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相続税がかからない場合の手続きは?申告手続きは不要・必要?

相続税申告は、遺産総額が基礎控除を上回る場合に申告義務が発生します。したがって、必ずしも相続人全員が行わなければならない手続きではありません。

「私の家は基礎控除以下だから申告は不要だ」と思っている方も多いかもしれません。しかし、相続税が「ゼロ(納付額なし)」であっても、申告手続きが必須となるケースが存在するため注意が必要です。

ここでは「相続税がかからない場合でも申告が必要になるケース」について詳しく解説します。

1.相続税がかからなくても申告手続きが不要とは限らない

相続税申告が必要かどうかを判断することは非常に重要なステップであり、間違えやすいポイントでもあります。

判断する際には「納付する税金がゼロかどうか」に加え「特例や控除の適用があるかどうか」に気をつけましょう。

相続税申告の要否

概要 該当する制度 相続税申告の要否
申告なしでも税務署が非課税を判断できるもの
(遺産総額が基礎控除額以下の場合)
基礎控除 申告不要
納税者が自主的に適用する特例や控除を選択している場合 死亡保険金等の非課税枠
未成年者控除
障害者控除
相次相続控除
申告不要
税制上、期限内に申告書の提出が要件になっている特例や控除を適用している場合 配偶者の税額軽減
小規模宅地等の特例
など
申告が必要

1-2.申告しない場合のペナルティ

相続税の申告義務がある相続人や受遺者などが、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内の申告期限までに申告・納税を行わなければ、本来の相続税に加えて次のペナルティが課せられるおそれがあります。

無申告加算税

申告期限内に申告を行わなかったことに対するペナルティです。

申告期限が過ぎた後に自主的に申告した場合は相続税額の5%、税務調査によって無申告が発覚した場合は15%(50万円以下の部分)など、状況によって税率が異なります。

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延滞税

相続税の納付が遅れたことによるペナルティです。納付期限の翌日から納付が完了した日までの日数に応じて、利息の性質を持つ延滞税を支払うことになります。

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2.相続税がかからず、申告手続きも不要な場合

2-1.遺産総額が基礎控除額以下の場合

まず、相続税がかからず、申告手続きも不要なのは、「遺産総額が基礎控除額以下の場合」です。相続税の基礎控除とは、全ての相続において適用できる控除枠のことであり、次の計算式によって求められます。

相続税の基礎控除

3,000万円 +( 600万円 × 法定相続人の数 )

遺産総額(みなし相続財産や生前贈与の持ち戻しなどを含む)から債務や葬儀費用を差し引いた「正味の遺産総額」がこの基礎控除以下であれば、相続税は課税されず、申告も不要です。

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2-2.適用後相続税がゼロになれば申告も不要な4つの非課税枠・控除

また、次に挙げる4つの非課税枠や控除を適用して相続税がゼロになる場合は、相続税申告も必要ありません。

  • 死亡保険金・死亡退職金の非課税枠
  • 未成年者控除
  • 障害者控除
  • 相次相続控除

死亡保険金・死亡退職金の非課税枠

死亡保険金・死亡退職金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられており、受取人が法定相続人である場合は、この非課税枠を適用することができます。

死亡保険金・死亡退職金の非課税枠を適用した結果、相続税がゼロになる場合には相続税申告は必要ありません。

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未成年者控除

法定相続人が18歳未満の未成年者である場合に適用される控除であり、控除額は(18歳-相続時の年齢)×10万円で計算されます。

この控除で相続税額がゼロになれば、相続税申告は不要です。

障害者控除

相続人が85歳未満の障害者である場合に、相続税額から一定額が控除される制度です。

控除額は以下の通り計算され、この控除を適用した結果、相続税がゼロになる場合、申告は必要ありません。

  • 一般障害:(85歳-相続開始時の年齢)×10万円
  • 特別障害:(85歳-相続開始時の年齢)×10万円
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相次相続控除

