目次
マル経融資には、このような特徴があります。
- 低金利で最大2,000万円までの融資が受けられる
- 保証人・担保は不要
- 商工会議所からの支援を受けられる
すでに、商工会議所の会員である方は、他の融資制度に比べて有利にお金を借りることができますので、検討されてみてください。
1.マル経融資とは?
マル経融資とは「小規模事業者経営改善資金」の略称になります。略称の「マル」に特別な意味はなく「○+経」と表すため「マル経融資」と言われています。
マル経融資は、商工会議所や商工会の協力により実行される日本政策金融公庫の融資制度です。融資限度額、利率、保証人・担保の面で他の融資に比べ有利な条件で融資を得ることができます。
1-1.マル経融資(小規模事業者経営改善資金)の概要
資金の使途 | 運転資金 | 設備資金 |
---|---|---|
融資限度額 | 2,000万円 | |
返済期間 | 7年以内 (うち据え置き期間は1年以内) |
10年以内 (うち据え置き期間は2年以内) |
利率 | 1.21%(令和3年8月現在) | |
保証人・担保 | 保証人・担保は不要(信用保証協会の保証も不要) |
1-2.融資の対象者
マル経融資は次の要件を全て満たす場合に対象になります。
- 従業員20人以下(宿泊業と娯楽業を除く商業・サービス業は5人以下)の法人・個人事業主であること
- 商工会議所の経営・金融指導を受けて事業改善に取り組んでいること
- 最近1年以上、同一会議所の地区内で事業を行っていること
- 商工業者であり、日本政策金融公庫の融資対象業種を営んでいること
- 税金(所得税、法人税、事業税、住民税)を完納していること
マル経融資は、商工会議所を介して行われる融資になります。融資を申し込む場合は、まず「商工会への加入」が前提になります。
同一会議所の地区内で1年以上事業を行ったうえで商工会議所へ経営相談を申し込みます。そして、経営・金融指導を受けて事業改善に取り組み、商工会議所からの推薦を受けることではじめてマル経融資の申し込みが可能になります。
1-3.新型コロナウイルス感染症による拡充措置
マル経融資は、新型コロナウイルス感染症による影響を受けた小規模事業者に別枠で1,000万円の拡充措置を行っています。
資金の使途 | 運転資金 | 設備資金 |
---|---|---|
融資限度額 | 1,000万円(マル経融資と別枠) | |
返済期間 | 7年以内 (うち据え置き期間は3年以内) |
10年以内 (うち据え置き期間は4年以内) |
利率 | マル経融資の利率より、当初3年間0.9%引下げ ※0.31%(令和3年8月現在) |
|
保証人・担保 | 保証人・担保は不要(信用保証協会の保証も不要) |
※中小企業基盤整備機構が実施している特別利子補給制度を受けることにより、3年間分の利子相当額を後日受け取ることができるため、当初3年間は実質的に無利子で利用できます。小規模事業者のうち、法人には特別利子補給制度を受けるための要件があります。
拡充措置の対象者
新型コロナウイルス感染症による拡充措置の対象になる小規模事業者は、マル経融資の対象になる条件にさらに次の要件が加えられます。
- 最近1か月等の売上高(注)または過去6か月(最近1か月を含む)の平均売上高が前3年のいずれかの年の同期と比較して5%以上減少、またはこれと同様の状況にある小規模事業者
※新型コロナウイルス感染症特別貸付等と重複して利用する場合は、金利の引き下げに限度があります。
1-4.災害による拡充措置
新型コロナウイルス感染症以外にも、日本が大規模な災害に見舞われた時にマル経融資は拡充されます。例えば「令和2年7月豪雨」「令和元年台風第19号」「東日本大震災」などの大規模な災害が発生した際に、一般のマル経融資とは別枠で融資を受けることができます。
2.マル経融資のメリット&デメリット
マル経融資は、一般的な金融機関からの融資と比べ大きなメリットと様々な注意点があります。
2-1.マル経融資のメリット
メリット①低金利で最大2,000万円までの融資が受けられる
マル経融資の利率は1.21%(令和3年8月現在)になっており、金融機関の融資と比べて低金利です。金利分の返済負担が抑えることができ、最大で2,000万円までの融資が受けられます。
メリット②担保・保証人が不要
マル経融資は、商工会議所の推薦を受けているため担保・保証人が必要ありません。担保である不動産の根抵当権の登記費用や信用保証協会の保証料などが必要ないため、費用負担面でも有利です。
メリット③商工会議所からの支援を受けられる
マル経融資の申し込み条件の1つに「商工会議所の経営・金融指導を受けて事業改善に取り組んでいること」があります。そのため、マル経融資を利用するためには商工会議所からの支援を受けることになります。商工会議所の経営相談員から経営についてのアドバイスを得ることもメリットになるのではないでしょうか。
2-2.マル経融資のデメリット
デメリット①設立後しばらくしてからでないと利用できない
マル経融資を申し込むには「最近1年以上、同一会議所の地区内で事業を行っていること」が必要です。つまり、創業資金としてマル経融資を利用することはできず、一定期間の経営実績が必要になります。
デメリット②融資実行までに時間がかかる
