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事業承継ガイドラインをわかりやすく読み解く

中小企業の事業承継が円滑に行われるように、中小企業庁は「事業承継ガイドライン」というものを策定しています。

今回はこの事業承継ガイドラインについて、ポイントを押さえながらわかりやすく徹底解説させていただきたいと思います。

1.事業承継ガイドラインとは

事業承継ガイドライン」とは、事業承継の方法や対策などの基本を網羅して作成された説明書のようなものです。

このガイドラインに基づいて進めていくことにより、事業承継が円滑に行えるようになっています。

【出典サイト】「事業承継ガイドライン」を策定しました|中小企業庁

1-1.事業承継の円滑化・中小企業の活性化を狙い中小企業庁が策定

中小企業庁は経済産業省の外局に当たり、国内における中小企業の育成や発展に関する事務などを所管する機関です。

中小企業が持つ技術やノウハウが今後も長く続いていくために、事業承継は円滑に行われなければなりません。それを助けるために、中小企業庁は2016年に「事業承継ガイドライン」を策定しました。

1-2.策定された背景

日本企業に占める中小企業の割合は99%以上となっており、経済を支えています。また、中小企業で働いている人の割合も70%程度と、地域雇用の重要な受け皿となっています。

しかし、現代の社会問題である少子化高齢化や、職業選択が自由になってきたことなどから、事業承継がうまくいかずに廃業の道をたどってしまう中小企業は少なくありません。

中小企業の事業承継が円滑に行われないことは、国にとっても大きなダメージとなります。

また、次世代を担う後継者への事業承継によって、その企業の更なる発展が期待でき、国の利益となります。

1-3.事業承継ガイドラインと事業承継マニュアルとの関係

事業承継マニュアル」は、事業承継ガイドラインの普及を進めるために中小企業庁が作成しました。事業承継ガイドラインから派生したものですので、内容自体はほぼ同じになります。

ただ、事業承継計画の立て方をはじめとして、後継者の育て方、経営権の分散を防止する方法や節税対策、資金調達方法などについて、よりわかりやすい言葉で、図表や絵を多く用いてまとめられています。

正式なガイドラインよりも、まずこちらから読まれるのも良いのではないかと思います。

【出典サイト】「事業承継マニュアル」を公表します|中小企業庁

1-4.事業承継ガイドライン2020答とは

事業承継ガイドラインは、白黒印刷で専門用語が並び、どうしても堅苦しくなりがちです。理解しにくい方も多いのではないかと思います。

そこで中小企業庁は、事業承継ガイドラインの内容をわかりやすく理解できるように、事業承継マニュアルの他に事業承継ハンドブックと題して、「事業承継ガイドライン2020」という冊子を作成しています。

事業承継ガイドラインを基に、11答形式により構成されています。さらにカラーページで、内容についても漫画を利用しているなど噛み砕いた記載となっていますので、取っ付き難いイメージが払拭されるかと思います。

【出典サイト】事業承継ガイドライン 2020|中小企業庁

2. 事業承継ガイドラインの概要

ガイドラインは100ページ弱にもなる内容となっていますので、それぞれの章でどのようなことが記載されているか要約させていただきたいと思います。

2-1.第一章 事業承継の重要性

日本の中小企業の事業承継に関する危機感や重要性が、具体的なデータに基づいて解説されています。

計画的な取組による事業承継の成功事例」も記載されていますので、事業承継について漠然とした不安を抱えていらっしゃる方にとって、計画を始める良いきっかけになるのではないかと思います。

2-2.第二章 事業承継に向けた準備の進め方

ここでは事業承継を5つのステップに分けて解説しています。ひと通りお読みいただき、次に自社を当てはめてお読みいただくと良いかと思います。

ステップ1~3は事業承継前の準備段階ではありますが3段階も割いており、事業承継前に会社の状況を具体的に把握しておくこと、事業の性質にあった計画をすることが重要であることが分かります。

ステップ4では、社内のみで解決する事業承継ステップ4-1)なのか、他社への事業承継ステップ4-2)なのかで変わります。

ステップ1. 事業承継に向けた準備の必要性の認識

ステップ2.経営状況・経営課題等の把握(見える化)

ステップ3.事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)

ステップ4-1.事業承継計画の策定(親族内・従業員承継の場合)

ステップ4-2.M&A等のマッチング実施(社外への引継ぎの場合)

