財務分析とは?5つの分析方法と指標
企業を成功に導く重要な鍵に「財務力」があります。財務力を測るためには、企業の決算書をもとに財務分析を行います。 様々…[続きを読む]
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決算書は企業の成績表のようなものです。その決算書を分析(財務分析)すると、企業の財務状況がわかります。
財務分析の手法にはいろいろありますが、金融機関が企業に融資をする際には、特に重視する指標がいくつかあります。
融資で見られる財務分析の指標を8つにわけて説明します。
会社が金融機関に融資を申し込む際には、会社の財務諸表をもとに「格付け」が行われ、融資を行うかどうか判断されます。融資審査では、この「格付け」が一番重要であり、融資の可否、融資の条件などが格付けをもとに決定されることになります。
格付けは、金融庁が作成した「債務者区分」をもとに行われ、次の5段階で評価されます。
①正常先 | 業況が良好であり、財務内容にも問題がない会社 |
②要注意先 | 金利減免や棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある会社 |
③破綻懸念先 | 経営破綻にはなっていないが、経営難になっており、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく会社 |
④実質破綻先 | 法的・形式的に経営破綻の事実はないが、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にある会社 |
⑤破綻先 | 法的・形式的に経営破綻している会社 |
金融機関の債務者区分は、提出した財務諸表を分析し「自己資本比率」「債務償還年数」「キャッシュフロー」などによって評価され、債務者区分が良いほど「融資可能額」「金利」「プロパー融資の可否」などの条件が良くなります。会社の財務諸表を改善することで、債務者区分を向上させることができ、好条件での融資を受けることができるようになります。
金融機関の格付けをアップさせるには、財務諸表の「重要指標」を改善する必要があります。格付けでは、8つの指標が重要視されており、この8つの重要指標を改善していくことが格付けアップのポイントです。
債務償還年数は、何年間で現在の借入金を返済できるのかを判断する指標です。「会社が返済能力以上の借入を行っていないか」を測るための指標として利用されます。
債務償還年数=
(借入金-運転資金)÷(経常利益+減価償却費-法人税等)
債務償還年数は、借入金から運転資金を差し引いた純粋な借入金を経常利益にキャッシュを伴わない経費である減価償却費を加算し、法人税等を差し引いたキャッシュの増加額を除して計算します。
債務償還年数の適正値は業種によって様々ですが、一般的には「5年から7年未満が適正値」となり、10年を超えると融資を受けることが難しくなります。改善方法には「経常利益の最大化」や「適正な減価償却費の計上」などがあります。借入金の繰り上げ返済により改善することも可能ですが、無理な繰り上げ返済は会社の経営に悪影響を及ぼすことになりますので注意しましょう。
自己資本比率は、会社の総資産の中に自己資本がどのくらいの割合を占めているかを表す指標です。割合が高いほど、会社の財務状況が健全であると言えます。
自己資本比率=
自己資本÷総資本×100【%】
多くの金融機関では、自己資本比率10%以上を「正常先」として区分しています。できれば15%以上を目安にすると好評価を受けるでしょう。改善のポイントは「会社の総資産を圧縮すること」です。棚卸資産(在庫)の調整、不良在庫の処分、不要な固定資産の処分などを行うことで自己資本比率が向上します。また、買掛金の支払い期間を短縮する方法も有効です。
債務超過解消年数とは、負債の総額が総資産額を上回り「債務超過」に陥っている場合に、何年で債務超過を解消できるようになるのかを測る指標のことを言います。自己資本がマイナスのため、自己資本比率を計算できない場合に使用します。
債務超過解消年数=
債務超過÷税引後当期純利益
債務超過解消年数が3年を超えると金融機関から融資を受けることは非常に難しくなります。この指標の改善には、利益を出す以外の方法はありません。
会社の運転資金は、継続して返済が必要な長期借入金で工面するのではなく、短期借入金で工面している方が健全な財務諸表であると評価されます。短期借入金の金額が運転資金の120%以上であれば良好な状態だと言えるでしょう。
短期借入カバー率=
短期借入金÷運転資金×100【%】
例えば、運転資金に1,000万円必要な会社の借入金の内訳が短期借入金500万円、長期借入金2,000万円であった場合、短期借入カバー率は50%になります。50%のカバー率では少なすぎるため、当座貸越の枠を設定して長期借入金の繰り上げ返済資金に充てることで短期借入カバー率を改善することができます。
CF返済充当率とは、簡易的なキャッシュフロー上の利益のうち、どれくらいの割合を長期借入金の年間返済額に充てているかを測る指標になります。
CF返済充当率=
年間返済額÷(経常利益+減価償却費-法人税等)【%】
CF返済充当率の目安は80%程度あれば良好だと判断されます。運転資金を長期借入金ではなく、短期借入金で調達することができれば、CF返済充当率を大きく改善することができます。短期借入カバー率と同時に見直しを行ってみましょう。
手元流動性比率は、短期の支払い能力を分析する指標になります。預金や現金、1年以内に換金できる有価証券などの換金性の高い資産(手元流動性)を月商で割ることで手元流動性比率を求めます。
手元流動性比率=
手元流動性(現金や預金、1年以内に換金できる有価証券など)÷月商×100【%】
手元流動性比率は「1か月の売上を回収するまで手元資金で賄えることができるのか」を表しており、150%以上あれば良好な状態だと判断されます。売掛金の回収サイクルを早めるなど、手元資金を多くすることで手元流動性比率は改善されるでしょう。
売上総利益(粗利)が売上に占める割合を表す指標が「売上総利益率」です。
売上総利益率=
売上総利益÷売上高×100【%】
売上総利益率は高ければ高いほど評価されます。業種によってかなり違いがでる指標になっていますが、一般的には20~30%が売上総利益率の目安と言われています。売上総利益率を改善するためには、原価管理システムの導入や外注の内製化や商品へ付加価値を付けての販売など、企業努力が求められます。
在庫回転日数は、在庫が何日間のサイクルで入れ替わっていくのかを測る指標になり、日数が短い方が高評価になります。在庫回転日数が長くなると、総資産の金額にも影響を及ぼすため、自己資本比率やキャッシュフローの面でも悪影響を及ぼします。
在庫回転日数=
日数(365日)÷在庫回転率【日】
※在庫回転率=売上原価÷平均在庫金額
在庫回転日数は取り扱う製品によって異なりますが、約8日以下であれば良好な状態だと評価されます。10日を超える場合には、余剰在庫が疑われますので、適正な在庫数の調整をすることで改善できます。
金融機関の融資審査では、財務諸表を分析した指標により借入可能金額や条件などが決定されることになります。会社が金融機関からどのように評価(格付け)を受けているのかを事前に知ることで、適切な借入額やこれからの対策について検討することが可能です。
金融機関の格付けアップには、小手先だけのテクニックだけでは通用しません。現状を良く把握し、着実に利益を出し、財務状況を改善していかなければなりません。
当事務所では、会社の財務諸表から重要指標を分析し、会社の格付けを診断する「会社の健康診断(財務診断)サービス」を提供しています。人が毎年、健康診断を受診して心身の健康状態をチェックするのと同じように、会社の財務診断を受けて財務状況をチェックし、より健全な会社を目指しましょう。
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