マル経融資の利用を思い立ってから融資が実行されるまでに長い期間が必要になります。商工会議所に経営相談を申し込み、実際にアドバイスに沿った事業改善を行わなければなりません。そして、商工会議所の推薦を得て、晴れてマル経融資の申し込みとなります。緊急に資金が必要になる場合には、他に融資の実行が早い制度を利用した方がいいでしょう。
デメリット③商工会の加入が必要
申し込み要件である「商工会議所への経営相談」を依頼する場合に、商工会議所の会員にならなければ経営相談を受けられない場合があります。商工会議所の会員になると年会費などの支払いが発生しますので、事前に確認しておきましょう。
デメリット④審査が多い
マル経融資は金融機関の融資審査より審査回数が多くなります。なぜなら、商工会議所から推薦を受ける際に商工会議所からの審査があり、それを通過すると今度は日本政策金融公庫からの審査があります。審査を通過できるように、あらかじめ経営状況の見直しや返済計画を提出できるようにしておくといいでしょう。
3.申請手続きの流れと必要書類
3-1.申請手続きの流れ
マル経融資の申請手続きは、商工会議所が関わってくるため一般的な融資と手続きの流れが異なります。
①商工会議所へ相談する
事業を行っている地方自治体の商工会議所に連絡し、マル経融資を申し込みたい旨を伝えます。地方によっては電話やメールで受付を行っている商工会議所もありますので、ホームページなどで事前に確認するといいでしょう。申し込み後は、担当者からマル経融資に必要な「経営・金融指導」についての説明を受けることになります。
②商工会議所から「経営・金融指導」を受ける
相談した商工会議所の経営指導員より経営・金融指導が行われます。手続きや必要になる書類等は各商工会議所で異なりますので、経営指導員の指示に従いましょう。一般的には6か月間が指導期間になります。
③商工会議所から推薦を受ける
「経営・金融指導」が終わり、マル経融資申し込み要件を満たすと、商工会議所では日本政策金融公庫へ推薦していい状況なのかを審査する「マル経審査」が行われます。この審査を通過することで晴れて日本政策金融公庫へ申し込みすることができます。
④日本政策金融公庫の審査
商工会議所から推薦を受けると、次は日本政策金融公庫の審査に移ります。商工会議所からの推薦を受けても必ず審査を通過するわけではなく、直近の残高試算表などをもとに審査が行われます。
手続き⑤融資の決定・振込
日本政策金融公庫の審査を通過すると融資が決定します。融資が決定すると指定した銀行口座に振り込まれます。返済が始まった後についても、商工会議所によっては経営指導員による融資後フォローアップが行われます。
3-2.必要書類
マル経融資の必要書類は、申し込まれる方が法人なのか個人なのかによって異なります。
法人の場合 | 個人の場合 |
---|---|
・前期・前々期の決算書および確定申告書 ・決算後6ヶ月以上経過の場合は最近の残高試算表 ・法人税・事業税・法人住民税の領収書または納税証明書 ・商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書) ・見積書・カタログ等(設備資金の申込みの場合) |
・前年・前々年の決算書(または収支内訳書)および確定申告書 ・所得税・事業税・住民税の領収書または納税証明書 ・見積書・カタログ等(設備資金の申込みの場合) |
※新規に申し込む不動産を保有する方は、不動産謄本(全部事項証明書)が必要になる場合があります。
※必要書類は各商工会議所によって異なることがありますので、申し込みを行われる商工会議所にお尋ねください。
4.マル経融資を申し込む際の注意点
マル経融資を申し込む際には以下の点を注意しましょう。
注意点①事業計画書が必要になる場合がある
商工会議所によっては必要書類に加えて「事業計画書」の提出が必要になります。例えば、東京商工会議所では、1,500万円以上のマル経融資を申し込む場合には「事業計画書」の提出が必要になります。その他、事業概要申告書や事業計画進捗報告書、収支等の状況書を経営指導員などの依頼により、必要に応じて提出が求められます。
注意点②借り換えに利用できない
マル経融資の利用目的は「運転資金または設備資金」に限られています。そのため、現在ある債務の返済に充てるために利用することはできません。
注意点③経営・金融指導が必須
マル経融資を受けるためには商工会議所の経営・金融指導を受けることが必須です。経営・金融指導には一般的に6か月間必要になりますので、長期的な融資計画を立てる必要があります。
注意点④審査を有利に進めるには必要書類以外の書類も必要
商工会議所の推薦の審査、日本政策金融公庫の審査を有利に進めるためには必要書類以外の書類の提出も検討しましょう。具体的には、毎月の返済計画書を作成するといいでしょう。返済計画書は資金繰り表をもとに作成します。毎月の予想される収入と支出を2~3年分作成し、確実に返済することができることをアピールすると審査担当者に好印象を与えます。
まとめ
今回は「マル経融資の概要」についてご紹介しました。
マル経融資は低金利、保証人・担保不要で最大2,000万円まで融資を受けることができる、中小企業や個人事業者にとって魅力的な制度です。
ただし、商工会議所からの経営・金融指導を受け、推薦してもらわなければ申し込むことができません。
当会計事務所では、マル経融資のご相談を承っております。お気軽にご相談ください。