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銀行は決算書のどこを見る?融資審査に通るためのポイント

決算書

銀行などの金融機関から融資を受ける際に、いくつかの資料を提出しますが、最も重要な提出資料は「決算書」です。これで、融資審査のほとんどが決まるといっても過言ではありません。

融資審査において、銀行は決算書のどこを見るのか? 主なポイントに絞ってわかりやすく解説します。

1.銀行が見る決算書

会社が融資を申し込む際、銀行などの金融機関から必ず「決算書」の提出を要求されます。決算書を提出しなければ融資を受けることはできないため、銀行への決算書の開示は必ず必要です。

1-1.決算書が求められる理由

銀行が融資を行う際、融資先の「返済能力」を見極めなければなりません。融資した資金が回収できなければ銀行の損失になってしまうため、決算書を見て返済能力を判断することは銀行の重要業務の1つです。

1-2.提出する決算書の範囲

新たに取引を行う会社に対して銀行が求める決算書の範囲は「過去3期分」が一般的です。直近1期分だけではなく、過去の決算書を見ることで業績の傾向や決算書における勘定科目の金額の増減を知ることができ、様々な指標を使って財務分析を行うことが可能になります。

銀行から提出を求められる決算書の範囲は、決算書だけでなく、勘定科目内訳書などもセットで求められます。

【提出が求められる帳票】

  • 決算書(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)
  • 勘定科目内訳書
  • キャッシュ・フロー計算書
  • 税務申告書類一式

決算書、勘定科目内訳書、税務申告書類一式については、法人税申告時に作成しているため、容易に準備することができます。銀行によってはキャッシュ・フロー計算書の提出を求められますが、中小企業では、キャッシュ・フロー計算書の作成は義務化されていないため、別途作成する必要があります。

2.銀行は貸借対照表のここを見る

銀行は貸借対照表損益計算書を分析して安全性や収益性を見極めるため、決算書の中でもこの2つの帳票は最も重要なものになります。

貸借対照表は、会社の財務状況を表す帳票であり、会社を設立してから決算時点まで、どのような資産を築き、資産を築くための資金調達をどのように行ったのかを示しています。決算書の中でも始めにある帳票であり、銀行が最初に目にする帳票でもあります。

銀行が貸借対照表を見て、何を分析するのかというと「会社の安定性と返済能力」です。判断基準となる重要な指標について見ていきましょう。

2-1.現預金がどのくらいあるか

会社が安定して事業を行っていくためには、十分な「支払い能力」が必要です。会社の支払い能力を測る指標には「手元流動性」があります。手元流動性とは、現金や預金などの流動性が高い資産のことを指し、1年以内に換金できる有価証券も含まれます。

手元流動性が十分にあるかどうかは、現金預金と1年以内に換金できる有価証券の合計額が月商の1か月分以上あるかどうかで判断します。なお、手元流動性には売掛金や未収入金が含まれず、純粋に会社が換金できる資金がどれくらいあるのかを表している指標です。会社が必要な資金を確保していれば、短期的な倒産の危険性は少なくなります。

手元流動性比率=
(現金+預金+1年以内に換金できる有価証券)÷月商
※会社の規模によるが1か月以上が目安

2-2.自己資本の割合

自己資本の割合とは、会社の資産のうち、会社のお金で賄っている部分と他人のお金で賄っている部分の割合のことを指します。会社のお金で賄っている部分のことを「自己資本」と言い、株主から調達した資金や事業により獲得した利益から構成されます。

一方、銀行から調達した資金や取引先への借入金など、いつかは返さなければならないお金で賄っている部分のことを「他人資本」と言います。

自己資本の割合が高ければ、資産に対しての負債が少なく、経営的に安定していると判断することができます。

自己資本比率=
純資産÷資産の合計×100
※業種によって異なるが40%以上が目安

自己資本比率がマイナスになる場合、すなわち、会社の負債が資産を上回っており債務超過になっている場合には、債務超過でなくなり自己資本比率がプラスになるまでの期間を表した「債務超過解消年数」という指標を利用します。債務超過解消年数の年数が長ければ倒産のリスクが高まるため、融資を受けることが難しくなります。

債務超過解消年数=
債務超過÷利益

2-3.借入金をどのくらいで返済できるか

会社が何年で借入金を返済することができるのか測るために「債務償還年数」という指標を利用します。債務償還年数に余裕がある場合は、銀行側としては「追加融資しても問題ない」と判断することができるため、融資が通りやすくなります。債務償還年数は返済できる能力を示す指標であり、実際に返済する期間ではありません。

債務償還年数=
借入金の残高÷(経常利益+減価償却費-法人税等)
※業種によって異なるが10年が目安

2-4.在庫は回転しているのか?

