【税制改正】生前贈与加算が7年に延長決定!今からできる対処法とは
2022年12月16日、2023年度(令和5年度)税制改正大綱が発表され、生前贈与加算が3年から7年に延長されること…[続きを読む]
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住宅取得等資金贈与の非課税制度を利用すると、贈与税を抑えて多額の住宅取得等資金を援助することができます。
令和6年度の税制改正により、この制度の適用期間が、令和8年(2026年)の12月31日まで延長されることが公表されています。
今回は、住宅取得等資金贈与の非課税制度について変更点も含めて詳しくご紹介いたします。
住宅取得等資金贈与の非課税制度は、両親や相続などの直系尊属が、住宅を新築・取得・増改築のために、18歳以上の成人の子や孫に金銭を贈与する際に、限度額までは贈与税を非課税にできる制度です。
非課税限度額は、最大で1,000万円となっています。仮に父や母から子供が年間1,000万円の暦年贈与を受けると、177万円もの贈与税がかかります。しかし、この制度を利用すると、住宅取得を目的に1,000万円の贈与を受けても、一定の要件を満たせば贈与税がかかりません。
非課税限度額は、省エネ等住宅が1,000万円、それ以外の住宅が500万円で、以下3つのうちいずれかの要件を満たせば、省エネ等住宅に該当します。
住宅の種類 | 省エネ等住宅の要件 | 非課税限度額 |
---|---|---|
省エネ等住宅 | 断熱等性能等級5以上かつ 一次エネルギー消費量等級6以上 |
1,000万円 |
耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上 又は 免振建築物 |
||
高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上 | ||
上記以外のの住宅 | 500万円 |
気を付けるべきは、今回の改正によって、新築住宅の省エネ性能が「断熱等性能等級4以上又は一次エネルギー消費量等級4以上」から、「断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上」に変更されている点です。
令和6年1月1日以後に贈与によって取得する住宅の贈与税について適用されます。
ただし、2023年12月31日までに建築確認を受けた住宅や、2024年6月30日までに建築された住宅であれば、「断熱等性能等級4以上又は一次エネルギー消費量等級4以上」でも非課税限度額が1,000万円となります。
つまり中古住宅では、以前の基準に適合していれば、1,000万円までの贈与には、贈与税が非課税になります。
改正前の非課税限度額を、ご紹介しておきましょう。
省エネ等住宅 | 一般の住宅 |
---|---|
1,000万円 | 500万円 |
前述の通り、省エネ等住宅についての要件は変更になっていますが、非課税限度額自体については、今回での改正でも変更ありません。
消費税が10%の住宅を取得した場合の非課税限度額
住宅の新築等に係る契約の締結日 | 省エネ等住宅 | 左記以外の住宅 |
---|---|---|
2019年(平成31年)4月1日 ~2020年(令和2年)3月31日 |
3,000万円 | 2,500万円 |
2020年(令和2年)4月1日 ~2021年(令和3年)12月31日 |
1,500万円 | 1,000万円 |
この期間は、住宅取得契約の締結時期によって条件が付されていました。
住宅取得等資金の非課税制度は、次の要件のすべてに該当する場合に適用を受けることができます。
贈与する側は、贈与を受ける側の直系尊属である必要があります。直系尊属とは、受贈者の両親や祖父母、曾祖父母になる関係です。
配偶者の父母など姻族から贈与を受けても、要件は満たしません。ただし、配偶者の父や母と養子縁組をしていれば直系尊属に該当し、適用対象です。
贈与を受けた年の翌年12月31日までに居住しなかった場合には、特例の適用を受けることができませんが、入居の見込みがあると判断されれば、最大で翌年12月31日まで居住開始を遅らせることも可能です。
また、既にこの制度の適用を受けた申告をしていると、修正申告が必要になります。
住宅についての要件は、新築や中古住宅などを購入した場合と、増改築をした場合に分かれます。
新築・中古住宅取得の場合
- 日本国内にある住宅用家屋であること
- 住宅用家屋の登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下であること
- 床面積の1/2以上が受贈者の居住用に使用されていること
- 取得した住宅が次のいずれかに該当していること
- 建築後誰にも使用されていない新築住宅
- 昭和57年1月1日以後に建築された中古住宅
- ❷以前に建築され、耐震基準に適合することが一定の書類によって証明された中古住宅
増改築等の場合
- 日本国内にある住宅用家屋であること
- 増改築後の住宅用家屋の登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下であること
- 床面積の1/2以上が受贈者の居住用に使用されていること
- 増改築等工事が行われる住宅用家屋が受贈者所有のものであり、かつ、居住している家屋に対して行われたものであることが、「確認済証の写し」、「検査済証の写し」又は「増改築等工事証明書」などの書類により証明されたものであること
- 増改築等にかかる費用が100万円以上であること
- 増改築等費用の1/2以上が、受贈者の居住用部分に使われていること
変更点は、省エネ性能についての以下要件1点のみです。
2024年以降 | 断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上 |
---|---|
改正前 | 断熱等性能等級4以上又は一次エネルギー消費量等級4以上 |
住宅取得等資金贈与の非課税制度の適用を受けるためには、どのような手続きが必要なのでしょうか。またその際に必要になる書類をご紹介いたします。
