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賃貸アパート経営が相続税対策になる理由とメリット・デメリット

相続税対策を検討されている方の中には「賃貸アパートを経営することで相続税が節税できる」ことを耳にした方も多いのではないでしょうか。

賃貸アパートを建設すると相続財産全体としての評価額が下がるほか、特例を上手く活用することができるようになるなど、相続税の節税に効果的です。しかし、賃貸アパートの建設には多額の資金が必要になるため、なかなか実行に移すことが難しいという側面もあります。

ここでは「賃貸アパート経営が相続税対策になる理由とメリット・デメリット」について詳しく解説します。

1.賃貸アパート経営が相続税対策になる4つの理由

賃貸アパートが相続税対策になると言われている理由は4つあります。具体的に節税要素を見ていきましょう。

1-1.資産の組み換えによる節税

自己資金により賃貸アパートを建設する場合、保有している現預金が減少し、賃貸アパートという資産が増加することになります。つまり、現預金から賃貸アパートに資産が組み換えられた状態です。

不動産の相続税評価額は市場価格の78割ほどで計算されることが多く、現預金で保有しているよりも不動産で保有している方が相続税の節税に繋がります。

例えば、現預金2億円を保有している場合は、その2億円が相続税の課税対象になりますが、2億円で賃貸アパートを建設した場合は、評価額は7割~8割となり14,000万円~16,000万円が相続税の課税対象になります。

1-2.土地の減額要素を利用できる

アパートを建設した土地は「貸家建付地」に該当することになり、次の通り、自用地評価額から借地権割合と借家権割合、賃貸割合を乗じた金額を差し引くことができ、通常の土地(自用地)の評価額よりも低く評価額を算出することができます。

貸家建付地の価額=自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合

  • 借地権割合:場所によって60%70
  • 借家権割合:一律30
  • 賃貸割合:賃貸されている床面積÷総床面積(満室の場合は100%)

建物についても、次の通り貸家として評価され、通常の固定資産税評価額より低く抑えることができます

貸家の相続税評価額=建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

1-3.金融機関から融資を受けている場合は債務控除できる

金融機関からアパートの建設費の融資を受けていると、相続が発生した時点の残高を債務として相続財産から控除することができます。

相続税の計算では、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いて計算を行うため、債務控除ができる借入金があると金利の負担は発生しますが、相続税の節税につながります。

1-4.小規模宅地等の特例を有効に活用できる

アパートの土地は小規模宅地等の特例を利用することができ、面積200㎡までの評価額を50%減額することができます。

自宅の土地であれば330㎡までの評価額を80%減額できるため、アパートで適用するよりも有利になりますが、自宅の土地で特例を利用できない場合はアパートの土地で特例を受けることができます。

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2.賃貸アパートによる相続税対策のメリット・デメリット

賃貸アパートによる相続税対策には次のようなメリット・デメリットがあります。

2-1.メリット

相続税を抑えることができる

相続財産全体の評価額を少なくすることで、相続税額を抑えることができます。

新たに家賃収入を得ることができるようになる

現預金のまま保有している場合は、ほんの少しの利息しかつきませんが、アパート経営を行うことで収入の柱を作ることができます。

減価償却費を計上できるため、多額の所得税が発生することはない

家賃収入から費用、建物の減価償却費を差し引いた所得が所得税の課税対象になります。

収益物件を相続すると相続人の生活が安定する

アパートを相続した相続人が収益を得ることができるため、家賃収入により相続人の生活が安定します。

2-2.デメリット

空室になるリスクがある

空室が増えると家賃収入の減少の他に、相続税評価額での賃貸割合が少なくなるため、評価額がそれほど減額されません。

相続人の間でトラブルが発生するおそれがある

相続人が複数いる場合、誰がアパートを相続するのかでトラブルになるおそれがあります。複数人で共有分割を行った場合には、アパートの修繕や売却が難しくなる可能性があるため、慎重な遺産分割協議が必要になります。

アパート経営には様々な費用の負担がある

アパート経営には、初期費用や管理会社に支払う管理費、固定資産税などの負担が発生します。空室が増えると、これらの費用を家賃収入で賄うことができず、資金繰りが厳しくなってしまうこともあります。