ステップ5.事業承継の実行

【出典】「事業承継ガイドライン」P.20「第二章 事業承継に向けた準備の進め方1.事業承継に向けた準備について 」より|中小企業庁

2-3.第三章 事業承継の類型ごとの課題と対応策

ここでは事業承継を以下の3つの類型に分けて課題と対応策を紹介しています。

  • 親族内での承継
  • 従業員への承継
  • 社外への承継(M&A)

事業承継には税金が必ず絡んできますので、贈与税や相続税、事業承継税制の活用などまで記載されています。

2-4.第四章 事業承継の円滑化に資する手法

ここでは事業承継を円滑に進めるための手法として、以下3つの活用を紹介しています。

  • 種類株式
  • 信託
  • 生命保険

種類株式とは、会社は複数の種類の株式を発行することができます。一般的に「株式」と呼ばれるものは普通株式のことをいいます。

種類株式の活用方法

種類株式の活用とは例えば、後継者には普通株式を、その他の相続人には議決権制限株式を相続させることによって、遺留分減殺請求によって議決権が分散してしまうリスクを抑えることができます。

信託の活用方法

信託の活用とは経営者の自己株式の管理権限を持つ受託者を後継者とするなどが挙げられます。

生命保険の活用方法

生命保険の活用とは生命保険金の受取人を後継者とすることで、相続税の非課税制度の適用を受けつつ、納税資金の準備をすることなどが挙げられます。

2-5.第五章 個人事業主の事業承継

ここでは個人事業主の事業承継を紹介しています。

個人事業主であっても会社形態と同様の課題を抱えていますが、経営者自らの名で取引先や顧客との契約関係を持ち、事業用資産を所有している点が会社形態とは大きく異なる点です。

形式的には先代の経営者が廃業届を提出し、後継者が開業届を提出することで事業承継となるのですが、事業用資産などは相続や贈与といった問題となりますので贈与・相続対策などが重要になります。

また、後継者不在の個人事業主のために、「後継者人材バンク」の利用による第三者への承継支援についても記載されています。

2-6.第六章 中小企業の事業承継をサポートする仕組み

事業承継はこのガイドラインを読んだからといって、経営者1人でできるものではありません。

ここでは、事業承継をサポートする商工会議所や商工会の経営指導員、金融機関、税理士、弁護士、公認会計士、事業引継ぎ支援センターなど様々な機関の紹介が記載されています。連絡先もそれぞれ記載されていますので、是非ご活用ください。

【出典】「事業承継ガイドライン」P.79 「第六章 中小企業の事業承継をサポートする仕組み1.中小企業を取り巻く事業承継支援体制 」より|中小企業庁

2-7.おわりに

最終章として、91~94ページには事業承継診断票や事業承継計画表などの様式が載っています。

事業承継についてご自身がどのような状況にあるかの現状把握や危機感、進捗具合などについて確認することができますので、適宜ご利用されると良いかと思います。

3.事業承継ガイドラインの活用方法

事業承継ガイドラインは、中小企業にとって事業承継を円滑に進めるうえで役に立つ指針です。

事業承継を行うにあたっての必要な考え方や、情報が網羅的にまとめられていますので、「事業承継どうしよう」、「事業承継って何をしたら良いの?」など、事業承継を検討し始めた方がまず読まれる資料として最適なのではないかと思います。

すべてを細かく読むのは大変ですし混乱を招いてしまう可能性がありますので、「事業承継マニュアル」や、「事業承継ガイドライン2020答」も併用されますと、より理解が深まるかと思います。

中小企業庁が力を入れている分野ですので、サポート機関も複数あります。積極的に利用してください。

まとめ

事業承継ガイドラインは、これから事業承継を検討される方には是非読んでいただきたい資料です。

「読んでもよく分からない」、「自社の場合には何をしたら良いのか」、「そもそも事業承継が必要なのか」など、事業承継についてお悩みがございます場合には、是非、専門家にご相談いただければと思います。

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「あんしん相続」には、ご家族の協力、連携はもちろんですが、専門家のサポートも必要になってきます。

例えば、上記のような場合以外にも、下記のように税理士・弁護士・司法書士を含めた総合的なアドバイスが必要になるケースが少なくありません。

  • 後継者について悩んでいる
  • 事業承継について相談できる相手がいない
  • 何から手を付ければいいのかわからない
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弊所では税理士・社会保険労務士・行政書士・弁護士でUグループを形成しており、ワンストップで相続手続き全般についてご相談いただけます。

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