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事業承継ガイドラインをわかりやすく読み解く

中小企業の事業承継が円滑に行われるように、中小企業庁は「事業承継ガイドライン」を策定しています。

今回はこの事業承継ガイドラインについて、ポイントを押さえながらわかりやすく徹底的に解説させていただきたいと思います。

1.事業承継ガイドラインとは

事業承継ガイドライン」とは、事業承継の方法や対策などの基本を網羅して作成された説明書です。

このガイドラインに基づいて進めていくことにより、事業承継の円滑化が図れます。

1-1.事業承継の円滑化・中小企業の活性化を狙い中小企業庁が策定

中小企業が持つ技術やノウハウが今後も長く続くように、事業承継は円滑に行われなければなりません。

その一助となるように、国内における中小企業の育成や発展に関する事務などを所管する経済産業省の外局である中小企業庁が2006年に「事業承継ガイドライン」を策定しました。

事業承継について生じた変化や、新たに認識された課題と対応策等を反映するために2016年と2022年の2度にわたり改訂されており、現在の事業承継ガイドラインは第3版にあたります。

【出典サイト】「事業承継ガイドラインを改訂しました」|経済産業省

1-2.策定された背景

日本企業に占める中小企業の割合は約99%となっており、経済を支えています。また、中小企業で働いている人の割合も70%程度と、地域雇用の重要な受け皿となっています。

しかし、少子化高齢化や、職業選択の自由などから、事業承継がうまくいかずに廃業の道をたどってしまう中小企業は少なくありません。

中小企業の事業承継が円滑に行われないことは、国にとっても大きなダメージとなります。

また、次世代を担う後継者への事業承継によって、その企業の更なる発展が期待でき、国の利益となります。

1-3.事業承継ガイドラインと事業承継マニュアルとの関係

同じく中小企業庁が策定した「事業承継マニュアル」は、事業承継ガイドラインから派生したもので、内容自体は事業承継ガイドラインとほぼ同じです。

事業承継計画の立て方をはじめとして、後継者の育て方、経営権の分散を防止する方法や節税対策、資金調達方法などについて、図表や絵を多用しながら、よりわかりやすい言葉でまとめられています。事業承継マニュアル

【出典サイト】「事業承継マニュアル」を公表します」|中小企業庁

1-4.事業承継ガイドライン2626答とは

事業承継ガイドラインは、モノクロで専門用語が並び、どうしても堅苦しく、理解しにくい方も多いのではないかと思います。

そこで中小企業庁は、事業承継ガイドラインの内容をわかりやすく理解できるように、事業承継マニュアルの他に「事業承継ハンドブック20問20答」を作成しています。

事業承継ハンドブックは、カラーページで構成され、内容についても漫画を利用しているなど噛み砕いた記載となっており、事業承継ガイドラインの取っ付き難いイメージが払拭されるかと思います。

事業承継ハンドブックは、その後、2009年に事業承継ハンドブック2626」として改訂されています。

【出典サイト】「中小企業事業承継ハンドブック 26問26答 平成21年度税制改正対応版」|中小企業庁

2. 事業承継ガイドラインの概要

事業承継ガイドライン(第3版)は100ページ以上から構成されているため、それぞれの章でどのようなことが記載されているのか要約させていただきたます。

2-1.第一章 事業承継の重要性

経営者の高齢化や、後継者確保の難しさなど現状分析や、事業承継への早期取り組みの重要性などが、具体的なデータに基づいて解説されており、事業承継の類型についても触れています。

計画的な取組による事業承継の成功事例失敗事例も記載されており、事業承継について漠然とした不安を抱えていらっしゃる方にとって、計画を始める良いきっかけになるのではないかと思います。

2-2.第二章 事業承継に向けた準備の進め方

ここでは事業承継を5つのステップに分けて解説しています。ひと通りお読みいただき、次に自社を当てはめてお読みいただくと良いかと思います。

事業承継前の準備段階としてステップ1~3まで3段階も割いており、事業承継前に会社の状況を具体的に把握しておくこと、事業の性質にあった計画をすることが重要であることが分かります。

ステップ4は、社内のみで解決する事業承継ステップ4-1)か、他社への事業承継ステップ4-2)なのかで実施すべき内容が変わります。

ステップ1. 事業承継に向けた準備の必要性の認識

ステップ2.経営状況・経営課題等の把握(見える化)

ステップ3.事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)

ステップ4-1.事業承継計画の策定(親族内・従業員承継の場合)