最初の相続の発生から10年以内に次の相続が発生した場合には、短期間における相続税の負担を軽減するために「相次相続控除」の適用を受けることができます。

この控除により税額がゼロになれば、申告は不要です。

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3.相続税がかからないが申告手続きは必要なケース

「非課税枠や控除を適用して相続税がゼロになる場合は申告も不要」と解説しましたが、相続税の特例や控除の中には、非常に大きな節税効果があるものの、適用を受けるためには「期限内に申告することが必須になっているもの」があります。

そのため、これらの特例や控除を適用し、結果的に相続税がゼロになる場合であっても、相続税申告書の提出が必要になります。相続税申告が適用要件になっている特例・控除は次のとおりです。

相続税がゼロでも申告が必要な特例・控除

  • 配偶者の税額の軽減
  • 寄付金控除
  • 納税猶予の特例
  • 特定計画山林の特例
  • 法人版・個人版事業承継税制
  • 医療法人の持分についての相続税の税額控除の特例

特に、利用しやすく、節税効果が高い「配偶者の税額の軽減」と「小規模宅地等の特例」は、適用後に相続税がゼロになったので相続税申告が必要ないと勘違いしてしまうケースも少なくありません。

配偶者の税額の軽減

配偶者の税額の軽減は、被相続人の配偶者が相続または遺贈により取得した財産のうち、16,000万円または配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までは、配偶者に相続税が課税されないという特例です。

使い方次第では、非常に大きな節税効果がある特例ですが、期限内に相続税の申告書を提出することが適用要件となっているため、特例適用後に相続税がゼロになった場合であっても遺産分割協議書などの書類を添付した相続税申告書の提出が必ず必要になります。

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小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例は、一定の要件を満たす宅地であれば、その宅地の評価額を最大80%減額できる特例です。宅地の平米単価が高ければ高いほど、節税効果も高くなり、相続財産が宅地だけの場合などは、特例を適用することで相続税額がゼロになる可能性もあります。

この特例は、期限内申告が必須要件となっており、申告しなければ特例が適用できず、結果的に相続税が課税されてしまうおそれがありますので気をつけましょう。

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4.原則的に申告は必要ないが、還付を受ける場合には必要になる控除

亡くなる前3年間の贈与について贈与税を支払った場合に受けられる贈与税額控除や海外で課税された相続税相当額を日本の相続税額から控除できる外国税額控除は、控除後の相続税の納付額がゼロになった場合、原則として相続税申告は不要です。

しかし、これらの控除を受けることで還付が発生している場合には、還付金を受け取るために相続税申告が必要になります。

5.相続税申告が必要か迷ったときは当事務所へご相談を

相続税の申告義務があるかどうかの判定は「遺産総額が基礎控除を超えるか」という基準で判断してしまいがちです。しかし、適用しようとしている特例や控除の種類によって申告手続きの要否が異なります。

特に「配偶者の税額軽減」や不動産を相続する際によく使われる「小規模宅地等の特例」は、申告しなければ適用することができず、申告していなかったため思わぬ課税を受けてしまう可能性もあり、慎重な検討が必要です。

その他、申告の要否を判断するためには、遺産総額の正確な計算が不可欠であるため、相続税申告が必要かどうか迷った場合には、相続に精通した当事務所へお気軽にご相談ください。

お気軽にお電話ください 0120-201-180

相続税申告に際しては、下記のように税理士・弁護士・司法書士を含めた総合的なアドバイスが必要になるケースが少なくありません。

  • 相続税の額を抑えたい
  • 評価が難しい土地がある
  • 相続財産に不動産が多い
  • 相続関連の手続きがよくわからない
  • 生前対策をしたいが、どこから手を付ければいいかわからない
    など

弊所では税理士・社会保険労務士・行政書士・弁護士でUグループを形成しており、ワンストップで相続手続き全般についてご相談いただけます。

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