アパートの土地の売却が難しくなる

入居者がいると、アパートの土地は簡単に売却することができなくなります。入居者との立ち退き交渉が必要になり、時間と手間がかかってしまいます。

年々アパートの価値が下落する

賃貸物件だけでなく建物全てに言えることですが、築年数が増えるごとに建物の価値は下がります。アパートの売却を視野に入れている場合は、売却するタイミングも考慮する必要があります。

3.賃貸アパート経営による相続税の節税効果

賃貸アパート経営を行うことで相続税を節税することができます。子供2人が相続人となり、遺産2億円を現金で受け取った場合と、賃貸アパートを建設して受け取った場合とで、実際にどれくらい相続税を抑えることができるのかシミュレーションしてみましょう。

3-1.2億円を現金として相続した場合の相続税総額

事例1.

  • 遺産総額:現金2億円
  • 相続人:子供2人

    課税遺産総額:現金2億円-基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人2人)=15,800万円

    相続人1人の仮の相続税額:15,800万円×法定相続分1/2)×税率30%-700万円=1,670万円

    相続税の総額:1,670万円×相続人2人=3,340万円

    3-2.2億円で建設した賃貸アパートを相続した場合の相続税総額

    事例2.
    被相続人が、現金2億円で1億2,000万円の土地を購入し、8,000万円で賃貸アパートを建設。

    • 相続人:子供2人
    • 賃貸アパートの自用地評価額:時価の80%
    • 建物の固定資産税評価額:時価の60%
    • 借地権割合:50%
    • 借家権割合:30%
    • 賃貸割合:100%(満室)

    土地の評価額12,000万円×80%=9,600万円
    貸家建付地の評価額:9,600万円×(150%×30%×100%)=8,160万円

    建物の評価額8,000万円×60%=4,800万円
    貸家の評価額:4,800万円×(130×100%)=3,360万円

    貸家建付地と貸家の評価合計額:土地8,160万円+建物3,360万円=1億1,520万円

    課税遺産総額11,520万円-基礎控除4,200万円=7,320万円

    相続人1人当たりの仮の相続税額:(7,320万円×法定相続分1/2×税率20%-200万円=532万円

    相続税の総額:532万円×相続人2人=1,064万円

    上記の例では、現預金で2億円を保有している場合の相続税額3,340万円に対し、2億円で賃貸アパートを経営した場合の相続税額は1,064万円になり、相続税総額を1/3以下に抑える結果となりました。

    他に財産がある場合やアパートの土地で小規模宅地等の特例を利用した場合など、状況によって異なる結果になりますが、現金として相続財産を保有するよりも賃貸アパートとして相続財産を保有した方が相続税を抑えることが可能です。

    4.賃貸アパート経営による相続税対策の注意点

    賃貸アパート経営による相続税対策をする場合には、次の点に注意し、慎重に進めていく必要があります。

    • 被相続人が認知症になった場合に備えて、家族信託などの対策を行う
    • 遺産分割トラブルを避けるため、生前からの話し合い、遺言書の作成などを行う
    • 赤字の物件は相続人が相続したがらないため、優良物件になるように利回りを意識する
    • 債務を引き継がせなくていいように、なるべく自己資金でアパート経営を行う(土地の購入は自己資金で行う)
    • 融資を受ける場合の借入期間は、アパートの耐用年数以内にする
    • 賃貸事業を法人化することも検討する

    5.賃貸物件による相続税対策は当事務所へご相談を

    相続財産に多額の現預金がある場合は、賃貸アパートを建設し、資産の組み換えを行うことで相続税の節税を行うことが可能です。ただし、経験やノウハウがないまま賃貸アパート経営を行うと、赤字経営になってしまい、残すはずの財産を減らしてしまうリスクもあります。

    賃貸アパート経営による相続税対策は、簡単にできるものではありません。専門家と相談しながら、シミュレーションを行い、最善の相続税対策になるように検討してみましょう。

    当事務所には、賃貸物件経営による相続税対策のシミュレーションもお任せいただけます。ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

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