立大学に納入する初年度の授業料・入学料・施設設備費合計の平均額は、約136.5万円です。理科系学部の平均額は約153万円、医師系学部の平均額は約482.2万円にもなります。この金額を、親が子供の代わりに払っても、贈与税はかかりません。

1-3.結婚・出産費用

子の結婚や出産にあたって、結婚式や出産にかかる実費、結納金、持参金、お祝い金などを親が支払った場合であっても、その金額が一般常識的な範囲内であれば贈与税はかかりません

ゼクシィ結婚トレンド調査2024」によると、結婚式・披露宴などにかかる総額費用の平均額は343.9万円です。これだけの費用を本人たちが負担するのは大変ですので、親が援助するケースも多いと思われますが、その場合でも贈与税はかかりません。

1-4.子供名義の名義預金

相続対策として、子供や孫の銀行口座を作って、親や祖父母が一方的にお金を振り込むことがあります。これは「名義預金」と呼ばれますが、贈与にはなりません。子供や孫が振り込まれたことを知らないからです。

しかし、贈与ではないということは、振り込んだ人の相続財産ですので、相続時に相続税がかかります。

名義預金は贈与税はかからないものの、相続税がかかりますので、あまりオススメできる方法ではありません。あとで述べる「教育資金の一括贈与の非課税制度」などを利用して、教育で必要な金額を贈与するほうが良いでしょう。

2.親子間の贈与で贈与税がかかるケース+その対策

親子間の贈与で贈与税がかかるケースと、その対策を紹介していきます。

2-1.年間110万円を超える贈与

すでに述べた通り、贈与税の基礎控除額は110万円です。子に年間110万円を超える贈与をすると、超えた部分に対して贈与税がかかります。

例えば、すでに社会人になって独立して生計を立てている子に、300万円を渡したとします。これは、もはや生活費や教育費ではなく贈与ですので、110万円を超えている部分に対して贈与税がかかります。

贈与税がかからないようにするための対策

贈与税がかからないようにするためには、年間で110万円以下の贈与に抑えることです。生前贈与で子にお金を渡したいのであれば、毎年、110万円以下に抑えて贈与すれば、贈与税はかかりません。

ただし、毎年100万円の贈与を10年間行うなど、毎年同じ額を贈与してしまうと、元々1000万円を贈与することが目的の定期贈与と税務署にみなされてしまい、贈与額1000万円に贈与税がかかってしまいます。

贈与額を毎年変えること、贈与契約書をその都度作成することなどで定期贈与のリスクは軽減できます。子への生前贈与を検討されている方は、税理士にご相談ください。

2-2.必要以上の生活費や教育費

親子間であれば贈与税がかからないとされている生活費や教育費の贈与は、その金額が必要な範囲内である場合です。

生活費として子の口座に振り込んだが、必要以上の金額であったため余り、通帳に残っているような場合には、その部分が贈与とみなされ、110万円を超えていたら贈与税がかかります。

また、一人暮らしをする大学生の子に、5,000万円のマンションを買い与える場合も、贈与とみなされ、贈与税がかかります。5,000万円という金額は、通常必要な生活費を超えているからです。

ほか、自動車で通勤する地方の大学生の子に1,000万円のスポーツカーを購入した場合も同様です。1,000万円のスポーツカーは、一般的には通学や日常生活には必要ないものだからです。

贈与税がかからないようにするための対策

生活費や教育費は、必要な範囲で子に渡すようにしましょう。1年分をまとめて振り込んだりすると、贈与と疑われる可能性もありますので、毎月、必要な金額を子に渡すことが望ましいです。

大学生の子に、マンションや高級スポーツカーを与えたいのであれば、不動産や自動車の名義は親にして、無償で子に貸すことです。これは、「使用貸借」と扱われ、贈与税がかかることはありません。

2-3.時価より安価で売買

親子間で、無償で譲ってしまうと贈与税がかかるからという理由で、非常に安い価格で売買することがあります。

しかし、市場の相場よりも著しく低い価格で売買が行われた場合には、その利益部分は実質的な贈与であるとみなされ、贈与税がかかる可能性がありますので注意してください。これを「みなし贈与」といいます。