在庫を抱える業種の場合、在庫の回転サイクルの速さが重要です。特に卸売業の場合、在庫を抱えている間は会社の現金がその分減っている状態であるため、資金繰りが厳しくなります。在庫が回転していない場合は、資金繰りが厳しい期間が続くことになるため、経営も厳しくなります。

在庫回転率の計算=
年間売上高÷棚卸資産

2-5.急激に増減している勘定科目

銀行での融資審査では、おおむね3期分の貸借対照表を並べて急激に増減している勘定科目について質問される場合があります。例えば、売上高に比例せずに売掛金の残高や棚卸資産が異常に増減している場合には、その原因の説明が必要です。

2-6.事業と関係ない勘定科目

仮払金や貸付金など、直接事業と関係がない科目がある場合には、適切な範囲かどうか説明を求められる場合があります。貸付金が多い場合などは、融資した資金が事業に使われているのか疑われてしまいますので、合理的な理由を説明できるようにしておく必要があります。

2-7.実態に合わせて修正される

貸借対照表は財務状況を表すものですが、実態を正確に表しているものではありません。資産価値のないものや評価額が低いもの、費用処理すべきものが資産に計上されていたり、不良在庫・架空在庫、不良債権が計上されていたりする場合には、銀行側で実態に合わせた決算書の修正作業が行われることもあります。

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3.銀行は損益計算書のここを見る

損益計算書は、決められた事業期間内の利益を見ることができる「会社の成績表」です。銀行では、損益計算書を分析することで会社の「収益性」を見ており、収益性を判断するために次のポイントがチェックされます。

3-1.利益は発生しているか

最初のチェックポイントは「利益が発生しているかどうか」です。単純に黒字か赤字かを見ているのではなく、事業期間中にどれだけお金を生み出すことができたのかを重視しています。キャッシュ・フロー計算書を提出した場合は、お金の流れを簡単に把握することができますが、損益計算書だけでもおおまかな資金の流れを把握することができます。
銀行では、融資の返済原資が生み出されているかどうかについてしっかりとチェックされます。

3-2.売上に対して利益はどのくらいか?

会社の収益性の判断基準に「売上高利益率」があります。売上高に対してどれだけ利益を得ることができたのかを示す指標であり、前期と比較することで収益性が向上しているのかどうかを判断することができます。

3-3.減価償却費は正しく計上されているか

減価償却とは、固定資産を取得した場合に使用可能年数にわたって経費に計上する会計処理方法のことを言います。法人税法上、減価償却は必ず全額行わなければならないわけではなく、会社の任意で減価償却費を計上することができます。そのため、利益を出すために減価償却費を計上しないこともできます。銀行では、利益を正確に判断するために、適正な減価償却費の計上についてチェックされます。

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4.銀行は決算書だけでなく、社長の人柄も見る

「企業は人なり」という言葉もあるように、銀行は代表者である社長の人柄を見ています。融資面談を通して「どのような性格なのか」「どういった人間性なのか」「経歴、家族構成」「ギャンブルが好きではないか」など、信用に足る人かどうか判断されます。

人柄については、対策できるものではないため素直な気持ちで担当者と接し、事業に対する純粋な思いを伝えることができれば良い印象を与えることができるでしょう。

まとめ

銀行が見る決算書のポイントを説明しました。
これらのポイントを把握したうえで対策をし、銀行が見たときに良い状態の決算書を作成できるようになれば、銀行は貸したくなるのです。

当事務所は、認定経営革新等支援機関として、企業の財務力を強くすることに力を入れています。
また、決算書の見方や作成の仕方についても、各種のセミナーを行ったりして、支援しております。

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