住宅取得等資金贈与の非課税の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、贈与税の申告書に次の必要書類を添付して税務署に提出しなければなりません。
制度の適用によって贈与税が非課税になっても、申告は必要です。申告がなければ適用を受けることができません。
この他にも贈与の内容に応じて、必要になる書類があります。税務署より連絡があった際には、速やかに提出してください。
住宅取得等資金贈与の非課税制度は、他の非課税制度と併用することができ、上手に組み合わせることで更なる節税に繋げることができます。
住宅取得等資金贈与の非課税制度は、暦年贈与や相続時精算課税制度との併用ができます。
住宅取得等資金贈与の非課税制度の適用を受けても贈与税がかかる場合には、検討されると良いと思います。ただし、暦年贈与と相続時精算課税制度は、受贈者ごとに選択し、変更することはできません。
暦年贈与には年間110万円の基礎控除額があり、これを住宅取得等資金贈与の非課税限度額と組み合わせることができます。
例えば、住宅取得等資金贈与の非課税限度額が1,000万円の場合に暦年贈与と組み合わせると1,110万円まで贈与税がかからなくなります。暦年贈与は通常の贈与方法であり適用を受けるための要件はなく、誰でも110万円の控除を受けることができます。
ただし税制改正で、相続開始前一定期間内の贈与の額を相続財産に加算して相続税を計算する生前贈与加算の期間が3年から7年に延長されたため、実質的には、相続税の増税となっています。
相続時精算課税制度には2,500万円の非課税枠があり、住宅取得等資金贈与の非課税限度額が1,000万円であれば、相続時精算課税制度と併用することで、3,500万円まで贈与税がかかりません。そのうえ、税制改正で、年間110万円の贈与税の基礎控除も追加されました。
相続時精算課税制度の適用要件は、60歳以上の直系血族(両親や祖父母など)から、成人の子や孫に対する贈与で、住宅取得等資金贈与の非課税制度の適用要件と似ており、ほとんどの場合で併用できるかと思います。
いずれを選択するか判断が難しい場合には、相続税に強い税理士に相談することをお勧めします。
住宅ローン控除は住宅ローンを組んで住宅を購入した場合に適用できる制度で、住宅ローンの年末残高と取得対価のいずれか少ないほうの金額の1%を所得税から控除できます。
住宅取得等資金の贈与を受けつつ住宅ローンも組んだ場合には、忘れずに適用を受けるようにしてください。
住宅を共有名義で取得する場合であっても、住宅取得等資金贈与の非課税制度は適用することができます。
一般的なのは夫婦で住宅を共有名義にするケースです。夫と妻がそれぞれ自分の親から資金援助を受けると、それぞれに住宅取得等資金贈与の非課税制度を適用することができ、仮に非課税限度額が最大1,000万円の住宅を取得する場合には、夫婦あわせて2,000万円までの贈与を非課税で行えるのです。
ただし、留意すべき点もありますのでご紹介いたします。
住宅取得等資金贈与の非課税制度を受けられるのは直系尊属からの贈与に限ります。
義理の親や祖父母から贈与を受けた資金については、適用の対象外になります。妻の親が贈与をする際には、夫ではなく妻が受贈者になると制度の適用が可能です。
不動産を共有名義で登記するには、持ち分割合も決めなければなりません。
「夫婦だから1/2ずつ」と安易な決め方をしてしまうと、資金負担が多いほうから少ないほうへの贈与があったとみなされて、贈与税が発生する恐れがあります。
割合は、「自己資金 + 贈与を受けた金額 + 住宅ローン」で夫婦それぞれが負担した資金の割合で決めるようにしてください。
前述の通り、住宅取得等資金贈与の非課税制度の適用を受けるためには贈与税の申告をしなければなりません。
適用を受ける受贈者ごとに行う必要があります。夫と妻がそれぞれ申告をする必要があります。
住宅取得等資金贈与の非課税制度は非常にメリットが大きい制度です。しかし、この制度にも、適用を受ける前にご検討いただきたい点があります。
贈与者の相続が発生すると、贈与者が所有していた自宅の土地の相続税評価額を8割減額できる小規模宅地等の特例を適用できるかどうかが相続税を節税する上で重要になります。
この特例の適用を受けることができるのは原則として配偶者か同居親族です。しかし、それらがいない場合には、3年以上自分の持家に住んでいない別居親族も適用を受けることができます。これを通称「家なき子特例」といいます。
住宅取得等資金を贈与して住宅を取得してしまうと、家なき子特例の適用はできなくなり、自宅土地の評価は100%となり大きな相続税負担が発生するおそれがあります。
「資金援助を行っても税務署に発覚することはないのでは?」と考える方がいらっしゃるかもしれません。しかし、実際には、すぐにばれてしまいます。
税務署は富裕層について財産の動きを常に見張っています。銀行口座など職権により簡単に見られてしまうのです。
また住宅を取得した際の登記簿謄本についも、税務署は目を光らせています。30代の一般的な年収のサラリーマンが抵当権なしに5,000万円の住宅を購入したとなると、まず親からの資金援助を疑います。
このように税務署はあらゆる面からチェックをしています。数百万円数千万円という大きな資金の動きを見逃すことはまずないと考えてください。
住宅取得等資金贈与の非課税制度はメリットが大きい制度であり、積極的に利用されることをおすすめいたします。
ただし、多くの適用要件がありますので実は対象外だったということがないように注意してください。また小規模宅地等の特例についても入念なシミュレーションが重要になります。
当事務所でも、相続税についての二次相続まで考慮してシミュレーションを行うことができます。お気軽にお問い合わせください。
贈与税に関しては、上記のような場合以外にも、下記のように税理士・弁護士などを含めた総合的なアドバイスが必要になるケースがあります。
弊所では税理士・社会保険労務士・行政書士・弁護士でUグループを形成しており、ワンストップで相続手続き全般についてご相談いただけます。
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