贈与税がかからないようにするための対策

「みなし贈与」とみなされないためには、たとえ親子間であっても、「市場の相場よりも著しく低い価格」とみなされないよう、市場の相場に比較的近い価格で売買することです。

「市場の相場よりも著しく低い価格」については、具体的に明確な金額はなく、それぞれの税務署の判断となります。親子間で不動産などの売買を検討されている方は、税理士にご相談ください。

2-4.車や住宅などのローンの肩代わり

子が抱えているマンションの住宅ローンや自動車ローンなどを親が代わりに支払った、または一括返済した場合には、子へ直接現金を渡したわけではありませんが、肩代わりした分は実質的には親から子に対する贈与になり、贈与税がかかります。

贈与税がかからないようにするための対策

親が子の住宅ローン等の返済資金を負担しても贈与税がかからないようにするためには、次のような方法があります。

  • 返済に充てる金額を年間110万円以下に抑える
  • 親が負担した分に相当する住宅の所有権を、親に変更して共有名義にする
  • 親が直接返済をするのではなく、子へ一旦貸し付けて、子が返済する
    など

貸付の場合には金銭消費貸借契約書を作成してください。

2番目の方法は、贈与税がかからないための方法としては有効ですが、親に財産が移転してしまい、将来かかる相続税を増やすことになりますので、あまりオススメできる方法ではありません。あとで述べる「住宅取得等資金贈与の非課税制度」を利用して、住宅の購入時に資金を贈与するのが良いでしょう。

2-5.高額な金銭貸借

子が大きな現金を必要としている場合に、贈与税をかけずに援助するため、親からの貸付金とすることがあります。貸付金ですので当然贈与税はかかりませんが、返済不能なほどに高額である場合や契約書がない場合には、贈与とみなされる可能性があります。

契約書があっても無利子(無利息)の場合は、利子に相当する金額の利益を受けたものとして、その利息相当額が贈与として扱われる場合もあります。

また、親が貸付金をもう返さなくて良いと免除した場合には、子は免除された金額分の贈与を受けたことになりますので、贈与税がかかります。

贈与税がかからないようにするための対策

親子間でも、高額なお金の貸し借りをするときは、必ず金銭貸借契約書を作成しましょう。その際には、契約時点の市場の利子をもとに、妥当な利子を設定します。

3.親子間の贈与税の非課税制度(節税する方法)

財産が円滑に次の世代へと承継されていくために、親子間の贈与については、贈与税の非課税制度(負担を軽減する措置)がいくつかあります。

上手に利用することで贈与税だけではなく、将来の相続税負担も抑えることができます。

3-1.相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、直系血族で60歳以上の父母や祖父母などから、18歳以上の子や孫に対する贈与について選択することができる贈与の課税方法です。
2,500万円までであれば贈与の回数は関係なく贈与税はかかりません2,500万円を超えた部分に対しては、一律で20%の贈与税がかかります。

この制度は贈与者それぞれに選択することができ、父と母それぞれに2,500万円の非課税枠があることになります。もちろん、父からの贈与は相続時精算課税制度、母からの贈与は暦年課税とすることもできます。ただし、相続時精算課税制度は一度選択すると暦年課税には戻せません。

相続時精算課税制度はその名称の通り、相続時に精算して課税する制度であり、適用を受けた贈与額は、贈与者の相続時に相続財産に加算され相続税がかかります。2,500万円までに対する贈与税が相続税に代わる仕組みとなっています。

よって、将来相続税が発生しない人にとっては大きなメリットがあります。

また、相続財産に加算されるのは贈与時の金額になりますので、不動産や非上場株式など価値が上昇していく可能性が高い財産を、相続時精算課税制度の適用を受けて子へ贈与しておくと相続税対策にもなります。

相続税法の改正で2024年からは、相続時精算課税制度にも110万円の基礎控除枠が設けられました。年間110万円以下の贈与であれば、相続財産に持ち戻されることはなく、贈与税も将来の相続税もかかりません