ステップ4-2.M&A等のマッチング実施(社外への引継ぎの場合)

ステップ5.事業承継の実行

【出典】「事業承継ガイドライン」P.31「第二章 事業承継に向けた準備の進め方1.事業承継に向けた準備について 」より|中小企業庁

2-3.第三章 事業承継の類型ごとの課題と対応策

ここでは事業承継を以下3つの類型に分けて課題と対応策を紹介しています。

  • 親族内での承継
  • 従業員への承継
  • 社外への承継(M&A)

事業承継には必ず税金が絡むため、贈与税や相続税、事業承継税制の活用なども記載されています。

2-4.第四章 事業承継の円滑化に資する手法

ここでは事業承継を円滑に進めるための手法として、以下3つの活用を紹介しています。

  • 種類株式
  • 信託
  • 生命保険

種類株式とは、会社は複数の種類の株式を発行することができます。一般的に「株式」と呼ばれるものは普通株式のことをいいます。

種類株式の活用方法

種類株式の活用とは例えば、後継者には普通株式を、その他の相続人には議決権制限株式を相続させることによって、遺留分減殺請求によって議決権が分散してしまうリスクを抑えることができます。

信託の活用方法

信託の活用には、経営者の自己株式の管理権限を持つ受託者を後継者とするなどが挙げられます。

生命保険の活用方法

生命保険の活用とは生命保険金の受取人を後継者とすることで、相続税の非課税制度の適用を受けつつ、納税資金の準備をすることなどが挙げられます。

持株会社の活用方法

持株会社の活用とは、後継者が持株会社を設立し、実際に事業を展開する事業会社から返済に充てる配当を担保に金融機関から融資を受けて、先代経営者から株式を買い取ることで、現経営者が現金を得る方法です。

また、現経営者の相続が発生しても、事業会社の株式を一括して買い取ることで、株式が分散するリスクを回避できます。

2-5.第五章 個人事業主の事業承継

ここでは個人事業主の事業承継を紹介しています。

個人事業主も会社形態と同様の課題を抱えていますが、経営者自らの名で取引先や顧客と契約をし、事業用資産を所有している点が会社形態とは大きく異なります。

形式的には先代の経営者が廃業届を提出し、後継者が開業届を提出することで事業承継となりますが、事業用資産などは相続や贈与により後継者に移転することになり、贈与税や相続税対策が重要になります。

また、後継者不在の個人事業主のために、「後継者人材バンク」の利用による第三者への承継支援についても記載されています。

2-6.第六章 中小企業の事業承継をサポートする仕組み

このガイドラインを読んだだけでは、事業承継を経営者1人でできるものではありません。

ここでは、事業承継をサポートする商工会議所や商工会の経営指導員、金融機関、税理士、弁護士、公認会計士、事業引継ぎ支援センターなど様々な機関の紹介が記載されています。

連絡先もそれぞれ記載されていますので、是非ご活用ください。

【出典】「事業承継ガイドライン」P.120 「第六章 中小企業の事業承継をサポートする仕組み1.中小企業を取り巻く事業承継支援体制 」より|中小企業庁

2-7.おわりに

最終章には、事業承継診断票や事業承継計画表などの様式が載っています。

事業承継についてご自身がどのような状況にあるかの現状把握や危機感、進捗具合などについて確認することができ、適宜ご利用することができます。

3.事業承継ガイドラインの活用方法

事業承継ガイドラインは、中小企業にとって事業承継を円滑に進めるうえで役に立つ指針です。

事業承継についての考え方や、情報が網羅的にまとめられており、「事業承継って何をしたら良いの?」など、事業承継を検討し始めた方がお読みになる最適な資料です。

「事業承継マニュアル」や、「事業承継ガイドライン2626答」も併読することで、より理解が深まるかと思います。

「事業承継ガイドラインを読んでもよく分からない」、「自社の場合には何をしたら良いのか」、「そもそも事業承継が必要なのか」など、事業承継についてお悩み方は、是非、実績のある当事務所にご相談いただければと思います。

事業承継サポート

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事業承継においては、上記のような場合以外にも、下記のように税理士・弁護士・司法書士を含めた総合的なアドバイスが必要になるケースが少なくありません。

  • 後継者について悩んでいる
  • 事業承継について相談できる相手がいない
  • 何から手を付ければいいのかわからない
  • 税金対策もしっかりと考えたい
    など

弊所では税理士・社会保険労務士・行政書士・弁護士でUグループを形成しており、ワンストップで相続手続き全般についてご相談いただけます。

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