なお、相続時精算課税制度については、是非、次の関連記事をお読みください。

【関連記事】相続時精算課税制度とは?|その仕組みメリット・デメリットについて

3-2.教育資金の一括贈与の非課税制度

2026331日までの期間限定の制度で(ただし、何度か期間が延長されています)、30歳未満の子や孫に対する教育資金の一括贈与に係る贈与税について、子や孫それぞれ1,500万円まで贈与税がかからない制度です。

贈与者は受贈者名義の専用口座を金融機関に開設し、教育資金を一括して預け入れます。この資金については、1,500万円までが非課税になります。

この専用口座は使途が教育費に限定されており、受贈者は自由に引き出すことはできないようになっています。必要な教育費が発生する都度、金融機関に領収書などを提示してチェックを受け、ようやく引き出せます。

また30歳に到達すると専用口座は終了し、残高がある場合には贈与税がかかります。

扶養義務者からの教育費は元々非課税ですが、この制度の適用を受けると1,500万円まで非課税で一括贈与できるという点にメリットがあります。

また管理された専用口座であるため、若年者である受贈者の使い込み防止にも役立ちます。

3-3.結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度

「教育資金の一括贈与の非課税制度」と兄弟のような制度です。

2027年3月31日までの制度で(ただし、何度か期間が延長されています)、18歳以上50歳未満の子や孫に対する結婚や子育てにかかる資金の贈与について、受贈者ごとに1,000万円(うち、結婚資金は300万円)まで贈与税がかかりません

3-4.住宅取得等資金贈与の非課税制度

2026331日までの期間限定の制度で(ただし、何度か期間が延長されています)、父母や祖父母から子や孫へ、マイホームを取得するための資金の贈与があった場合には、省エネ等住宅の場合には最大1,000万円までそれ以外の住宅の場合には500万円まで贈与税がかからない制度です。

マイホームの取得には、新築や中古住宅の購入、増改築費用などがあたります。

「子がマイホームを購入するので資金をいくらか援助してあげよう」という場合に適用できる制度です。

またこの制度は暦年贈与や相続時精算課税制度と併用することができ、相続時精算課税制度と併用すると最大で3,610万円までの贈与税が非課税になります。

ただし、相続時精算課税制度を併用する場合には、相続時に加算されることと、一度選択すると一生暦年贈与を選択できないという注意点がありますので、先を見据えたうえで慎重に検討してください。

3-5.暦年贈与による生前贈与

暦年贈与の贈与税率には一般税率と特例税率があり、特例税率の方が低く設定されています。

特例税率は父母や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与に限って適用することができますので、どうしても贈与税がかかる場合でも、親から成人した子への贈与であれば、通常の贈与税よりも節税になります。

一般贈与財産用(一般税率)

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1000万円以下 40% 125万円
1500万円以下 45% 175万円
3000万円以下 50% 250万円
3000万円超 55% 400万円

特例贈与財産用(特例税率)

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1000万円以下 30% 90万円
1500万円以下 40% 190万円
300万円以下 45% 265万円
4500万円以下 50% 415万円
4500万円超 55% 640万円

【出典サイト】No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

相続税の基礎控除を超えるような多額の財産をお持ちの場合には、贈与税を支払ってでも生前贈与を行った方が有利になるケースがありますので、積極的な検討をおすすめいたします。

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4.子への生前贈与による相続税対策は当事務所へご相談を

親子間での贈与であっても、基本的には他人への贈与と同様の取り扱いになります。

ただ、贈与税がかからない贈与の方法もありますし、親子間であれば贈与税が非課税となる特例制度がいくつかありますので、賢く計画的に利用してください。

どんな制度を利用して、いついくら贈与していけばいいのか、よくわからない方は、一度、当事務所にご相談ください。

相続税対策は実行に移す前の綿密な検討とシミュレーションが重要です。当事務所では、お客様から状況をヒアリングして、最適な生前贈与の進め方を提案いたします。

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贈与税に関しては、上記のような場合以外にも、下記のように税理士・弁護士などを含めた総合的なアドバイスが必要になるケースがあります。

  • 生前対策のため、贈与税の節税をしたい
  • 贈与税の申告の仕方がわからない
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